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テクニカルコーナー

IC-7300でリグコントロールとCW/RTTYキーイングを両立させる

JN4JGK/3 難波正憲

IC-7300ではUSB接続でCWやRTTYのキーイングができるので重宝しています。ところがロギングソフトでリグコントロール(周波数やモードの読み込み)とCW/RTTYのキーイングは同時に使用できません。なぜならIC-7300のUSB端子の先にはUSB-シリアル変換ICが1つしか無いからです。多くのロギングソフトでは、リグコントロール用のCOMポートとCW/RTTYキーイング用のCOMポートは別のものを指定する必要があります。解決策のひとつとして、以前このテクニカルコーナーでも取り上げられたVSPEというソフトを使用してPC内部で1つのCOMポートを2つの別の物として認識できるようにする方法があります。(http://www.fbnews.jp/201603/tech/VSPE_01.html)ただし、64bit OS版は有料である点がネックです。このため、今まではUSB接続でCW/RTTYのキーイングをおこない、リグコントロールには外付けのCI-Vインターフェースを用意していました。

概要

IC-7300に付属のCD-ROMに入っていた回路図を見ると内部にはUSBハブがあり、空きポートが2つもあることが分かりました。4chのハブで1つはUSB-シリアル変換IC、もう1つはUSBオーディオICが接続されています。この空いたポートにCI-Vインターフェース、つまりもう一つUSB-シリアル変換ICを接続してIC-7300本体内部に入れてしまうことにしました。こうするとPCとIC-7300の接続はUSBケーブル1本で、リグコントロールとCW/RTTYキーイングの両方を実現できるようになります。

下準備

今回使用したUSB-シリアル変換モジュールはAmazonで購入しました。CP2102というICで、IC-7300内部に搭載されているICと同じ物です。400円程度で購入できます。


(ご注意)上記は記事執筆時点の価格であり、その後価格が変更になっている可能性があります。

内部に組み込む前にモジュールに実装されている不要な部品を外します。内部に組み込むにあたりUSBコネクタやピンヘッダは不要となります。また、電源や通信状態を表すLEDが実装されていますがIC-7300内部に組み込んでしまえばこれらも不要で、消費電力を減らすためにも外します。また、写真には写っていませんがTXD端子とRXD端子の間に1kΩの抵抗を接続します。

回路変更作業

回路図は以下通りです。


IC-7300内部の接続位置はMAIN基板上の6か所です。


先にIC-7300のMAIN基板側の接続点に線材を取り付けておきます。特にMAIN基板上には細かい部品が密集していますので、細心の注意を払って作業をする必要があります。MAIN基板側に線材を取り付けたら、USB-シリアル変換モジュールの底面をしっかりと絶縁してから強力な両面テープでMAIN基板上に貼り付けます。そして線材をモジュール側に接続します。


補足説明

① CP2102のTXDとRXDを突き合わせてCI-Vラインに接続する形にしていますが、TXDに電流制限抵抗を入れることでTXDがHレベルを出力しているときにIC-7300側のトランジスタ(Q691)がLレベルになったとしてもTXDがショート状態とならないようにしています。

② USB端子のVBUSは本来5Vを接続するべきところですが、CP2102の各端子は3.3Vの電源でも動作する仕様となっています。

2つのCOMポートの見分け方

PCには2つのCOMポートが接続されたことになり、今回使用したUSB-シリアル変換ICがIC-7300の内部に搭載されているものと同じであるため、デバイスマネージャーでは一見区別がつきません。

どちらかのデバイスを右クリックして[プロパティ]を表示し、[詳細]タブを選択します。その中の[プロパティ]のドロップダウンメニューから“デバイス インスタンス パス”を選択すると、値が表示されます。値に“IC-7300”が含まれているほうがIC-7300に元々搭載されているもので、含まれていないものが今回追加したモジュールです。

2つのCOMポートの使用例

① IC-7300に元々搭載されている方のCOMポート(上記参照)でCW/RTTYのキーイングを設定します。
・セットモードの「USB SEND」をRTSに設定。
・セットモードの「USBキーイング(CWまたはRTTY)」をDTRに設定。

② 追加した方のCOMポートでリグコントロールを設定します。
・セットモードの「CI-Vボーレート」※を19200bps(一例)に設定。
※「CI-V USBボーレート」の方ではないのでご注意下さい。

最後に

IC-7300は安価ですが高級機に迫る性能で、コンテストでも普段の移動運用でもとても重宝しています。USB-シリアル変換ICが1つしか搭載されていない点がずっと気になっていましたが、今回の変更により一段と使い勝手の良いリグへと進化させることができました。なお、IC-7300の内部には非常に細かい部品が密集して実装されていますので、作業の際は細心の注意を払ってください。また、この改造を実施することで、メーカー保証が受けられなくなることにご留意の上、ご自身の責任において実施してください。

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