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テクニカルコーナー

ターミナルモード/アクセスポイントモード専用ソフトウェアのUDPホールパンチ対応

JK3AZL 高岡奈瑞

D-STARのターミナルモード/アクセスポイントモード設定用ソフトウェアのUDPホールパンチ対応版がリリースされました。なにがどう変わるのか?と注意点をご紹介します。


図1 5月10日に公開されたファームウェアアップデートのお知らせ

ターミナルモード/アクセスポイントモード設定用ソフトウェアの変更点

5月10日に公開されたRS-MS3W Version 1.30の「主な変更点」として次のように掲載されています。


図2 ソフトウェアアップデートの案内文

「UDPホールパンチ」対応により「ルーターのポート開放」や「グローバルIPアドレス」がなくてもアクセスポイントモードやターミナルモードが使える、と書かれていますが、ここで注意が必要なのは、「他局を呼び出して応答を受信できる」が「他局からの呼び出しは受けられない」点です。「もうグローバルIPアドレスいらなくなった!」と早合点して、スマホのグローバルIP取得用オプションを解約するのはちょっと待ってください。

新しくなったD-STARプログラム

昨年11月より、各地のD-STARレピータで、ゲートウェイ用プログラムが順次アップデートされました。従来のD-STARゲートウェイシステムでは、インターネット回線とレピータコントローラの間にあるdsgwd(ゲートウェイ用プログラム)がRFとインターネット側の信号の行き来を制御していました。


図3 従来のD-STARゲートウェイシステム

一方新しくなったゲートウェイ用のプログラムは、dsgwdに加えJARL D-STAR委員会が提供するxchange、dprs、dstatus、multi_forwardのプログラムで構成されるようになりました。


図4 新しくなったD-STARゲートウェイシステム

レピータコントローラとdsgwdの間にはxchangeというプログラムが入り、他のプログラムへの橋渡しや、multi_forwardのサーバ機能として動作するなどの働きをします。dprsはD-PRS用のデータをAPRSサーバへ送る働きをします。dstatusは各レピータのアクセス表示プログラムにデータを渡す働きをします。multi_forwardは、外部から接続する際のサーバ機能をサポートするプログラムで、このプログラムがUDPホールパンチを可能にしたのです。

UDPホールパンチとは?

UDPホールパンチ(ホールパンチング)とは、プライベートネットワーク内にあるホスト同士が、インターネット経由で双方向のUDP接続を行うための手法です。ホストは一旦サーバに接続し、UDPポートマッピングと相手方のUDP状態を確保(=往路)します。相手方からの応答(=復路)は、往路に確保された経路を辿って受け取ることができる仕組みです。

従来のD-STARコールサインルーティングは復路がUDP:40000ポートに制限されていたため、復路の信号を受け取るには自身のネット環境がIPv4のグローバルIPアドレスが払い出されていることや、ルーターのUDP:40000ポートが開放されていることが必要でした。しかしmulti_forwardでUDPホールパンチが可能になったおかげで、他局を呼び出した後、呼び出された局からの応答を受信できる(※)ようになったのです。

(※) 使用するネットワーク環境によっては受信できない場合があります。海外レピータを使用している局からの応答は受信できません。


図5 ID-31PLUS「DVゲートウェイ機能について」より抜粋。
UDPホールパンチ対応でコールサインルーティングの往路と復路が合致している場合は、赤枠部分が不要となる。


図6 ホールパンチ対応DVゲートウェイ機能の交信イメージ。


図7 DVゲートウェイ機能を楽しめるAndroid版ソフトウェア:RS-MS3Aの画面。
グローバルIPを取得していない場合「UDPホールパンチ」をONにする。


図8 Windows版のソフトウェア:RS-MS3Wの画面。
ルーターのポート開放ができない会社ネットワークでも使えるのは嬉しい。

なお、使う端末にグローバルIPが割り当てられている場合やルーターのUDP:40000ポートが開放されている場合は、RS-MS3A/Wの「UDPホールパンチ」のチェックをOFF(初期値)にしたまま使うようにしてください。

ターミナルモードやアクセスポイントモードで待ち受けも含めアクティブに運用したい方や海外局との交信を楽しみたい方は、従来通りルーターのUDP:40000ポート開放やIPv4のグローバルIPアドレス取得が必要ですが、「ターミナルモードを試してみたい」方や「出先から仲間を呼び出したい」方は、UDPホールパンチ対応版のソフトウェアを活用することで十分楽しめるようになりました。特にルーター設定を勝手に触ることができない会社やホテルのインターネット回線をDVゲートウェイ機能に利用できるようになったことは、たいへん便利になったと感じています。

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