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テクニカルコーナー

2万円台で作るD-STARゲートウェイサーバ

JK3AZL 高岡奈瑞

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OSをAlmaLinuxにした場合「IN-1」モデルでも問題なくD-STARゲートウェイサーバとして稼働することが確認できています。
なお現在はIN-1より廉価で購入できるIN-2モデルもお勧めしています。(2024年2月15日追記)

2022年6月の仕様変更後、「IN-1」モデルはD-STARゲートウェイサーバとして推奨できなくなりました。また価格改定により2万円台で購入できなくなっています。(2023年2月2日追記)

D-STARレピータの管理でいつも苦労しているのが、ゲートウェイサーバにするパソコンの選定でした。そこで、今回はゲートウェイサーバに必要な条件と、2万円台でできるゲートウェイサーバを紹介します。

D-STARゲートウェイサーバに必要な条件とは


図1 D-STARレピータシステムのページより抜粋

メーカーのD-STARレピータシステムのページでは上図のように記載されていますが、正直これだけでパソコンを選定するのは困難です。そこで、もう少し具体的にご紹介します。

◎OS
ゲートウェイサーバはLinuxで動作します。Windowsパソコンを買ってOSをLinuxに入れ替えて使う場合が多いですが、Windows非搭載モデルを選択できる場合は、より安く入手できてお得です。

ただし「どのパソコンも必ずLinuxで動く」わけではありません。市販されているWindowsパソコンの多くはLinux向けに作られていません。「Linuxが動くかどうかはやってみないとわからない」が正解で、実際にLinuxのインストールすらできないパソコンもありました。不安な場合は「実際にゲートウェイサーバとして動作しているパソコンと同じモデルを買う」ことをお勧めします。

◎メモリ
2GBでも動作しますが、Windowsのようなグラフィック画面(GUI)で運用する場合は、最低4GB欲しいところです。

◎LANポート
USB-RJ45変換アダプタを使って2ポートに増設することも可能ですが、変換アダプタのケーブル部分に負荷がかかるなどして断線しネット接続できなくなるケースも多々ありました。安定性を考慮するとLANが2ポートある方が望ましいです。


図2 USB-RJ45 変換アダプタの例

◎グラフィックス
「4K」など高価格になる機能は不要です。

◎その他
ファンレスパソコンであれば、筐体内部にホコリが入りにくいので不具合も軽減でき、ヒートシンクで排熱させるため電力消費も節約できます。レピータを人里離れた場所に設置する場合は、停電回復時(通電開始時)に自動起動する「AC Power Loss Restart」設定のあるパソコンが便利です。


図3 BIOSの「AC Power Loss Restart」設定例

ゲートウェイサーバとして使うには、一般的に売られている個人向けや法人向けのパソコンより「産業用PC」と呼ばれるパソコンが適しています。以前は通販サイトのアイコムダイレクトでAOPEN製DE3250がD-STARレピータ用特別価格で入手できましたが、残念ながら販売終了となってしまいました。


図4 D-STARレピータでよく使われている産業用小型デジタルエンジン: DE3250

DE3250の後継機種であるDE3450もD-STARゲートウェイサーバとして使用できましたが、4K再生などグラフィックス機能が強化された結果、値段が高くなっています。通販で安い海外製パソコンも購入しましたが、保証や日本語取説がない上にサポートも不十分で、人にお勧めできるものではありませんでした。

そこで、ゲートウェイサーバに必要な機能を搭載し、安く入手でき、長く使えそうなパソコンをいくつか取り寄せて検証した結果、2万円台でほぼ満足できるパソコンを見つけました。

型番: IN-1
・CPU: インテル Celeron N2940
・メモリ: 4GB SO-DIMM DDR3
・ストレージ: 32GB SSD mSATA
・グラフィックス: Intel HD Graphics(ビデオメモリ: メインメモリと共有)
・有線LAN: 4ポート(10/100/1000Mbps)
・OS: 非搭載
・価格: 26,990円(税込・送料込)
・その他: 1年保証、日本語取説付、AC Power Loss Restart対応


図5 小型でファンレスの業務用パソコン(IN-1)。小型PC専門店 Skynewで購入


図6 小型パソコンと小型無線機のサイズ比較 上: LANポート側/下: 電源スイッチ側


図7 パソコン内部の様子

CentOS7とゲートウェイプログラムのインストール

実際にOSとゲートウェイプログラムを設定し、動作を確認しました。


図8 CentOS7のインストール画面

インストール方法については、JARL D-STAR委員会 藤堂氏のサイトを参考(*)にしてください。
https://todovc.blogspot.com/2018/07/d-starcentos-75.html
(*)ゲートウェイプログラムの改訂等で、サイトの記述と実際のプログラム内容が変わる場合があります。

設定に不安のある方は、メーカーサイトのメールフォームを利用してサポートを受けることも可能です。
D-STARレピータの設置/保守について
https://www.icom.co.jp/contact/repeater/


図9 D-STARレピータについての相談窓口

実際の動作

◎動作
プログラムとして、問題なく動作しました。停電回復時(通電開始時)も問題なく自動起動します。

◎温度
インストール時は少し暖かくなりましたが、ゲートウェイサーバとして稼働させる分にはさほど温度上昇もなく、安定動作するようです。


図10 ゲートウェイサーバとして動作している様子

まとめ

ゲートウェイサーバに適したパソコンは色々ありますが、今回はとことん低価格にこだわったモデルを紹介しました。すでに10カ所以上のD-STARレピータでこのモデルが使われているとのことなので、十分な導入実績があると言えるでしょう。

かつて、D-STARレピータ用パソコンを発送するのに大型固定機並の段ボールが必要でしたが、今やハンドバッグに入れて持ち運べるほど小型軽量化が進みました。代替機を持って走り回る機会の多い立場としては、本当にありがたい時代になったものだと感じます。

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