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ものづくりやろう!

第二回 電鍵接続ボックスの製作

JH3RGD 葭谷安正

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はじめに

こんにちは、今月で連載2回目です。素人の拙い製作記を読んでいただきありがとうございます。何らかの形で役に立つ記事になるようにと考えて書いていますが、思いだけはありますが実がともなっていないようです。

さて、私ですがコロナ下で外出も控えめにしておりますが、固定で運用している私にはあまり苦にならない今日この頃です。お空のコンディションもよく、夜中でもいろいろな場所から信号が入ってくるのでつい寝不足の日々をすごしています。

前回はカムバックした頃のことを書かせていただきましたが、今回もそのあたりのことから始めたいとおもいます。今から50年近く前に50MHzマシン1台で開局した私は、モービルで144MHzのアンテナを見かけるたびに「かっこいいな、僕もそのうち車に乗って144MHzに出てみたいな!」等と羨んでいたものです。

再開局してからIC-7300でHF帯で電波を出していましたが、3か月程経過した頃から144MHzや430MHzも出たくなりました。ご近所のローカルさんと仲良くなれるんじゃないか、そんな気持ちでもってヤフオクをゴソゴソとパトロールをしておりました。いろいろなマシンがある中、オールモード機のIC-251を見つけ、ついポチってしまい、それ以来このマシンも我が家にすみついてしまいました。144MHz用アンテナも無い、アンテナアナライザもまだ持っていなかったのですが、ビニール線を50cmほどの長さに2本切り、ダイポールアンテナもどきをつくりベランダにひっかけました。計測器なしの無調整やっつけ仕事で作ったアンテナですが、144MHz、430MHzともよく働いてくれるアンテナで、後日アンテナアナライザを購入した折にSWRを測定したところ、SWR=1.2とばっちりで、Amazonで買った日本のメーカ名を騙る偽物アンテナよりは良く聞こえるという性能です。

製作からすでに数年経過していますが、ガタが来るたびに補強したり、水を抜いたり(雨の日に受信感度が悪い場合はボックスに水がたまっているので水抜きをやっています。)で今も現役です。見てくれは悪いですが、自分でつくることの面白みを再実感したアンテナでした。「イヤー、モノづくりっておもしろいですね」。写真をご覧になって「僕のほうがいいアンテナで無線やっているな」と感じる方が多いのではないでしょうか。「いいアンテナほしいな、いいアンテナあげたいな」と思う今日この頃ですが、我が家の財務大臣兼諸法度制定奉行兼その他諸々のXYLの口頭指示により、「アンテナは4本まで」というのが我が家の「掟」として不文律化されていますので、それに従うのが家庭内SWRを健全に保つ運用方法と心得て、当該「掟」を遵守しています。


写真1 144MHz/430MHz自作ダイボール (左: ベランダ実装、右上: 正面から、右下: 給電部)

電鍵接続ボックス(概要)

さて、144MHzではSSBかFMで出るつもりでしたが、昼間はトラックの運転手の業務連絡の道具になっているようで、全体に活気がないと感じました。嫌気がさしてSSB、FMではあまり運用せず、HF帯と同じくCWで細々とお相手をさがすことにしました。(ワッチを続けているうちに、活発な時間帯やロールコール状況などもわかってきましたので、観察することが大切だと感じました。)

HF帯メイン機のIC-7300と144MHz帯用のIC-251の両方の電源スイッチを入れ、両マシンのスピーカを鳴らし、「右耳でHFのCW信号を、左耳でVHFのCW信号を聞く」というような案配に両耳で信号を聞いていました。本当は、そんなに器用ではなく、ただ音を鳴らしているだけでしたが。送信はと言うと、当時は電鍵を1台しか持っていませんでしたので144MHzに出るときは、IC-7300の裏面に手を伸ばしゴソゴソと電鍵のプラグを引き抜き、そのプラグをIC-251の裏面にまた手を伸ばして突き刺す、またこの逆の操作を1週間ほどつづけていましたが、当然交信チャンスを逃すことも多く、「無線機の裏まで手を伸ばして抜き差ししなくてもいいように接続ボックスをつくろうかな」、と思い作ったのが「電鍵接続ボックス」です。

電鍵接続ボックス(以下「接続ボックス」と記載します。)、名前は立派ですがただの接続装置です。製作前に、その仕様として次のことは必要と思いました。
1. 電鍵は2台またはそれ以上の台数を接続できる、また無線機も2台以上接続できる。(とりあえず2台)
2. 電鍵の選択、無線機の選択のための切替スイッチは実装しない。
3. 電鍵とボックスの接続はステレオミニケーブル(以下、オーディオケーブル)を使う。無線機と電鍵接続ボックスの接続も同じくオーディオケーブルを使用する。

上の1番目、2番目の項目は、接続ボックスに無線機2台と電鍵2台を接続することを想定してのことでした。

1台の電鍵と2台の無線機を接続ボックスにつなぎ、この1台の電鍵で両方の無線機を送信状態にできるように考えました。無線機の切替は、接続ボックスに切替スイッチを実装せず、無線機本体のBKIN(ブレークイン)スイッチで送信可否をコントロールし、接続ボックス製作に必要な部品数や半田付けの手間を減らそうと思いました。切替スイッチを着けないことで問題となるのは、2台の無線機本体のBKINスイッチをこまめに切り替えないと、例えば2台の無線機のBKINスイッチをONにしたままになっていると、接続ボックスにつながれている2台の無線機から同時に同じCW信号を送信してしまう危険性があります。実際、接続ボックス作成後に2台の無線機を共に送信可能状態にして電鍵をたたいてしまいました。バンド内が混んでいた時ですので気がついた時にはすでに少なからぬ局にご迷惑をかけていたのではないかとお恥ずかしいかぎりでした。

オーディオケーブルは手持ちで2本ほどありましたのでそれを使用しました。無線機2台、電鍵2台を接続ボックスに接続するので合計4本のオーディオケーブルが必要になります。


写真2 オーディオケーブル

接続ボックスと電鍵の間、それと接続ボックスと無線機の間はそれぞれオーディオケーブルで結びました。無線機側にはすでに電鍵用の大きなジャックがついていましたので配線の変更は必要ありません。IC-7300の場合、キージャックには6.35mm径のキープラグを差す必要があるので、3.5mm径のオーディオケーブルに変換アダプタを付ける必要がありました。これも100円ショップのお世話になりました。


写真3 電鍵用プラグ径変換アダプタ

あとは接続ボックスと電鍵にそれぞれ接続用の3.5mm径ミニジャックが必要になります。手持ち部品には3.5mmのミニジャックが2個しかありませんでしたので、電鍵に手持ちのミニジャックを付けることにしました。


写真4 3.5mm径ミニジャック

接続ボックスにも3.5mmのミニジャックをつけようと思いましたが、100円ショップをうろついているときにイヤホンスプリッターを見つけたのでこれを使うことにしました。イヤホンスプリッター1個にステレオプラグが2本差し込めますので、これを2個使うと電鍵2台と無線機2台の計4本のプラグが差し込めます。


写真5 イヤホンスプリッター

買ってきたイヤホンスプリッターはイヤホンマイク対応のものでした。古いイヤホンスプリッターをさがしたところ、写真5の下のように古いものはイヤホンマイクの端子がありませんでした。配線をまちがわなければどちらでも使うことができます。

スプリッターの内部回路と端子の関係を写真6に示します。写真6左のようにミニジャックが2個あり、反対側がプラグになっています(写真6右)。内部では写真のような結線になっています。


写真6 イヤホンスプリッターの内部回路

加工上で考慮するべきことが一つあります。上記のように、電鍵と接続ボックスの接続にオーディオケーブルを使うことで無線機の裏に手を回さなくてもいいという意味で電鍵の抜き差しが容易にできるようになります。しかし、電鍵にミニジャックを着けないとケーブルを接続することができません。そのためには電鍵に何らかの支持板をつける必要があります。いろいろと考えてみた結果、L字板を準備し、そのL字板にミニジャックをつけ、そのL字板を電鍵のネジで固定することにしました。

電鍵へのミニジャックの取り付け

電鍵にミニジャックを取り付けるためにはL字板を使用しました。L字板は平板をおりまげるのではなく、100円ショップで購入したプラスチックを切って使いました。(写真7)


写真7 L字板の材料(L字部分を切断して使用)



写真8 (左a)プラスチックカッター(下)とスチロールカッター(上)、(右b)プラスチックカッターによる切断

実際の加工では、L字板を作るのにL字構造を持つプラスチック加工板をプラスチックカッターで切断して、電鍵の固定ネジ位置に装着できるように穴をあけました。また接続ボックスから来るオーディオケーブルと接続するためのミニジャックの穴をあけてそこにミニジャックを固定し、ミニジャックと電鍵の接点接続用にビニール線をはんだ付けし、ビニール線の反対の部分に圧着端子をつけて電鍵のネジに接続しました。

ミニジャックの配線は写真9のようになります。


写真9 ミニジャックの配線

接続ボックスと接続するために、接続ボックスから来るケーブルのプラグを電鍵横のミニジャックにさしこみます。ミニジャックと電鍵の接点の接続は、電鍵の2つの接点は「GND」と「右」に配線します。

これを2個作り、電鍵に装着しました。さらに1つの電鍵にはON/OFFのスイッチを付けました。



写真10 L字板の電鍵への取り付け、(左a)前面、(右b)背面


(c)側面(接続部分)

写真10の(b)と(c)でプラスチック板の真ん中に穴が開いていますが、ここにスイッチを取り付けるつもりでした。しかし電鍵のプラスチックカバーがこの位置に入ることを考えていなかったため、電鍵にとりつけたところプラスチックカバーが入らず、入ってもスイッチとぶつかってしまいました。しかたなくL字板の一部を切り取り、またスイッチの位置も移動させましたので穴があいてしまいました。L字板の一部切り取りのためには窪み状に切る必要があるのでプラスチックカッターではなくスチロールカッター(写真8)で溶かして切りました。プラスチックの溶ける匂いが気になりましたが仕方ありません。まあいつもこういうように失敗しています。

電鍵側の接続準備が完了です。これで無線機の裏まで手を伸ばさなくても無線機側にオーディオケーブルをつないでおくことで、電鍵の取り付け、取り外しを手元で行えます。素人の加工ですから加工中に、L字板が傷だらけになってしまい、上手に加工できませんでしたが、機能的には問題なしです。傷を抑えるためには、加工前にプラスチック板に養生テープを張り、加工後に剥がせばかなり傷を抑えることができると思いました。

接続ボックスの組み立て

接続ボックスの作成に移ります。接続ボックスの配線は次のようにしました。


写真11接続ボックス回路図

仕様をもとに回路を作成しましたが、スイッチを1つ追加しました。その目的は、縦ぶれ電鍵だけでなくパドルをつないでも動作するようにするためです。これは、パドルを短点、長点自動で発生させるエレキーモードで使用する場合は接点が2接点、すなわち複接点で動かす必要があります。一方、パドルを複式キーとして使用する場合は縦ぶれ電鍵と同じで単接点にする必要があります。このため、どちらで使うかで配線をショート・オープンしてやる必要がありました。

それを実施するために上記接続ボックス回路図の右にあるスイッチを利用します。このスイッチをON(電鍵モードと呼ぶことにします。)にするとジャックの端子で言うと「左」と「右」が接続されることになります。これは単接点ですので電鍵モードと同じです。ですから電鍵やパドルを複式キーとして使用するのに使えます。スイッチをOFF(パドルモードと呼ぶことにします。)にすると「左」接点と「右」接点が独立に働く状態になり、複接点になり、パドルとして動かせます。これでちゃんと動きました。実際の操作場面では、このスイッチを「パドル」側に倒してIC-7300のKEYER設定でパドルを選択すると、パドルとして使えます。

接続ボックスを入れるケースですが、昔のデジタルビデオテープのケースが余っていましたので、このケースの中にイヤホンスプリッター2個と、複式/パドルの切替スイッチとを入れました。接続ボックスの加工は、イヤホンスプリッターを入れるため楕円形の穴を開ける必要がありますので、ドリルで穴を2つ開けてその間をスチロールカッターで切りました。この穴を2か所にあけました。イヤホンスプリッターのケースへの固定は、ぐらつきがなくなるまでボンドをぬりたくりました。

複式/パドルの切替スイッチの固定は、プラスチックケースの厚みのためスイッチをネジでプラスチックケースに固定できなかったため、すでに開けてしまった穴の位置とミニジャックの差込口の位置があうようにあり合わせのプラスチック板を探し、固定のためにこれもボンドで塗りたくりました。最後に半田付けをおこないました。回路図に従って、また写真のように半田付けを実行していきます。



写真12 接続ボックス (左)正面から、(右)背面

外観は、あまり人にはみせられませんが自分用としてはこんなものでしょう

無線機、電鍵の接続イメージ

無線機と電鍵への接続イメージは写真13のようになります。回路は4つのジャックを並列に接続した構造になっていますので、4つのジャックのどこに無線機、電鍵のケーブルを挿しても動作します。


写真13 無線機-接続ボックス-電鍵との接続イメージ

写真13の左にある2本のオーディオケーブルをそれぞれ無線機に接続します。このケーブル先端に変換アダプタを装着していますが、私の場合はオーディオケーブル2本ともアダプタを装着しています。

運用例

当初はIC-7300とIC-251をこのボックスに接続していましたが、今はIC-251の代わりにIC-705を接続しています。無線機の間に接続ボックスを置き、この接続ボックスから2台の無線機にオーディオケーブルを配線してあります。


写真14 運用例

また、右の電鍵と左のパドルともつながっています。(私は左利きですが、右手でストレートキー、左でパドルを複式キーとして打っています。疲れたら手を替えています。) どのキーをたたいても2台の無線機のキーをたたくのと同じ操作になります。少し注意が必要です。

右側の電鍵はその日の気分によって予備の電鍵と入れ替えることがよくあります。そのときは、電鍵に接続されているジャックを引っこ抜いて予備の電鍵にさしかえるだけです。また差し替えが面倒という場合や常時複数の電鍵をつないでおきたい場面(あまりそのような場面がないかもしれませんが) でも、接続ボックスを今以上に加工する必要はありません。次の写真のようにイヤホンスプリッターを電鍵に装着し、そこからオーディオケーブル経由で増設したい電鍵に接続するだけです。ちょっとイヤホンスプリッターの根っこ部分がぐらぐらしていますので注意が必要です。


写真15 イヤホンスプリッターによる接続拡張

写真14の左側のパドルは複式キーとして使っており、抜き差しすることはあまりありませんが、たまにパドルとして使います。その時は接続ボックス前面のトグルスイッチを下げてパドルモードにしています。

接続ボックスにスイッチをつけない方法があります。それは、写真16の上部の白いミノムシクリップのように両接点を接続します。これで右に倒しても左に倒しても接点1つで動くので複式キーとしてはたらきます。パドルとして使用するときはこの接続を外すだけです。


写真16 複式キー配線(接続ボックスのスイッチを不要にするための配線)

部品一覧

(1) 電鍵加工用部品
・L形プラスチック
・ミニジャック(3.5mm) 電鍵1台につき1個
・圧着端子(なくても可) 電鍵1台につき2個
・スイッチ(なくても可)

(2) ボックス製作用部品
・イヤホンスプリッター 4個(=4口)
・トグルスイッチ 必要に応じて(2回路2接点: 複式電鍵/パドルの切替用)
・プラスチックケース 加工のしやすいもの

ご注意

今回制作した電鍵接続ボックスの回路は、接続した無線機がすべてアイコム製という環境下でテストし、実用上問題のないことを確認していますが、読者より、「複数の無線機を同時に接続すると、キージャックの電位差によって、最悪無線機が故障する可能性もあるのではないか」との趣旨のご指摘をいただきました。

昨今、マニュアルに回路図が記載されていない関係もあり、個別に確認することができません。つきましては、ご指摘の点を勘案して無線機を壊さないためにアイコム製以外の無線機の接続にはこの接続ボックスを使用せず、従来通りの無線機毎の個別接続を行ってください。また、使用する場合は、キーラインにすべてダイオードを挿入して、意図しない電流の発生を回避することをおすすめします。

最後までお読みいただきありがとうございます。
また来月お会いしましょう! 73!

de JH3RGD

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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