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Mr. Smithとインピーダンスマッチングの話

【第33話】 アンテナと空間のインピーダンス(その1 電磁波とは何か)

濱田 倫一

第32話まででトランジスタ回路の整合回路設計について一通りのお話を終えて、本連載もいよいよ大詰めとなりました。連載の最後に取り上げるテーマは「アンテナ」です。アンテナのインピーダンスとは何なのか、説明を求められると回答に窮する方は、ベテランの方でも結構多いのでは無いでしょうか。ここでは電磁波とアンテナの今更人には聞けない話について、第4話と同様、イメージを理解してもらうために、数式を使わずに物理的に少々乱暴な図を用いて解説を進めます。「その説明は矛盾があるだろう」「厳密には間違っている」的なご指摘があるかもしれませんが何卒ご容赦ください。

1. 波(波動)とは何か?

電波は光と同じく「電磁波」という波動現象の一種です… とは高校の物理の教科書で学んだ事です。では「波動」とは何か… Wikipediaで調べてみると「物理学では波動と言うと、何らかの物理量の空間分布パターンが伝播する現象を指す。」と書かれていました。

図1にイメージ図を示します。(a)がある媒質で満たされた領域の中央から外側に広がって伝搬する波のイメージ図です。(a)図において、ある瞬間の矢印Lの方向に沿って媒質の物理量の変化を調べたグラフが(b)図、矢印L上のある点Pで物理量の時間変化を調べたグラフが(c)図となります。エネルギーが波動として伝搬するときに発生する物理量の変化は、(b)(c)に実線と破線で示すように、2種類がセットになっていて、片方の物理量が最大の時は他方が0になって相互にエネルギーを交換しながら、媒質全体が移動することなく、エネルギーのみが伝搬してゆきます。


図1 波(波動)のイメージ図

抽象的過ぎてイメージがわきにくいですね。身近なイメージで水面上の波に例えて見ましょう。(a)は洗面器に張られた水を上面から観察していると考えてください。中央の「波源」と書かれたところに一滴の水滴を落としてt[msec]経過した時のイメージ図です。先の説明文は次のように書き換えることができます。

(a)が水面(=媒質で満たされた領域)の中央から外側に広がって伝搬する波のイメージ図です。(a)図において、ある瞬間の矢印Lの方向に沿って水面の高さと水の流量(=媒質の物理量)の変化を調べたグラフが(b)図、矢印L上のある点Pで水面の高さと水の流量の時間変化を調べたグラフが(c)図となります。水面を波が伝搬するときに発生する水面の高さと水の流量の変化は、(b)(c)に実線と破線で示すように、水面の高さが最大の時は水の流量が0、水面の高さが0の時は水の流量が最大になって相互にエネルギーを交換しながら、水全体が移動することなく、エネルギーのみが伝搬してゆきます。…如何でしょうか、すこしイメージを掴んでいただけましたでしょうか。水面の波以外の身近な波について、同様の整理をすると表1のようになります。

表1 身近な波と電磁波の比較



ちなみに水面の高さは位置エネルギーに相当し、流量は運動エネルギーに相当します。位置エネルギーと運動エネルギーが一定周期で相互にエネルギーを交換し合う現象を「振動」と呼びます。波動が継続するためには、波源が継続して振動し続ける必要があります。

2. 電波(電磁波)とは何か?

ここまでの説明は、何らかの「媒質」を伝搬する波のお話でした。これに対して電磁波は、表1の最下行に記載したとおり媒質の無い空間…すなわち真空中を伝搬します。電磁波は電界と磁界が交互に「発生」しながら伝搬してゆきます。模式的に書くと図2のようになります。すなわち、とある電流Iの周囲にはIの大きさに比例した大きさの磁界H1が発生します。電流Iの大きさが変化すると、磁界の大きさが変化するため、この変化に比例した(この変化を打ち消そうとする)大きさの電界E1が発生します。E1の大きさが変化すると、空間には等価的に、その変化に相当する電流(変位電流)が流れたことになるため、電流変化の大きさに応じた(電流変化を打ち消そうとする)磁界H2が発生します。発生した磁界の大きさは電界強度の変化に比例するので、やはり電界の変化に対応して変化します。この結果、磁界の変化によって新たな電界E2が発生する…を繰り返して伝搬するのが電磁波です。


図2 電磁波の概念図

ここで、磁界Hと電界Eは互いに直交しています。また横波ですので波の伝播方向に対しても直交しています。このため電磁波の伝搬の様子を図1と同じように示そうとすると、図3のようなイメージになります。(a)の「波源」の位置には手前↔奥方向に交流電流Iが流れていると考えてください。その交流電流が波源にになって、媒質の存在しない空間に新しい電磁界が次々と生成されて広がって行くのが電磁波のイメージ図です。(a)図において、ある瞬間の矢印Lの方向に沿って電界Eの強度と磁界Hの強度の変化を調べたグラフが(b)図、矢印L上のある点Pで電界Eの強度と磁界Hの強度の時間変化を調べたグラフが(c)図となります。EとHは常に直交するので、(b)(c)では直交した別々の面にEとHをそれぞれプロットしました。


図3 電磁波のイメージ図

ここで(b)図(c)図において、電磁波が伝播するときに発生する電界強度と磁界強度の変化は90°の位相差がつくのではないかという質問が出そうなので、図2のイメージと電界E、磁界Hそれぞれの振幅の大きさの関係について、図4に追記してみました。別の言い方をすると、媒質を伝播する波の場合、位置エネルギーと運動エネルギーのようにエネルギーが形を変えながら伝播したので、片方が最大の時は片方がゼロでしたが、電磁波のエネルギー(電力)は、EとHの積なので、両者は同相(直交している物理量に”同相”という言葉を使って良いかは怪しいですが・・・)である必要があります。


図4 電磁波の概念図と電界・磁界の振幅の関係

3. 第4話の復習

電波(電磁波)の波源は電流(電流の変化)であることがお判り頂けたと思います。実は本連載では過去に電磁波について解説したことがあります。第4話の「伝送線路と反射係数」で電流の伝わり方について解説した時です。ちょっと復習をしましょう。図5はインピーダンス100Ωの電源と10m離れたところにある300Ωの抵抗を特性インピーダンス100Ωの線路(平衡フィーダなどのイメージ)で接続し、電源SWをONにしてから、負荷に電流が到達するまでの様子を模式的に説明したものです。電流の速度=電子の移動速度は亀の歩く速さより遅いのに、同図①に示す、電源スイッチSをOFFからONに変化させたときの電圧・電流の変化は、同図②に示すように33nsec後には10m離れた300Ωの抵抗に到達しますが、その理由は、電源スイッチSをOFFからONにしたときにスイッチの出口側に生じる電圧・電流の変化が電磁波として100Ωの線路(2本の電線の間)を負荷に向かって伝播する為でした。


図5 電源SWをONにしてから負荷抵抗に電流が流れるまで(第4話から再掲)

もう少し詳しく見てみましょう。図6は図5の①、すなわちスイッチSをONにした直後の様子を電磁界分布のイメージで表現したものです。スイッチSをONにすると線路を構成する2本の導線の間には電位差が生じるので電界E1が発生し、電界E1の発生(変化)によって磁界H1も同時に発生します。導線上ではこのH1を発生させるに相当する電流iが観測されます。

H1の発生に伴ってE2が、E2の発生に伴ってH2が発生・・・を繰り返して、電磁波が2本の電線の間を伝播してゆきます。また導線上には電磁波の伝播に伴って電流iが観測されます。我々は学校の理科の授業で「電流は導線を伝わる」と習いました。この時、多くの方が「電気(電力)は導線を伝わる」と誤解されているのではないでしょうか。「電力(電気エネルギー)」は導線の中を伝わるのではなく、2本の導線の間を伝わってゆきます※1

※1: 完全な直流電力(電圧・電流が一切変化しない)は電磁波を生じないので導線の中を伝わると考える事ができますが、電圧や電流の値の変化・変動は電磁波として導線の間を伝播します。


図6 図5の①を電界と磁界のイメージで書いてみると・・・

ここでもう一度、図3・図4を見てください。図3・図4では電流の変化を発生させると、電流と直角の方向に伝播する電磁波が発生しています。ということは線路の外側(図5の上下方向)にも電磁波が放射されそうなものですが、実際には殆ど放射されません。これは図6に示すように、平行する2本の導線には互いに逆方向の電流が流れるため、この電流で発生する電磁界は線路の外側から見ると相殺されている為です。

4. 電波を放射するには・・・

図5~図6で説明した話は、図7に示すように負荷抵抗が300Ωから∞Ω(OPEN)になっても同じです。図7の場合は、進行波が開放端に到達しても電力が全く消費されないため、全て同相で反射して電源に戻ってきますが、進行波電流、反射波電流共、線路を構成する2本の導線の間は逆方向になるため、外部に電磁波として輻射されることはありません。


図7 電源SWをONにしてから開放端で反射して戻るまで

しかし図7の開放端の導線を図8に示すように、ほんの少しだけ外側に折り曲げると話は変わります。ここから先は話を簡単にするためインピーダンスを無視した説明になります。図8の②に示すように、電源スイッチSをONにしてから33ns経過すると、線路を伝播する電磁波はA-A’の部分まで到達しますが、まだ先に導体が存在するので、B-B’に向かって進み、B-B’端で反射して電源スイッチSに向かって反射が始まります(図8の③)。この時、A-B間の電流とA’-B’の電流は進行波、反射波共に同一方向を向いています。

この時の電界と磁界の様子を図9に示します。直前までA-B、A’-B’間には電流が流れていなかったのが、スイッチSがONになってから33ns後(図9の②)に電流が流れ始めることで磁界が発生し、33ns+α後(図9の③)にその大きさは最大になります。この間、磁界の大きさが変化するので、これに呼応して電界が発生、電界の変化に応じてさらに磁界が発生・・・というかたちで、(ほんの一瞬ですが)電磁波が発射されます。

A-B、A’-B’間は、2つのエレメントの電流の方向が同じになるため、線路のように発生した電磁波が相殺されることはなく、エネルギーが外部に放射・伝播してゆきます。これがアンテナの基本原理です。


図8 開放端線路の先端を折り曲げる


図9 図8を電界と磁界のイメージで書くと・・・

図8、図9のケースは直流電源ですから、「④ S→ONから66ns経過」の時点では、線路上を含めて電圧、電流の変化はなくなってしまうので、電磁波の放射は終了しています。つまり図10に示すようにこの方法で電磁波が放射されるのはB-B’間の電圧が上昇するまでのほんの一瞬(数psec以下)だけと言うことになります。また放射されるのはパルス状の電磁波ですので、非常に広い周波数帯域を有したものになります。


図10 A-B、A’-B’部の電圧と電流

実際には、折り曲げて広げた開放線路の先端に電流を流すのは簡単ではありません。なぜなら、A-A’部分でインピーダンスが大きく変化するからです。スイッチSからA-A’部分までのインピーダンスは線路の特性インピーダンスZ0(=100Ω)ですが、広げた部分の先端は何処にも接続されていないので、A-A’部分から先端側を見た時のインピーダンスはほぼ∞Ωとなり、線路を伝播してきた電磁波エネルギーは、殆どがA-A’部分で反射してしまうからです。

ではどうすれば広げた部分に電流を流すことができるのでしょうか。次回はこのあたりからお話させていただく事にします。

5. 第33話のまとめ

第33話ではアンテナのインピーダンスの話に先立ち、「電磁波」とは何かについて解説しました。高校の物理では「光は粒子か波か」という話が登場するのですが、電気屋は基本的に光の「波」の性質部分、すなわち「電磁波」との付き合いが深いと思います。完全な直流を除き、有線・無線関係なく、全ての電気信号、電気エネルギーは電磁波として伝播しますが、そのイメージがお判り頂けましたでしょうか。以下、第33話の要点を纏めます。

(1) 電磁波は電流の変化を波源とし、空間(真空中)を電界と磁界が交互に「発生」しながら伝搬する波動である。
(2) +/-が対になっている導線(並行線路)では、対の導線を流れる電流の向きが互いに逆方向なので、電磁波は外部に放射されること無く、導線の間を伝播する。
(3) 並行線路を開いた区間に流れる電流は並行線路のような相殺が働かないので、空間に電磁波を放射する。

次回はダイポールアンテナについて解説します。

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次号は 8月16日(月) に公開予定

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