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日本全国・移動運用記

第70回 北海道・道東方面移動(後編)

JO2ASQ 清水祐樹

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(前号からの続き)

伝搬のコンディションが次第に上昇し、交信数が増えてきた

雪が雨に変わり、相変わらずの冷え込みが続く中、網走郡津別町で早朝の運用を開始しました。北海道のこの時期は日の出の時刻が早いため、冬季の早朝とは違って、1.9MHz帯は全く聞こえず、3.5MHz帯の近距離がなんとか聞こえる程度でした。それでも、朝の6時台から7MHz帯と10MHz帯で1エリアなどの国内が広い範囲で聞こえるようになりました。サテライト通信の時間の都合で、津別町での運用は途中で打ち切って、次の予定の場所であった美幌町に移動しました。ここは高台にある公園の駐車場を利用しました(写真1)。


写真1 網走郡美幌町での運用の様子

10MHz帯のCWでは80局以上から呼ばれ続けました。さらに上のバンドでも電離層の状態は良好で、28MHz帯で2エリアと交信できるなど、4時間近くもパイルアップが続きました。最高気温が5℃前後の寒さが続き、相変わらず防寒具を着込んでの運用です。それでも雨は上がって過ごしやすくなりました。

リクエストが多かった場所の一つが網走市でした。人口が多いために農場や住宅などが多く、自由に利用できる場所が確保しにくい、地形的な起伏が大きくサテライト通信の運用に適した広い場所が少ない、といった特徴があります。そこで、オホーツク海に面した海岸を利用しました(写真2)。伝搬のコンディションとしてはまずまずで、10MHz帯と14MHz帯で多くの局から呼ばれて時間が無くなってしまいました。網走市に隣接する斜里郡小清水町では原生花園に面した駐車場で運用しました。ここは見渡す限りの湿地が広がっていて、周りには建物は一切無く、人工的なノイズも全くありませんでした。


写真2 網走市での運用の様子

待望のEスポ、5時間連続のパイルアップに

斜里郡清里町では朝5時台から運用を開始しました。北海道では、コンビニエンスストアは早朝に営業していない場合が多く、朝食は前日に用意しておきました。

公園で運用を開始すると、7MHz帯や10MHz帯がものすごいパイルアップになり、イオノグラムを見ると本格的なEスポ(スポラディックE層)が発生していました。順番に周波数の高いバンドにQSYして、28MHz帯で42局と交信後には10時を回っていました。5時間で500QSO、この間、短時間のトイレ休憩のみで、運用しながら食事をとりました。このような大パイルアップが、北海道での移動運用の一番の楽しみです。

続く斜里町でもパイルアップが続き、今回の大移動で交信の機会が少なかった50MHz帯でも交信できました(写真3)。その後、根北峠を越えて目梨郡羅臼町まで60km以上の長距離移動を予定しており、路面が凍結している可能性もあると考え、昼間の路温が上がった時間帯に一気に移動しました。再び雨の気配があり、羅臼町での運用は7~14MHz帯の3バンドだけに限定しました。


写真3 斜里郡斜里町での運用の様子

翌朝の標津郡中標津町では、雨上がりの晴天のもとで運用を開始しました。この日は中標津町から釧路市まで長距離の移動になり、運用時間があまり確保できませんでした。中標津町と野付郡別海町の運用場所は、あらかじめ調べておいた市街地にある公園を利用しました。根室市は河川敷の広場を利用しました(写真4)。ここも周囲に建物は一切無く、衛星からの信号は仰角0°付近まで強力に聞こえていました。根室市、厚岸郡浜中町では伝搬のコンディションが上がって、7~28MHz帯の各バンドで交信できました。


写真4 根室市での運用の様子

釧路市、釧路郡釧路町とも、CWではリクエストが多かった所です。この付近は市街地を外れると原野が広がっており、立入りが制限されているなどの事情で、むしろ運用場所を確保しにくいので、市街地にある公園で運用しました。天気が良くなって夜と昼との温度差が激しくなり、昼間は着る物をこまめに調整する必要がありました。阿寒郡鶴居村ではEスポが発生し、28MHz帯で38局と交信できました。その後は伝搬のコンディションが低下して、1エリアと10MHz帯で交信することも難しくなりました。

ついに最終日、コンディションは大きく変化

最終日は足寄郡足寄町で運用を開始しました。ところが伝搬のコンディションが悪く、7MHz帯はごく一部の地域しか聞こえない状態が続きました。このように、日によって伝搬のコンディションが大きく違い、コンディションが悪い時には観光に出かけようかという気分にもなります。しかし、コンディションの上昇を信じて、次の中川郡(十勝)本別町の河川敷で待ち構えると、Eスポが発生し28MHz帯まで交信できました(写真5)。


写真5 中川郡(十勝)本別町での運用の様子

帯広市の周辺は町村が多く、短時間で全てを回ることができないので、池田町の後は高速道路を利用して、リクエストが多かった上川郡(十勝)新得町(写真6)と、河東郡鹿追町に移動しました。


写真6 上川郡(十勝)新得町での運用の様子

夜には小樽まで長距離移動してフェリーに乗船するため、17時には運用を終了しなければなりませんでした。伝搬のコンディションはあまり良くなかったため、パイルアップで時間を取られることは無く、予定通りきっちり終わりました。

帰りのフェリーでは、行きと同じようにIC-705を使ってサテライト通信を行いました。陸地が無い珍グリッドロケータPM89では行きに4QSO、帰りに4QSOできた一方で、同じく陸地が無いPM88では、波が高くて船の揺れが大きくなり、運用を控えたこともあってQSOできませんでした。

QSO数を表1に示します。今回の移動は利用できる衛星が多かったため、サテライト通信だけで1日400QSO前後をキープし、HF帯では7~14MHzの各バンドでQSO数が多くなりました。

5月2日と3日は伝搬のコンディションが特に悪く、18MHz以上はほとんど聞こえませんでした。4日以降は3.5~28MHz帯まで各バンドが好調でした。50MHz帯は、アンテナがロングワイヤーで利得が低かったこともあり、6QSOに終わりました。結果として、1日1,000QSOを7日連続で記録しました。


表1 QSO数の日ごとの集計。1.9~50MHz帯はCW、サテライトはCWとSSB。これ以外に、430MHz帯DV(D-STARレピータ経由)で6QSO、行きのフェリーで14QSO、帰りのフェリーで22QSOできた。

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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