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おきらくゴク楽自己くんれん

その3 HFJ-350M二刀流!? マルチバンドホイップのVダイポール化

JF3LCH 永井博雄

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皆さん、こんにちは。おかげさまでこの連載も3回目を迎えることができました。過去2回は50MHzポケットダイポールアンテナ製作と使用レポートでしたが今回は目先を変えて市販のマルチバンドホイップアンテナを改造してその楽しみを広げる方法を探っていきます。メジャーリーグで大活躍している大谷翔平選手にあやかり?二刀流に挑戦です!

1. コメットHFJ-350Mとの出会い

コメットからマルチバンドホイップアンテナHFJ-350Mが発売されたのが2019年8月でした。当時IC-703を使って仕事やレジャーで立ち寄った先で手軽にHFの移動運用をしたいと考えており、そういう使い方にちょうどいいアンテナだと思い購入しました。バンドごとに調整作業が必要ですがこれ一本で1.9MHzから50MHz(1.9MHzオプションコイルは後に購入)までの10バンドで運用できるなんて。その日その時、コンディションが一番いいバンドでQRVすることが出来るなんて。とてもいい物を手に入れることが出来たと喜んでおりました。


COMET HFJ-350M

私の場合このアンテナを使っての移動運用はほとんどがCWかRTTYモードで行っています。ボトムローディング方式ということもありHF帯ではSSBモードの運用はちょっと厳しいものがあります。もちろん使えないということはなく混みあった7MHzのSSBでもIC-705の10W(お相手のアンテナは不明ですが)同士での交信も成功しています。しかしそのためには設置場所の状況、ラジアルアースの取り方、グランドの状態、などを考慮しその場その時に上手く調整する必要があります。なかなかいい状態が得られない時には面倒だなぁと感じることもありました。

一番手軽なのは車に取付ける(走行中は使用不可)方法です。マグネット基台にリアドアのヒンジにアースを落とし使っていました。しかし私の車のドアがボディに完全に落ちてなかったためか、調整に手間取ることも多く自作のマグネットアースシートを使っての運用が主になっていました。

しばらくするとこのアンテナは車に積みっぱなしになり徒歩移動などの時に使う同じアンテナが欲しくなってきました。当時たまたまWEB通販のポイント(期間限定)が余っていたこともあり深く考えることなく“ポチっ”と注文をしてしまいました。これによりHFJ-350Mの2本体制が整ったというわけです。

届いた新しいアンテナは改良され3.5MHzバンドの出力が100Wに変更されておりバンド変更タップに表示がつけてありました。マネをして古い方のタップ部分にはテプラを使ったシールでバンドとついでにロッド長さを明記したものを貼っておきました。


自作マグネットシートを使っての運用の様子

2. もう一本のアンテナを活躍させる活用法を

勢いで買ってしまった感が否めない2本目ですが当然新しくてキレイでピカピカです。ついつい使うのがもったいなくなって温存してしまい、ほぼ使うことがなく半年以上の時間が流れていきました。

一本だけで車での移動運用を続けていたある日、なかなか調整がうまくいかないことがありちょっとイライラ。その時ふと思い立ちました。「ラジアルで苦労するなら余っているもう一本をラジアルにすればいいのでは?」そう2本使ってダイポールにしてしまおうということです。どうせ使わないのですから、せっかくなので役割を与えてやることにしてみました。


こんな感じで使えるようにしてみましょう

3. 材料をそろえます

必要なものを頭に浮かべながらホームセンターで材料を買い揃えました。

ダイポール化のために集めた材料

樹脂製まな板 270×170×10t アルミLアングル 30×30×1000L
ステンレス角プレート UP-40 ステンレスUボルト M6×57×68
ステンレス蝶ボルト M6 2個 5mm20プラスネジ・ナット・ワッシャ各6個
M型レセプタクル 3個 メガネ型コア 2個
同軸ケーブル 1.5D-2V 30cm 熱収縮チューブ 少々


店舗によっては厚手のまな板しか置いてないので注意


これらは全てホームセンターで入手

まな板は500円ほどでしたが厚みのある一回り大きいものになると値段の桁が一つ上がってしまいます。小さいのを置いているお店を探してください。アルミアングルは鉄よりも加工が断然しやすいのでアルミがいいでしょう。長さ1000㎜の物になっていますが1000㎜の物しか売っていなかった為です。実際は300㎜も要りません。他はステンレス材を採用したので少々お高くつきました。常設しない、雨の日に使わないのであれば鉄製でも問題なくもっと安価に購入できるでしょう。

【くんれんコラム】

HFJ-350Mの取扱説明書にはロッド部分の各バンドでの長さ目安が書かれていますがロッドの伸ばし方で同調周波数はかなり変化します。例えばロッドを縮めた状態から先の細い部分から伸ばして周波数を調整します。つまりロッドを極力細くして調整します。21.196MHzが最良点となりました。


今度はロッドを伸ばしきった状態から先の細い部分をから引っ込めて先ほどと同じ長さに合わせます。つまりロッドエレメントを最も太くして同じ長さにするわけです。その状態で測定してみますと


ご覧のように同じロッドの長さでも最良点が20.366MHとなり800kHz以上下がってしまいました。エレメントの太さってこんなにもアンテナの特性に影響を与えるのですね。




4. ダイポール化プレートの製作開始

まずはアルミアングルの加工からです。100㎜長さに切った2個と65㎜長さに切った1個にM型レセプタクルをつける16㎜の穴をあけます。私は充電式ハンドドリルにステップドリル刃をつけてあけました。その後5㎜ネジを通す穴も2箇所ずつあけます。この部分の加工が一番大変な加工でした。


100㎜のアングルは少し長すぎました

次に樹脂製まな板プレートの加工です。まずは長手方向を約165㎜で切り取ります。V角度が大体120度になるよう耳部分斜めにカットします。さっき作ったL型アングルが上手く納まるように気をつけてください。この切り取り作業には100均で売られている金ノコがあれば力も要らずに簡単切ることができます。


ネジ穴も安物の充電式ドリルで簡単にあけることが出来ました。この後、下の部分にポール取り付用のUボルトを通す穴もあけておきます。


今回もメガネコアを使った簡易バランを使用します。配線的にはリグからの同軸のホットとコールドを右と左のアンテナエレメントに振り分けするだけのことです。もちろんこの部分に市販のバランを使うことも可能です。手持ちバランが余っている方は工夫をして取り付けてみてください。その際65㎜アングルは必要なくなると思います。バランは写真のように1.5D-2V同軸ケーブルをメガネコア2個に通し接続に必要な部分をむき出します。この部分を支持することは考えていないので必要な強度を得るためと絶縁性の確保のため熱収縮チューブを通してコアの重さを支えられるようにしています。

主要部品ができたら樹脂板に取り付けてみます。


メカメカしくいい感じ

プレートの下部にポールに噛ますためのUボルトと角プレートを蝶ネジ留めておきます。


何かロボットに似ています

出来たのでとりあえず実際に使ってみましょう。

5. テスト運用


この日は風が非常に強かった

この日、お天気は良かったのですが風が非常に強い日でした。2本を普通に基台で使う時のように取扱説明書の7MHzの長さにして取付けます。するとかなり低い周波数で同調してしまいます。給電部分のリード線分もエレメントとなるようです。アンテナアナライザーを使って何度か6m伸縮ポールを伸び縮みさせて調整しました。これは結構面倒な作業だなと感じました。

強風を受けてポールを伸ばすと強風でポールがかなりしなってしまいます。使っているポールが細いせいもありますが樹脂板の形が凧のような感じなので風と良く受け止めてしまっているようでした。この日はポールを半分強の高さにして電波を出してみました。私の場合7MHzではSWRは1.5くらいまでしか落とすことが出来ませんでした。左右のアンテナ同士が干渉しているのかもしれません。それでも国内のコンディションは比較的良い状態だったので数局と立て続けて交信していただきました。

後日、樹脂プレート下部の真っすぐだった部分を斜めにカットして風の抵抗を大幅に削減しました。結果少し格好も良くなりました。



フラッシュサフェース化? を実施

早速テスト運用していました。前回より風が強くなかったこともありますが安心して6m高さまで上げることが出来ました。この形状であれば先日のような風でも6m高さまで上げることができそうです。


これで多少の風でも大丈夫になりました。

6. 使用感と感想

その後、出力10Wの移動運用で何度か使用してみました。バンドチェンジ操作ですが、きちんと調整しようとすると何度もポールを上げ下げしなければならず面倒な作業で期待していたスムーズQSYにはほど遠い感じでした。大体のロッド長さを覚えていれば面倒がなくなるのだろうと思えますが設置周囲の影響をうけるので一発必中の簡単調整は難しそうです。どうしても調整できなくて調べると左右のタップを挿す位置を間違っていたということもありました。

先にも書いたように左右のアンテナが相互に干渉するためか7MHzではなかなかSWRが1.5程度より下がってくれません。やはり低い周波数(3.5MHz・7MHz帯)での飛びもあまりよくないように感じます。


HFでは同じアンテナを2本使ったからと言ってゲインが上がるということはありません。50MHzであれば相手が水平偏波の場合は合わせられることと高く上げることで1/4λホイップアンテナよりもいい結果が得られると思います。


標高600mくらいの山で21MHzを運用

ローバンドではもしかするとホイップアンテナとして1本での使用の方がいいように感じました。しかし高い周波数のバンドでは、例えば5月に18MHzで運用した時はEスポが出ていたので多くのエリアの沢山の局と交信できました。50MHzでは水平偏波になり高く上げることで普通のダイポールアンテナと比較して遜色ない感覚で使うことができます。

今回の改造に必要な材料はホームセンターにて2千円以下で揃いましたが、1本1万円弱のアンテナを2本そろえなければならず、合計で2万円程度の費用が必要なところがタイトルに相反する「おきらくとはいかない」というのが最大の問題でしょうか。

メリットとしてはHF帯でアースは不要ですから「自動車に加工・細工をしたくないが移動運用で出てみたい」とか「スペースの都合などで良好なアースを取ることが出来ない」というような方は試してみる価値があるかも知れません。ただし上記のようなクセがありますので考慮して使う必要があると思います。

1.9MHzオプションコイルを追加

本稿の締め切り後、別売のHFJ-L1.8/1.9というコイルを2本入手したのでDP形式で使ってみました。追記の形でレポートします。


全コイル装着状態(標準・3.5MHz.1.9MHz)

標準コイル・3.5MHz用コイルと今回のコイルを追加すると片側が2mに近くなりまな板給電部の強度が少し心配なレベルですが何とか使えそうです。手持ちの3.5MHz用コイルは一本が耐電力75W仕様でしたので100W仕様のものに合わせておきました。

季節はすでに夏のコンディション、このバンドには厳しい時期ではありますが夜間に奈良県山辺郡山添村(JCG24009)で運用してみました。さすがに10Wでは厳しいと思いましたので50Wで運用。CQを出していた局を呼んでみたのですが何度呼んでも反応がなく「やはり厳しいのか?」と思いながらも空き周波数を探してCQを出してみることに。空振りがしばらく続きましたが兵庫県の局から呼び出しが。その後、三重県、愛知県と合計3局の耳のいい局と交信することが出来ました。これなら国内コンディションが良くなる秋以降は結構楽しむことが出来るのでは?と感じました。

こんなコンパクトなアンテナが1.9MHz帯で実用になるとは。少し感動を覚えました。

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