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My Project

第43回 【ホームセンターで材料が揃う】430MHz 6エレ八木アンテナの製作

JP3DOI 正木潤一

2025年6月2日掲載


「My Project」の第1回目の記事は、430MHzバンドの6エレ八木アンテナの製作でした。あれから8年以上経ち、もう一度構造からを考え直した八木アンテナを作ってみようと思いました。

今回は、ほぼホームセンターで入手できる部材だけを使用した八木アンテナの製作をご紹介します。

お礼: いつも記事をご覧くださっている方々へ

当時の私の記事を参考に製作された方のブログを多く見かけました。ほぼそのまま再現しておられる方や、至らない点を補うべく改良してくださった方もいます。参考にしていただきありがとうございます。また、気のせいかもしれませんが「カブセ」という建材をDIYに利用する方が増えたように思います。私としては、記事の中で紹介している部材や加工方法だけでも参考にしていただければ嬉しい限りです。同時に多くの方の目に触れることの責任を感じております。

改良点

第1回で製作したアンテナは、ブームに安くて加工しやすい樹脂製の建材「カブセ」を利用しました。これにより、重量80gとたいへん軽くスリムに束ねることができました。一方、強度が低いため恒久的な設置や継続的な使用には向いておらず、構造上、使う度にエレメントを垂直に整える必要がありました。また、エレメントが細いので曲がりやすいという欠点もありました。


今回は、テンプレートにより加工精度を高めるとともに、自然と垂直出しができる構造にしています。しかも(ほぼ)すべての部材がホームセンターで揃えられます。


ネジで側面から押さえ付けると、自然にブームとエレメントが垂直に交わる構造

部品表


製作

1. エレメント固定具の加工
エレメントのブームへの固定に塩ビパイプ(VP-13)を使います。ブームを中に通すことでエレメントが垂直になる構造です。

  •  ※注意: この作業の精度でブームに対するエレメントの直角具合が決まります。慎重に進めてください。

1) テンプレートを下記のリンクからダウンロードし、高品質で等倍印刷します。
 テンプレート(PDF)

2) テンプレートを切り取って塩ビパイプに巻き付けます。

  •  ※巻き始めと巻き終わりがピッタリ重なるようにします。


3) 穴開け箇所にキリか細径ドリルで印を付け、テンプレートを剥がします。

4) 4mm穴とM4ネジ穴を2つずつ開け、パイプカッターで切り取ります。

  •  ※ドリルビットを手で回して穴を開けます。ドリルの歯が斜めになるとエレメントも斜めになってしまいます。



ネジ穴はM4タップを使って開ける

5) 2~4を繰り返し、合計6つ作ります。

2. 導波器と反射器の加工
1) 4mm径アルミパイプを各寸法にカットし、中心に印をつけておきます。


2) エレメント固定具に導波器4本と反射器1本を挿し込み、真ん中で固定します。

  •  ※内側をラジオペンチでつまんで少しかしめて抜けなくします。


3. 放射器の加工
6mm径アルミパイプと4mm径樹脂パイプを各寸法にカットします。


4. 放射器の組み立て


1) 4mm径樹脂パイプを固定具に挿入し、真ん中で固定します。

  •  ※樹脂パイプの挿入は力がいるので注意してください。

2) 10cm程度のテグスと20cm程度のショックコード2本を用意します。

3) テグスを樹脂パイプに通してから両端にショックコードを結び、放射器と卵ラグに通します。

4) ショックコードを引っ張ってテンションを掛けながら結び目を作ります。

  •  ※給電箇所なので、卵ラグにしっかりテンションが掛かるようにします。

5. ブームの加工


1) アルミ平板を寸法どおりにカットします。

2) 図の位置に目印を付け、8mm径のドリルで削って4mm径程の浅い窪みを造ります。

  •  ※穴を開けるのではなく、窪みを作ります。深くならないように注意してください。

6. エレメントの取り付け


1) 各エレメント固定具をブームに通していき、ユリヤねじで固定します。

  •  ※固定位置はブーム上に作った窪みを頼りにします。ブームを擦るくらいにまでネジを締め、ブーム上を行ったり来たりさせて擦りながら窪みの位置を探ります。

2) すべてのエレメントが垂直になっていることを確認したら、ユリヤネジを強く締めます。

  •  ※もし、斜めになっているエレメントがあれば、エレメント取り付け具の穴あけ精度が低いので、固定具を作り直すことをおすすめします。

3) ブームの裏側で2本のブームを交差させ、2本の蝶ネジで固定します。


7. 同軸ケーブルの取り付け


1) 卵ラグを直角に曲げ、同軸ケーブルをハンダ付けします。

2) 同軸ケーブルにフェライトコアを取り付け、ケーブルタイでブームに固定します。

運用と使用感

第1回目のアンテナとは構成が同じで部材が異なるだけなので、特性としては同じです。ブームを分割して各エレメントを取り外せば持ち運びやすくなるので移動運用向きです。


このアンテナは簡単に分解可能。ブームにある窪みにネジをハメるだけで組み立てられる

カメラの三脚に取り付けるためのアダプターは、塩ビ管(VP-13)を使って作れます。


三脚に取り付けるアダプターの例


実例

最後に

第1回目の記事から8年以上も経つと、その間に自分の中にいろんな部材や加工の知識が増えていました。あくまで趣味ですから、これを「成長」と呼ぶのは大げさかもしれませんが、同じモノを違うアプローチで作ることで改良するのはとても楽しいです。モノづくりを続けていて良かったと思いました。

今回ご紹介した『エレメント固定具』の構造は、シンプルながらエレメントを垂直に維持できます。こういう、「いい方法を思いついた」時の快感はモノづくりならではだと思います。しかし、放射器の給電部分はまだ納得していません。もっとスマートな構造があるはずだと思います。ただ、これが「今の私のベスト」なので、新たな課題として楽しみにとっておきたいと思います。

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