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第19回 ハムフェア2019自作品コンテスト奮闘記 【50MHz AMトランシーバーの製作】

JP3DOI 正木潤一

局部発振回路

マイコンからのシリアルデータで制御するPLL方式です。運用周波数範囲50.000~51.000MHzを10kHzステップでカバーしています。

・VCO
実装スペースが限られているので、発振コイルにチップインダクタを使うことも考えましたが、Qの高い空芯コイル(6mm径)を使いました。発振周波数範囲は1MHzでよいのですが、せっかくなので回路を別の機会でも使えるように、VCO単体の周波数範囲は47MHz~57MHzと広く設計しました。ちなみに、この周波数帯のVCOを組むのは初めてでした。

・PLL
PLL ICには、ナショナルセミコンダクタ製『LMX2352』を使っています。10MHzの水晶発振子で基準周波数信号を発振させ、1/1000に分周して10kHzの位相比較周波数にします。VCOの発振信号も、プリディバイダとプログラムディバイダにて10kHzにまで分周します。周波数設定ボタン(UP/DOWNボタン)を押すごとにマイコンから分周比データが送られる仕組みです。

分周比データは計算式を用いて算出するのですが、2つある分周器の分周比をそれぞれ適切に設定する必要があり、少し複雑になっています。また、PTTが押されたとき(送信時)には、発振周波数を中間周波数分(4.5MHz)下げます。


<表計算ソフトを使って求めた、PLLに入力する分周比データ>

位相差はループフィルターを通ってロック電圧としてVCOに印加され、発振周波数が一定に保たれるようにフィードバックを掛けます。受信時、局発信号はPINダイオードを使った局発スイッチを介してTA7358APのミキサに入力され、送信時はドライブアンプに入力されます。

・高周波スイッチ
アンテナスイッチと局発スイッチは、PINダイオード『HVC131』を使ってRF信号系統を切り替えています。
HVC131は、順方向電圧印加時のON抵抗が約1Ω(100MHz、10mA時)、OFF時の抵抗が約1000Ωになります。この特性を利用してダイオードに流れる高周波信号の流れを制御しています。

送信回路

・マイクアンプ
TA7358APに内蔵されているトランジスタを、マイク信号の増幅に使います。前述のように、データシートの内部等価図によると、内蔵トランジスタのベース、エミッタ、コレクタが、ほぼそのままICの端子として出ているので、バイパスコンデンサとコレクタ抵抗の値によってはAF信号を増幅できます。

・変調回路(DBM)
TA7358APに内蔵されているDBMに、局発とマイク信号を加えて振幅変調を掛けます。単に増幅回路のベース端子に入力するよりも、ずっとキレイな変調が掛かっているようです。なお、ミキサの出力にはクリッピングダイオードが内蔵されているため、過入力時には振幅制限が掛かります。

・送信増幅回路
局発信号を増幅する送信増幅回路は、最終的にドライバとファイナルの構成となりました。ミキサの出力が非常に小さいため、利得を上げようとすると異常発振を起こしました。結局、所望の出力が得られませんでした。
なお、もし実用的な出力で送信する場合、運用周波数(=波長)に対して筐体GNDの面積が極めて狭いため、別途ラジアルなどを付けて放射グラウンドとする必要があると思います。

アンテナ

筐体が小さすぎてSMAやBNC端子を取り付けるスペースがありません。そこで、2.5mm径モノラルジャックを取り付け、2.5mmプラグの専用アンテナを作りました。6mバンドですから、1m程度のアンテナは欲しいところですが、筐体のサイズに対して不釣合いで不安定になります。そこで全長約50cmの短縮アンテナとして、基部にマッチング回路を内蔵しました。さらに、持ち運び易いように折り畳めるようにしました。


<2.5mmプラグを付けたアンテナ。基部にマッチング回路を内蔵。コンパクトに折りたためる。>

マイコン

無線機を制御するCPUとなるマイコンが必要です。各回路のON/OFF制御やPLL ICへのシリアルデータ、ボタン押下やRSSIといった、各種信号の入出力のために多くのI/Oポートが必要になります。私がいつも使っているPICマイコンは、My Projectでもお馴染みの8ピンPIC12F675と18ピンのPIC16F648Aです。IC16F648AのI/Oポート数は十分ですが、A/Dコンバーターは無いので信号強度を見るRSSIなどを入力できません。
そこで、自分にとって新しいPICを開拓することにしました。PIC16F88は16本のI/Oポートを持ち、A/Dコンバーターも内蔵しているので、今回の用途に最適だと判断しました。設定がこれまでのPICと異なるので、その作業に少し手間取りました。


<マイコンのポートへの機能(入出力信号)の割り当て>

操作部 (ボタン・マイク・スピーカー・ボリューム)

・表示部
せっかくなので、周波数表示をオシャレに仕上げたいと思いました。一般的には7セグLEDが使われますが、それでは味気ないので、丸いLEDを沢山使って数字を表すことにしました。キレイな淡い色のLEDを25個使って運用周波数の100kHz桁と10kHz桁を表します。


<周波数表示 (50.21MHz)>

LEDドライバとして使用するマイコンのメモリにLEDの点灯データ(どのLEDを光らせるか)を記憶させ、メインのマイコンからシリアルデータでメモリ番地を送って点灯データを呼び出して表示を制御しています。


<表計算ソフトで作ったメモリ番地テーブル。1つ1つのLED点灯状態を2進数でメモリに書き込む>

・操作ユニット
周波数を設定するボタンは、コンパクト本体ではなく、別途製作した操作ユニットに実装しました。UPボタン/DOWNボタンを押すと、運用周波数が10kHzステップで上がり/下がります。さらに、コンデンサマイクとイヤホンジャックを内蔵しています。


<[UP](白)、[DOWN](緑)、[PTT](赤)ボタンの付いた操作ユニット。4極プラグを介して本体に接続。>

PTTを含めて3つのボタンが付いていますが、押したボタンによって分電圧が異なることから押下を検出しています。ボタン押下をプルアップやプルダウン、つまりHighかLowで検出する場合は、ボタンの数だけマイコンへの入力系統が必要です。マイコンのアナログポート(A/Dポート)へ分電圧を入力すれば電圧の違いで押下ボタンを特定できるので、入力が1系統だけで済みます。これはアイコムのHM-75などのキー付きスピーカーマイクと同じ仕組みです。


<ボタン押下検出回路。押したボタンによってマイコンへ入力される電圧が異なる。>

受信音量の調節が必要ですが、操作ユニットには可変抵抗器を付けるスペースはもはや残されていません。かといって、ボリュームツマミだけを本体に付けるのも変です。そこで、苦し紛れに可変抵抗器を内蔵した『ボリュームユニット』を別途作り、スピーカーマイクとイヤホンの間に割り込ませて音量を調整できるようにしました。結果として見た目も使い勝手も悪くなってしまいました。


<操作ユニットにボリュームユニットを取り付けたところ>

最後に

今回のチャレンジを通して、回路1つ1つを組むことはできても、それらを統合して1つの送受信機としてちゃんと動作せることが如何に難しいかを思い知りました。

基板を筐体に収めたとたんにPLLのロックが掛からなくなったり、高周波増幅回路が発振したり、電源ラインの状態によってはレギュレーターが発振してしまったり・・・。小さな筐体に回路を詰め込むには、部品からの輻射や寄生パラメータに配慮して十分な距離をとったり、逆に最短距離で配線したりと、難易度が高いと思います。「1 つの機能だけを持つ回路を小さく組んで得意になっていたのではダメだな」と痛感しました。

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次号は 12月15日(火) に公開予定

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