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日本全国・移動運用記

第48回 IC-9700でサテライト通信の移動運用(前編)

JO2ASQ 清水祐樹

IC-9700にはサテライトモードがあり(写真1)、取扱説明書には「サテライト通信は(中略)通常の交信と多少異なる部分があるため、アマチュア衛星通信関連のウェブサイトなどでご確認ください。」と記載があります。ところが、どのウェブサイトが良いのか分からず困っている方も多いのではないでしょうか。

筆者は移動運用でサテライト通信をアクティブに運用しており、サテライト通信のアンテナ(写真2)が本連載でほぼ毎回登場しています。そこで、IC-9700によるサテライト通信の移動運用について解説します。前編ではサテライト通信の基礎知識、後編(次号)では移動運用の様子やテクニックをご紹介します。


写真1 IC-9700のサテライトモード


写真2 サテライト通信で使用しているアンテナ

はじめに

・「知識や理論は後回しにして、IC-9700で受信だけでもしてみたい」という方は、「2. 使用できる衛星」「3. 使用する設備」「4. 衛星の時刻」を先にお読みください。
・「サテライト通信の移動運用でCQを出す」方法を主に紹介しており、固定局が「CQを出している局を呼ぶ」方法については最小限の説明とします。あらかじめご了承ください。
・使用する用語はIC-9700の取扱説明書に合わせました。ウェブサイトや雑誌記事とは表記の違いがみられる場合もあります。
・IC-9700の取扱説明書「13サテライト通信」も、あわせてご参照ください。
・記事の公開後に、衛星の打ち上げ、停波などで状況は変わる可能性があります。

1. サテライト通信の原理
サテライト通信は、アマチュア無線局が使用することを許可された通信衛星(アマチュア衛星)を利用して、地上から衛星を経由(中継)して地上の異なる地点との交信を行う通信の方法です。地上局から衛星への送信(アップリンク)と、衛星から地上局への送信(ダウンリンク)には、144MHz帯と430MHz帯が多く使われています。一部には1200MHz帯などもあります。
サテライト通信と通常の交信との違いは、例えば次のようなものです。
・自局、相手局ともに、衛星が見えている(=衛星に電波が届く/衛星からの電波が受信できる)時にのみ交信できる
・相手局と自局が、同じダウンリンク周波数で聞こえる。自局が送信する時にも、自局のダウンリンク信号を聞きながら交信する

サテライト通信と月面反射通信(EME)は、混同されることが時々ありますが、全く異なるものです。並べて書くと次のようになります。
サテライト通信:地上局から衛星へ送信(アップリンク)された信号が、衛星で増幅・周波数変換され、衛星から地上局へ送信(ダウンリンク)される。衛星の高度は数100km、地上局は出力10W程度、小型アンテナでも可能
月面反射通信:地上局から月に向けて送信された信号が、月の表面で直接反射して、地上局へ戻ってくる。月までの距離は38万km、地上局は数100W程度、高利得のアンテナが必要


図1 サテライト通信の原理。地上局から衛星へ送信(アップリンク)された信号が、
衛星で増幅・周波数変換され、衛星から地上局へ送信(ダウンリンク)される。

2. 使用できる衛星

現在(2019年8月時点)、日本でアマチュア通信に使用できる衛星は、低軌道衛星に限られています。低軌道衛星は、地球上の高度数100kmを約100分の周期で周回している、1回の可視時間は最長で12分程度、1日に4~5回の可視時間がある、などの特徴があります。

リニアトランスポンダ(CW/SSB)、およびFMレピータが使用できる衛星の一覧と、簡単な特徴を表1に示します。衛星によっては、ON/OFFを管制局で制御している場合や、停波する場合があります。最新の状況はhttp://www.amsat.org/status/ (英語)でご確認ください。

低軌道衛星は高度が低く、可視時間が短いため、「DX(遠距離通信)」や「ラグチュー」には適していません。そこで、筆者は「移動運用で、CW/SSBでどれだけ多くの局と交信できるか」を主な目的としてサテライト通信を楽しんでいます。低軌道衛星では、HF帯よりも激しいパイルアップになることがあり、CWでは1分間に4局、SSBでは1分間に7局のペースの交信も珍しくありません。

日本で打ち上げられた衛星 ふじ3号(FO-29)は、高度が高く、1回の可視時間が20分近くになることもあり、のんびりとした会話やDX QSOも多く見受けられました。しかし、大変残念なことに2019年7月に停波しました。

リニアトランスポンダ(CW/SSB)(出典 https://www.amsat.org/linear-satellite-frequency-summary/ 他)

FMレピータ(出典 https://www.amsat.org/fm-satellite-frequency-summary/


表1 現在(2019年8月時点)利用できる衛星の一覧。なお、日本で利用できない衛星、CW/SSB・FM以外のモードを主とする衛星、不定期に運用される衛星は省略した。表に無い衛星が利用できる場合もある。

注1) ダウンリンクの強さは筆者の主観
☆☆☆  ホイップアンテナでも容易に受信可能
☆☆   ホイップアンテナでも条件が良ければ受信可能。できればビームアンテナが欲しい。
☆     ビームアンテナが必要
注2) ダウンリンク周波数がバンドプランの「衛星」から外れる。
注3) アップリンク周波数の下限付近で送信すると、ダウンリンクがオフバンドになる。
注4) FM衛星はアップリンクにトーンを重畳する。AO-91、AO-92、SO-50は67.0Hz。

3. 使用する設備

ダウンリンクが強い低軌道衛星は、長さ1m程度のモービルアンテナやグラウンドプレーンアンテナで受信できますし、CWであれば実際の交信も十分にできます。

ダウンリンクが弱い衛星や、SSBやFMの場合は、ビームアンテナを使用して衛星を追尾すると確実です。八木・宇田アンテナの場合、ブーム長は1~1.5m程度が最適です。これよりも長いアンテナでは、指向性が鋭すぎて衛星からの信号を見失ってしまう、ローテーターの回転が衛星の動きに間に合わない、という欠点があります。なお、衛星=パラボラアンテナというイメージを持っている方もおられるかもしれませんが、144MHz帯と430MHz帯でパラボラアンテナは使用しません。

ビームアンテナは、水平方向と上下方向の2方向の制御ができれば理想です。通常の1方向(方位)ローテーターであれば、仰角を20°程度に固定して水平方向だけ回転させれば、多くの状況に対応できます。

筆者の移動運用では、三脚に取り付けたアンテナを手動で動かして、衛星を追尾しています(写真3)。このアンテナは自作で、極限まで軽量化したものです。144MHz帯と430MHz帯のエレメントが直交しているのは、ダウンリンクとアップリンクの信号の干渉を避けるためで、通信の性能としては特に必要性はありません。ただし、衛星の種類や、地表面における電波の反射の関係で、特定の偏波(エレメントの方向)で信号が強くなる場合があります。

モービルアンテナやグラウンドプレーンアンテナは水平方向に指向性があるため、仰角が高い衛星の受信が難しくなります。その場合、モービルアンテナを傾けて設置すると有効です(写真4)。

サテライト通信は送信と受信のバランスが重要です。自局のダウンリンク信号が聞こえないのに送信出力をむやみに上げることは厳禁です。他局への混信・妨害になる、衛星側でAGCが働いて受信信号が弱くなる、衛星のバッテリーの消耗を早めるなど、迷惑な運用となります。

筆者はビーコン(衛星のコールサインや状態を表すために衛星から送出されている信号)と同じ程度のダウンリンクになるよう送信出力を決めています。ブーム長1m程度の八木・宇田アンテナで送信出力10W、全長1m程度のホイップアンテナで20~30W程度に設定です。つまり、サテライト通信はアンテナの性能が十分であれば、送信出力10Wで大部分のことができます。


写真3 サテライト通信用のアンテナを手回しで操作している様子。
アンテナを左手で操作しながら、右手でCWを打っている。


写真4 モービルアンテナを傾けて設置した様子

4. 衛星の時刻

衛星が見える時刻は、軌道予報が掲載されているウェブサイトか、軌道予測のソフトウェアで調べることができます。初心者向けとしては、軌道予報が掲載されているウェブサイトが便利です。
SatTrack V3.1.6 (7M3TJZ 安田さん)
日本各地の衛星通過時刻の予報 (日本アマチュアサテライト通信協会)
SATRACK (JO3MQY中村さん)

衛星の時刻は表2のような書式で示されています。
・AOSは見え始め、MELは最大仰角、LOSは見え終わりの時刻です(図2)。
・可視時間はAOSからLOSまでの時間です。
・方位は北を0°とした時計回りの角度で示されており、AOS MEL LOSの順番です。最大仰角はMELにおける高さ方向の角度で、地表面が0°、天頂(真上)が90°です。
・日照は順にAOS, MEL, LOS時において、次の状態を示します。
D 衛星・地上ともに太陽光が当たる
V 衛星に太陽光が当たる、地上は夜
N 衛星・地上ともに太陽光が当たらない
衛星によっては、D(Vも含む)またはNのどちらかの条件のみ使用できる場合があります。また、ISS(国際宇宙ステーション)で日照がVの時には、地上から目視することができます。

各衛星の可視時間は、午前2回、午後2回のことが多いです(CAS-4A、CAS-4B、SO-50は例外)。リニアトランスポンダの衛星は4~6時、15~17時に集中しており、午前4時台からの運用を勢力的に行う移動局もいます。


表2 衛星の時刻を表す書式


図2 衛星の方向を示す用語

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次号は 12月2日(月) に公開予定

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