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Summits On The Air (SOTA)の楽しみ

その5 SOTA移動運用とアンテナ(JP1QECさん)

JH0CJH・JA1CTV 川内徹

みなさんこんにちは、JH0CJH川内です。今回は関東全域でアクティビティの高いSOTAのアクティベーターであるJP1QEC「あぶさん」こと本橋さんを紹介いたします。SOTA日本支部開始直後からほぼ毎週のように山岳移動運用を行っている非常にアクティビティの高い日本支部の中でもトップクラスのSOTAアクティベーターです。あぶさんはSOTAの世界では有名なユーチューバーでもあり、運用したそれぞれの山岳で収録した映像を公開されています。

この映像に魅せられてSOTAを始めた方々も多いのではないでしょうか? 山岳移動時のアンテナに関しての研究も頑張っておられ、自作のアンテナもいろいろと考案されています。今日は、そんなあぶさんにSOTAの魅力を語っていただきましょう。

SOTA移動運用とアンテナ

JP1QEC 本橋 章

1. 背景
山登りと無線はSOTAが始まる前からぼちぼちとしていました。自分は仕事以外で規約や義務に縛られたくなくて山に登るようになったので、無線もコンテストやアワードでログの提出を義務付けられたりするのが嫌でした。だからそのような目的の運用をしたことがありません。でも、ただ山頂から無線をするというのも今一つ目的がはっきりせず、まぁ気が向いたらやる程度にしか自分の中で盛り上がりがありませんでした。そんなときにSOTA Japanスタートを知りました。参加方法を見ると、ログは提出するもののそれは自己申告で、カードや証明など不要のようでした。これは願ってもないアワードです。最初はアンテナも小さい1.2GHzや50MHzを使って国内で細々と交信できればいいやと思っていました。

ところがネットでSOTAを検索すると多くの海外局の様子が見られます。この時初めてDXという言葉が気になりだしました。考えてみると国際アワードなのに海外と交信しないという話はないな。ということで、忘れかけていたCWを必死に修業し直しました。またHFにでられるようアンテナも作りました。リグもFT-817NDを購入しました。初めてのDX交信は21MHz-CW、2015年7月の群馬県、榛名山の烏帽子ヶ岳でした。中国局に呼んでいただいてびっくり、出力は2.5Wでした。これで完全に SOTA DXの虜になってしまいました。

その後、大きな転機が訪れたのは2015年11月に群馬県の尼ヶ禿山に登ったときでした。今までは4mほどの竿でしたが、このときは新しく仕入れたカーボン製の8m竿を持っていきました。あまり期待はしなかったのですが14MHzや21MHz-CWで運用を始めると、何と次々にオーストラリアやアメリカから呼んでくださいました。もうびっくり。あとで考えて、アンテナというよりアンテナの性能を引き出すマストの高さと大地の影響が重要だと気づくのでした。

2. アンテナとマスト大地について考える
こうした経験から、いろいろと自分のなかで誤った考えがあることに気づきました。まず、アンテナゲインです。裸のゲインの話ではなく、実際に使用するときの打ち上げ方向のものです。自分は移動運用で逆V型のダイポール(以後IVDPと略します)を利用します。この給電点の高さは放射電波の打ち上げ角(最大放射強度の水平に対する角度)に密接に関係します。それは大地の反射の影響を受けるからです。一般的に最初の最良高さは1/2λ(IVDPではエレメントの高さ分布の平均位置辺り)です。つまり、IVDPだと、例えば21MHzでDXに有効に飛ばしたければ、1/2λ+αすなわち7.5m以上を目安にマストなりでIVDPの給電点を持ち上げないといけません。DX通信の盛んな14MHz帯だと10m以上。この高さは軽量の釣竿などを用いたマストにはほぼ限界です。ただし、この高さまでIVDPの給電点を持ち上げることができればアンテナシミュレーター(私はMMANA-GALを使用)による計算結果でゲインが7dBi以上になります。

問題は、14MHz帯を考えたとき、1/2λ=10mは山の中でかなり高いということ、そしてIVDPは高さだけでなく横方向にも長いエレメントを伸ばす必要があるということです。木々が生い茂る山頂では高さもさることながら横の張り出しはかなり大きな問題です。垂直系1/2λアンテナは高さ方向の問題は残りますが、横の張り出しはないので問題が一つシンプルになります。ただゲイン不足は深刻です。

両者を満足する策は無いのか?山岳移動で大切な要素は、(1)軽いこと、収納も展開もコンパクトなこと、(2)設営が簡単、(3)アンテナゲインがある、そして打ち上げないこと、でしょうか。

3. SOTA用アンテナを考える
まず、形状を小さく、設営を簡単にする方法は垂直系であると考えました。そして14MHz帯の1/2λ=10mを高さの限界としてそれを低くする手段を考えました。1/4λにすれば5mで済むのでこれは満足します。しかしゲインは大幅にロスします。これを補うためにアンテナを複数本立てて八木の原理を適用することにしました。そうしてできたのが、GB-QEC(14MHz用)というアンテナです。この発想は新しいものではありませんが、SOTA用に最適化した構成は新しいものでした。

実際に使ってみたのは河川敷でのテスト運用でした。河川敷のゲートボール場横の木にエレメントを引っ掛けてSWR特性を測定するととてもきれいな周波数特性を描き、共振点でSWR=1.2ほどとなりました。無線機をつないで聞いてみると多くの海外局が聞こえてきました。ロシア局が強かったので5Wでコールするとすぐに取ってもらえました。その後は何度も山に持ち運びDXを楽しみました。そんなことをTwitterで呟いていたら、カナダの方から声がかかり、このアンテナをQRP Quarterly(※1)というアメリカの機関紙で紹介してみないか?というお話を受けました。二つ返事で原稿を書きチェック・加筆修正してもらって2017年の1月号に掲載されました。

4. おわりに
SOTAを通じてアンテナとその設置方法を考えるようになり、新しいアンテナも作ることができました。また、活動報告をビデオにしてYouTube(※2)に上げたりもしました。ビデオはテロップを英語にすることで海外の方々に見てもらえるようになりました。そしてこうした活動を通じて多くの海外の友人もできました。SOTAは色々な楽しみを私に提供してくれました。これからも自分自身、楽しみながら進化していきたいと思います。

(※1) QRP Quarterly :Vol.58(1) Jan 2017,p,20-22
(※2) https://www.youtube.com/user/abumoto1/videos

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