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Summits On The Air (SOTA)の楽しみ

その17 山と無線との出会い(JA3NAPさんの楽しみ方)

JH0CJH・JA1CTV 川内徹

皆様、こんにちは、3月になりだんだんと暖かくなり、日によってはポカポカ陽気で春らしくなってきました。今回は関西地区でSOTAを楽しんでおられる、JA3NAP 荒木さんを紹介したいと思います。荒木さんは、山も無線もとても長い経歴をお持ちです。特に山に関しては、山岳連盟指導員の資格もお持ちです。またJA3のオリジナルコールサインからわかるように、アマチュア無線も中学生のころに開局された大ベテランです。オリジナルのJA3コールと聞くとだいぶご高齢の方かと思われるでしょうが、まったく逆で外見も気持ちもとてもお若く、最初のアイボールの時に再割り当てのコールサインではないと聞いた私は相当驚いた記憶があります。体を動かすことが若さを保つ秘訣なのかもしれません。さて、荒木さんには、どのようにSOTAに出会い、SOTAを楽しむようになっていったのかを教えていただきましょう。

「山と無線との出会い」

JA3NAP 荒木 貴博

私がアマチュア無線を始めたのは中学3年生のころ、AM全盛時代でした。その中でもCWが面白くて、21MHz/CWメインでアマチュア無線を楽しんでいました。一方、山との出会いは大学時代、友人と尾瀬の「燧ケ岳」に登ったのが本格的な登山の始まりでした。その後就職し、仕事の関係で山岳連盟指導員の資格を取り、あちこちの山に連盟の方たちと一緒に出かけました。その中には、韓国遠征などで韓国の山仲間たちとの交流もありました。

その後公私ともに忙しくなり、「アマチュア無線」も「山」も自分の生活から消えていましたが、40歳前後の時「コール復活が出来る」ということで、取り敢えず自分のコールサインだけは確保しようと再免許の申請をしました。その後、アマチュア無線を再開しDXや移動運用を続けていましたが、なんとなくアマチュア無線の楽しみ方がマンネリ化し、アクティビティも低下してしまい、山もいまだに私の生活圏からは消えたままでした。

SOTAアクティベータ局との出会い

なんかもっと充足感のある無線の楽しみってないのかな?とデジタルモードもやりましたが、自分には合っていないなあと感じていました。ある日J-CLUSTERを見ていると、コメント欄に「SOTA:JA/HG-090 千丈寺山」というのが目について、「ああ、山からオンエアか?」と思いコールしたら、1回でコールバックがありQSO出来ました。JP3DGT/3 関西でのSOTAの先駆者でした。2017年1月7日のことです。「山に無線機を担いでHFに出られるんだ」と、その時少々の驚きを覚えたものです。

遠い昔、東京の大学に在学中、丹沢の山にFDAM-3というAMのトランシーバー(乾電池式)と50MHzのHB9CVを担いでよく登っていました。その時も、山ではHFは無理だという先入観があり(小型軽量のリグが無かった?ピコはあったのかな?)せいぜい50MHzまででした。

SOTAのアクティベータ局と初めて交信したことによって、「山の上からHF?どんな感じなのだろう?」、という未知への好奇心がふつふつと沸き上がって来ました。その時にはFT-817というFBな小型のリグがシャックに置いてありました(ラジオとして)。

SOTAアクティベータとして初運用

その後SOTAのHPを見つけてルールを読み、SOTAに登録して初めてのSOTA運用を、近畿では有名どころの金剛山(1125m)にFT-817と電池式のATUそして適当なワイヤを持って出掛けました。2017年1月下旬のことです。

山頂の三角点は神社境内の中なので神社の横、雪の上にリグを出し、ロングワイヤで7MHz/CWでオンエアしました。2.5W+LWで飛ぶかな?と不安はあったのですがSOTAチェイサーOMのJA1VVHさんからすぐにコールがありました。


金剛山での初SOTA FT-817(2.5W)+wire

驚きました。2.5W+LWで、当時はSOTA watch2の使い方もわからず、突然7MHzの下のほうでショボイ電波を出したのに、599のレポートを頂きました。その日は6 QSOでしたが、すごく充実した気分で下山することが出来ました。

以前の移動運用では、一度の移動で100 QSO以上でないとストレスがたまっておりましたが、今回のSOTA運用では6 QSOにも拘わらず、大きな感激と小さな興奮を覚えました。まるで、アマチュア無線を始めた頃の心の高ぶりの再現でした。

それからは、近くの低い山を中心にSOTA移動運用をし、コンディションが悪くてQSO(SOTAアクティベートには4 QSOが必要)出来ない日もありましたが、それはそれで道に迷いながら、そして藪漕ぎしながら、地図(スマホの地図)とにらめっこしながら、今まで登ったことのない山のピークを極めた(エベレストではないのですから、そんな大げさなものではないのですが、それなりに)喜びがありました。SOTA対象の山は近くにもたくさんありました。

どんどんSOTAにのめりこみましたが、より一段と深みにはまったのがKX2という軽量コンパクトなトランシーバーを手にしたことです。目が悪いためFT-817のDisplayは良く見えなかったのですが、KX2のDisplayは高齢者の老眼にも優しく、チューナーは内蔵、メモリーやパドルも一体。それで電池なしで400g前後。驚くべき軽さと高性能を備えたトランシーバーで、さらにSOTAにのめりこむ大きな要因になりました。


初めてのKX2 SI-025 大比叡にて

山の上からHFのCWに出るなんて昔は想像もしていなかった夢の世界を実現し、今は「次はどこの山に登ろうか?」と毎日が楽しく、SOTA運用を堪能しております。HFはコンディションに左右されますが、QSO出来なくても山に登ったという達成感が心には残ります。また、微弱な電波をみつけようと一生懸命探してくださるチェイサーの方たちとの繋がりなど、楽しいことだらけです。

アマチュア無線の楽しみ方は色々とありますが、SOTAは私にとってSimple is Best、そして「自然の中で無線をしたい」という、昔から抱いていた夢を体現できるプログラムです。また、WEB上で自分の成績も順位もすぐにわかりますので、次のSOTA運用へのモチベーションも自然と高くなります。競争ではないのですが、大変よく考えられたシステムだなと思います。4 QSO出来なくても「また登る機会ができた」と下山はルンルン気分です。(遠方の場合はちょっとショック)

最近はお手軽に433 MHz/FMでオンエアすることも多いのですが、WEB上やCWでしか知らなかったコールサインの方とFMで交信すると、CWとはまた違った親近感が湧いてきます。


最近のSOTA移動 高岳 OS-015 での運用です。

SOTAと自然

SOTAをやっていると当然ですが、自然との調和ということも考えます。荒れた山を見ると、「なんでこの山はこんなに荒れてるの?」と疑問を持ち、人間がやってきた事を考えさせられることが沢山あります。SOTAは気持ちの良い山(自然)があってこそ。そして、いつも熱心にワッチして呼んでいただけるチェイサー局があってこそのSOTAです(感謝)。

「自然と無線。」こんなに楽しくて感激の多いSOTAは、若い人にとっても魅力があるものと思います。どんどんSOTA運用局が増えていってほしいと思う今日この頃です。
まだSOTAを始めていない人や、少しマンネリ化してきたな?と思われたアマチュア無線家は、ハンディー機をもって近くの山に出掛けてみましょう。「百聞は一見に如かず」です。文章では伝えきれない新たな感激を覚えることと思います。

いかがでしたでしょうか?荒木さんのSOTAに関心を持たれた経緯や、山の上でHFを運用した時の感動が目に見えるようでした。「自然の中での無線」は荒木さんが言われるように素晴らしい体験だと思います。暖かな春になり、初めての方でも山登りが楽しめる時期になってきました。ぜひ皆さんもSOTAを始めてみませんか?

SOTA日本支部では常時メーリングリストの申し込みを受け付けております。私宛、コールサイン@jarl.comでも結構ですし、SOTA日本支部のホームページの問合せのページから連絡を頂いても結構です。

JH0CJH 川内 徹

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