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楽しいエレクトロニクス工作

第73回 多用途タイマー

JA3FMP 櫻井紀佳

アマチュア無線で時刻アラームやタイマーを使う機会も色々あると思います。今回はインターネットで組立キットのタイマーを見つけたので、これを使った応用を考えてみます。

購入したのは秋月電子のスクロールクロックキットで、送られてきた箱にはプリント基板と全部品が入っていました。部品も多くなく説明書通りにハンダ付けすれば出来上がります。


スクロールクロック基板と警報ブザー

機能的には10 x 10のドットのLEDに電光掲示板式に表示が流れ、時刻アラーム、タイマーアラームが設定でき、設定した時間になると警報ブザーが鳴ります。本当は設定した時間にスイッチのON-OFFの端子が欲しかったのですがそのようになってないので警報ブザーの出力をON-OFFの信号に使うことにしました。

まずブザー出力の波形は次のようになっていました。


バースト波形 (左) と信号波形 (右)

信号は1秒間に2度約300Hzの信号がバースト状に出ます。この出力を使って目覚まし時計を作ってみます。ただ単にブザーで音を鳴らしても良いのですが、これでは電気屋としてあまり能がないように思われるので電気ショック式の目覚ましを考えてみました。

その回路は次のようなもので単純にブザーの信号をFETでドライブし、トランスで昇圧するものです。


昇圧回路とユニット

トランスは随分古いダイナミックマイク用と思われるジャンクで400Vp-p位まで昇圧します。トランスの低周波特性が十分でなく微分された波形になってしまいました。


トランスの出力波形

そのままの電圧の電気ショックでは安全性が心配なので必ず直列に電流制限抵抗R2をつけます。色々な資料によると0.5mA以上が体に感じるようで、安全のために1mAを大きく超えないように制限抵抗は400V/1mAで390kΩ位にしたいと思います。人体の抵抗は数kΩ以下のようなので電流はほぼこの制限抵抗で決まります。

目覚ましのためにはどの程度の電流が適当なのかよく分かりませんが、多分起きている時より少ない電流で十分ではないかと思います。
マジックテープを使って対向した2ケ所に銅テープを貼り付けた電極で腕輪を作り、手首に電流を流して目覚めさせることにしました。

昔、真空管の時代に送信機の750Vで感電した経験があり、その後もアマチュア無線の機器の製作中に月に一度位は感電していましたが、基本的には感電は苦手なため今回の実験では目覚ましの時間前に気になって目が覚めて実験になりませんでした。人体に電流を感じる程度は人により条件によって異なるようなので、もし同様なものを製作された際にはこの点を特にご注意願います。

次に時刻アラーム、タイマーアラームを使い、設定した時間になればAC電源がONまたはOFFになる回路を考えます。ブザー信号の出力を使ってドライバーのFETをON‐OFFさせてリレーを切替えます。少し大きめな電力の機器でも切替できるようにリレーの接点容量は5Aのものを選びました。
この回路は簡単なもので次のようになりました。

制御に使うスクロールクロックのブザーの信号は、1秒間に2度の周波数約300Hzのバースト信号なのでそのまま検出したのではリレーがバタつきます。バーストのインターバルの間に制御が切れないよう、また信号が切れると制御がすぐ終わるようなタイミングにします。

このためCMOSのモノステーブルマルチバイブレーター 74HC123Aを使うことにしました。このICは巻末の資料のように、信号が入力されるとC3とR4で決まる一定時間出力QをHレベルに保ちます。そのON時間内に入力があると再トリガーされ、続けて信号があれば信号が終わるまでONを保ち続けることになります。

入力のバースト信号の間隔が1秒なのでマルチバイブレーターの時間はそれより少し長くして、C3を2.2μF、R4を470kΩとすると1.03秒となり、この条件に合うと思います。従ってICの出力QをリレーのドライバーFET Q1のゲートに接続してリレーを動かします。D2は電源切断時にC3の放電でICの内部を流れる電流の保護用に、D3はリレー切断時の逆電圧からQ1を保護するために働きます。


リレー切替ユニットとリレードライバー基板

スイッチするリレーからの出力は、時間になるとONになる接点と、OFFになる接点とをスイッチで切り替えて必要な動作を選ぶことができます。電源は1次側100V、2次側12.5Vの小型トランスの2次側の電圧を整流してリレー用の電源として、またこの後の5Vの3端子レギュレーターを通してCMOS ICの電源に使います。このユニットを使って、時間になれば部屋の電気をつけたり、アマチュア無線でのスケジュールタイムやロールコール等の時間になると無線機をONにする等に利用すると便利です。

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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