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Summits On The Air (SOTA)の楽しみ

その40 山岳移動運用電源について2

JH0CJH・JA1CTV 川内徹

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皆さま、いかがお過ごしでしょうか? 正月明けに再開した都市圏を中心としたコロナウィルス対策の非常事態宣言ですが、更なる期間延長ということですが、この時にしっかりと感染を抑える必要があるものと思います。移動運用が自由にできないのは残念ですが、もう少し我慢が必要な時かもしれません。こんな時は山岳移動で使用する周辺設備などの整備をしたり、作成したりするのも楽しみの一つかもしれません。

さて、前回は山岳移動用として使っている最新型のPD電源を紹介しました。山岳移動に限らず、電源とアンテナは皆さんの関心があることのようで、いろいろと機種や使用法、購入先についてご質問をいただきました。まさに話題沸騰中の電源という感じです。今回は、もうひとつの小型軽量の電源を少し紹介してみたいと思います。

以前から山岳移動運用を行うアマチュア無線家の中でよく使われていたのが「18650」と呼ばれる単三乾電池をすこし大きくしたようなものです。これはリチウムイオン電池で製品によっても変わりますが、大体1本で3.7Vの電圧、3000~3500mAh程度の容量です。この電池が素晴らしいのは内部抵抗が低く、ここ一番での電流が出る点です。この過渡特性は無線機の送受信時での使用電流量の大きな変動には重要な要素と思います。


これは逆にショートさせたときに大電流が流れ危険も伴いますので、くれぐれも取扱いには注意が必要です。また、この電池は充電した直後の電圧は一本で4.2Vくらいありますので4本直列だと16.8Vとなり結構高い電圧になってしまいます。


例えばIC-705の場合、外部入力電源の電圧許容範囲はDC 13.8V±15%ですので上限は15.87Vとなりますので、充電直後の16.8Vだとだいぶオーバーしてしまいます。このために私はダイオードを順方向に入れることで電圧を落としています。

ダイオードはご存知の通り、片側方向にしか電流を流さない半導体で、逆方向は絶縁、順方向は短絡となります。このダイオードの順方向の電流ですが、電圧が何ボルトであっても順方向電圧であれば電流が流れるというわけではありません。ダイオードの特性によって異なりますが、約+1V程度のダイオード素子に対する励起電位差がないと流れません。つまり順方向を流れる電流の量を問わず(実際は電流量で多少の変動はあるようですが無視できるレベルです)、この励起電圧分だけ下げてくれるわけです。ここでのミソは電流量によらず一定の電圧を下げられるという所です。これがダイオードの素晴らしところで、ダイオード内の素子が励起され、いったん流れると抵抗はほぼゼロになりますのでオームの法則(E=IR)により、励起電圧以外の電圧降下が限りなくゼロに近くなり、確実にそのダイオードの励起電圧だけを下げてくれることになります。一方、抵抗などで電圧を下げる場合、電流が流れる量でその抵抗で分圧される電圧変動が大きく、リグ側で送信時、受信時、また送信電力や運用モードで絶えず電流量が変わりますので抵抗での電圧降下がこれと同時に大きく変動してしまうため使い物になりません。

今回使用したダイオードは10A-10という1000V、10Aのタイプ。このダイオードの順方向電圧は0.6Vです。このため、このダイオードを2個くらい使えば1.2V程度電圧が落ちることになります。

しかし、実際に無線運用しているうちにリチウムイオン電池が放電し、次第に電圧が下がってきますので、この下がった電圧をさらにダイオードで下げるのはもったいない。そのためスイッチでダイオードをバイパスするようなものを作ってみました。スイッチを2個付けて、それぞれのダイオードを個別にバイパスするように作ればさらにリチウムイオン電池の電圧を効果的にコントロールできます。

回路図はこんな感じです。


さらに下の写真のような電圧モニター用の電圧計とUSB電源が取れるコンバーターを入れてみました。


DC 6.5-40V To 5V 2A USBチャージDC-DC降圧型変換器内蔵電圧計(出典Amazon)

当初はUSB電源として使うつもりでしたが、ここから取り出せるUSB電力はノイズがひどく、現在は無線運用時にはUSB電源としては使っておらず、電圧計としてだけ使っています。電圧計として使用するだけならノイズは出ません。

この電圧計でリチウム電池の電圧をモニターしながら電圧が下がってきたらスイッチでダイオードをひとつずつバイパスするというわけです。

完成したあと、充電直後のリチウムイオン電池18650を入れてみると、ダイオードを2個のスイッチでバイパスした無負荷時電圧は16.5V。これが充電直後のリチウムイオン電池4本直列の電圧です。


スイッチ切り替えで1個だけダイオードを通した時の無負荷時電圧は15.9Vとなりました。


さらに2個のダイオードを通した時の無負荷時電圧は15.3Vになりました。きちんとダイオードの順方向の励起電圧である0.6Vずつ下がっています。


このダイオード2個で電圧を落とした無負荷状態での電圧は15.3Vですが、IC-705を受信状態で接続した時は電圧降下があり14.7Vとなりました。


この状態で送信すると送信出力5W、10Wあまり関係なく電圧は13.0V程度になりました。こんな感じで負荷状態(FM、FT8やSSBなどの運用モード)に合わせて電圧を少しずつ微調整できるのもこのダイオードバイパス方式の良い点かと思います。

この18650は一般市場でも安価に入手できるので電池を替えることができますので長期、短期両面で可用性の高いバッテリーだと思います。

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