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楽しいエレクトロニクス工作

第70回 警報付電圧計

JA3FMP 櫻井紀佳

アマチュア無線の移動運用などで12Vの鉛バッテリーを使うことがよくあると思います。交信に夢中になるあまりバッテリーの電圧低下に気が付かず過放電になったり、無線機が交信途中で動作停止になることもあるのではないでしょうか。

今回はバッテリーの電圧を監視して規定値以下になると警報を出すものを考えてみました。車載のカーバッテリーを使った場合、運用に夢中になってバッテリーを使いすぎ、最悪エンジンがかからなくなってしまう事の防止にもつながると思います。


完成したユニット

構成は次のような簡単なものです。

バッテリーから無線機に電源を供給しますが、無線機によっては定格入力電圧の13.8Vより電圧が低いと大幅に出力が下がるものがあるので、バッテリーの12Vから13.8Vにアップするコンバーターの使用が無難です。

電圧計&警報回路は、バッテリーの電極に繋がれ、この電圧をデジタル電圧計で表示します。バッテリーの電圧が下がるとその電圧を表示し、予め設定した電圧以下になると警報音を出して知らせます。

この回路は次のようになりました。


本装置の電源入力に接続された電圧計はその電圧を表示しますが、この電圧計は3桁のデジタル表示で、部品屋さんで多量に販売されていたもので、バッテリーの下限電圧設定表示にも切り換えて使います。この電圧計は本体からグランド、電源、入力の3本のリード線が出ており電源の電圧範囲も広く、接続するだけで便利に使えます。


共立エレショップの広告より

電源に接続されたレギュレーターICは8Vを出力しICの電源とREFとして基準電圧に使います。

鉛バッテリーの放電終止電圧はバッテリーと負荷により多少異なりますが10.5V位ですので、バッテリー電圧がこの電圧より下がった時に警報を出すように設定します。警報動作は、まず切替スイッチS1を「SET」側に切替えて、R1のVRで設定した限界電圧を電圧計で読み取ります。

次にR2のVRを回してDS2のLEDが消灯から点灯に切り替わる点に設定します。これで切替えスイッチを「NORMAL」側に切り替えると待機状態になり電圧計はバッテリー電圧を表示します。

下限電圧の検出動作は、通常時IC4のコンパレーターの非反転+入力が設定側の反転-入力より電圧が高く、コンパレーター出力はプルアップ抵抗により電源電圧に近づきます。電源電圧が設定された設定電圧より下がるとコンパレーターの出力は反転して下がり0Vに近づきます。

この時DS2のLEDが点灯して警報回路が働きます。警報回路はロジック回路によるIC1A、Bを使った発振回路でf = 1/2.2CRにより450Hz位で発振し、この信号をもう一つの発振回路IC1F、Eで1秒に2回位断続して警報音を出します。C2とC6のコンデンサーは無極性が必要でバイポーラ―コンデンサーがあれば一つで済みますが、持ち合わせがなかったため極性のあるケミコン二つを逆接続しています。

コンパレーターとロジックICは8Vの電源で働かせたため4000シリーズのCMOSロジックICを使いました。


出力波形(左)と拡大図(右)

IC4のLM393コンバレータ―はオープンコレクター出力で、IC2Aの入力はLEDが付いたプルアップとなるためH電圧が不十分となります。そのため完全にHになるようR15を追加しました。

警報音の出力回路はスピーカーをパワーFET Q1のBS170で無理やりドライブしています。スピーカーは小型のもので警報音が歪んでも構わないつもりです。最初はスピーカーをケース内に入れるつもりでしたが寸法的に内部に取り込めないためリード線を引きだして外に付けることになりました。もし電子ブザーを使うのであれば発振部を含めたロジック回路およびスピーカーとそのドライバーを取り去ることも可能です。

定電圧電源はIC3でコンパレーターIC LM393の動作範囲を広く取るため8Vの3端子電源ICにしています。組立は電源コネクターが当たる部分を切り欠いた72mm x 42mmの穴明き基板に電圧計とスピーカーを除いた部品を取り付けます。

外観のケースは部品屋さんで買ってきた80mm x 50mm x 20mmのプラスチックケースにしました。ケースの厚みと電圧計の高さがぎりぎりですがケースの側面を切り欠いて電圧計を取り付けました。

電圧計を取付けた反対側の後面には電源コネクターを取付け、スピーカーのリード線もこの面から引き出しています。

回路もシンプルで配線を間違わなければ素直に働くと思いますが、警報音の出力回路が少し強引でR14の抵抗値を変えて音量を調整します。警報の間隔が少し長めに感じた場合は、C2、C6かR11を少し小さくして間隔を詰める方法があります。

私自身は鉛バッテリーを持って移動運用する機会がまだないのですがきっと役立つものと思います。

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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