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熊野古道みちくさ記

第55回 海岸線が美しい参詣道大辺路

熱田親憙

昨年10月、串本町にある熊野参詣道大辺路の「新田平見道」「富山平見道」「飛渡谷道」「清水峠」が世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に追加登録された。今回は本州最南端の串本駅からすさみ町に近い和深駅周辺までの3か所を訪ねることにした。

一般的に大辺路とは闘鶏神社(田辺市)から浜の宮王子(那智勝浦町)までの約90キロを指す。「平見道」という見慣れない言葉が気になり、まず、和深駅手前の新田平見道へ。海岸に面した段丘の平坦地を平見と言い、これに通じる生活道を平見道という。これが参詣者たちの通ってきた道で、すさみ町から那智勝浦町にかけての参詣道は海岸沿いと平見との坂を登ったり下ったりして続いている。新田平見から左立谷に降りて旧県道に出るまでの道は、上野一夫さんをリーダーとする「大辺路刈り開き隊」が2004年からルート探査、埋もれた石畳道の整備、不法投棄されたゴミ処理などを続け227メートルの追加登録が可能になった記念すべき道なのだ。

田子駅に近い赤瀬平見に立つと、潮岬と双島を望む見事な眺望が開けた。さらに小高い場所には田子旗山があり、江戸時代、黒船の来襲を知らせる狼煙(のろし)場があった。また、和歌山城に緊急の助けを求めるため、3本の狼煙を上げる狼煙台もあったそうだ。本州最南端にある黒潮海運の要所らしい装置である。

さらに国道42号沿いを東へ進むと、田子地区の坂本造船所の裏に着く。そばにある谷川の隧道(ずいどう)を潜ると敷き詰められた石畳の階段が平見へと続いている。この石段は串本古座高校の生徒らの修復作業時に、埋もれていたのが発見された富山平見道だ。きっちり固められた石によって、雨水による土砂の流出や雑草の繁茂が防止され、コケむした石畳が古道をがっちりと形成していた。石段は約50段あり、中ほどに石サンゴの一種のキクメイシが組み込まれていた。この地の海岸はサンゴの名産地であることがうかがえた。サンゴを焼いてしっくいを製造する地場産業も栄えていたという。

最後に田並地区から有田地区の旧国道沿いの飛渡谷を通る387メートルの追加登録区間を歩いた後、念仏島の送りの葬儀跡を拝見した。青竹にわらじと笠とツト(おにぎり)をくくり、岩の裂け目に差し込んで、死者を海の彼方の浄土に旅立させる祈りである。浜辺がこの世と浄土の境であり、夜中に浜に立って潮を汲み、死者との所縁に潮をかける風習を続けている地域もある。海そのものを神仏の住む浄土とする信仰は、中辺路に建つ王子社の山岳信仰とは対照的だ。また、大辺路は平見道坂と海岸の磯道が続き開放的なので、熊野三山参詣の帰路は多少大回りでも「安らぎコース」として大辺路をもっと活用すればと、参詣者にアドバイスしたい気持ちに駆られた。

帰路、串本駅近くの「松すし」に立ち寄りおいしいマグロを食した。「自然に近い、身の絞まった養殖ものが欲しいですね」という店主の言葉が印象的だった。

2017年記


スケッチ;富山平見道と海岸風景(串本町田子)

 

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