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熊野古道みちくさ記

第50回 風車のある風景

熱田親憙

熊野古道の探索で和歌山をJRや車で往復する度、山の尾根伝いに大きな風力発電の風車がゆっくり回っている風景を目にするようになった。

私が風力発電に関心を持ったのは、2005年2月に地球環境問題をテーマにした国際会議COP3で温室効果ガス排出削減目標を定めた「京都議定書」が発効されたのがきっかけだった。11年の東日本大震災で原発の安全性に疑問を持たざるを得なくなり、そう遠くない将来に地下資源は枯渇するであろうという現実を併せて考えると、再生可能エネルギー、中でも風力の利用は必須だろう。

初めて風力発電と遭遇したのは5年ほど前、淡路島南端にあるホテルニューアワジプラザ淡路島を訪ねた時だった。ホテル手前の小高い丘で大きな風車が1基ゆっくりと回っていた。地の利を生かした発電とビューポイントづくりのため設置したとのことだが「今では温室効果ガス削減につながり、ホテルの経営安定にも貢献しているのでホッとしている」と話した社長の笑顔が忘れられない。

その東の対岸に位置する和歌山では、3年ほど前、有田川町の鷲ヶ峰に登り、そこから尾根伝いに並ぶ風車の列を見て、未来のエネルギー源となる可能性を強く感じた。

県の風力発電を担当する産業技術政策課を訪ねて、その分布を俯瞰(ふかん)してもらった。現在稼動しているのは、和歌山市1、有田市1、広川町37、有田川町10、日高町1、由良町5、日高川町10の計65基。総出力は約9.5万キロワットとなっている。

自然生態系を利用することに長けている和歌山県人だが、ほとんどは自家用ではなく、売電用事業とのこと。意外だった。印南町に13基(建設中)広川町に26基(計画中)が増設予定で、広川、有田川、由良、日高川の各町と周辺は「風力銀座」になりつつある。

この一帯は風速9~10メートルの風が年間を通して安定して吹き、交通の便がよく、送電系統にも恵まれいる。だが計画は、原生林や希少生物、人家への騒音などの影響や景観法に抵触しないかなども入念にチェックしつつ進めるという。特に世界文化遺産の熊野古道や国立公園が近くにある場合は、景観法に触れるかどうか、事前申請が求められる。産業技術政策課も事業者の事前計画の段階で、さまざまなコンサルテイングで支援しているという。

風力銀座の風車の列には、頼もしさと新しい景観を感じる。白い人工的な風車と自然の緑が醸し出すハーモニーが、静と動の近未来的空間を作り出しているように思える。我ながらやや情緒的ではあるが、福島の原発事故以来、核アレルギーになってしまったからだろう。

ともかく県内の風力発電は広がっている。風車のゆったりと人を包む抱擁力は、紀州人の気性に似合っている。白浜温泉は地熱エネルギー開発の可能性を秘めている。和歌山が再生エネルギーの宝庫となって欲しいと心から願いつつ県庁を後にした。


スケッチ;(左から)内原王子神社(日高町)付近と広八幡神社(広川町)前から望む風車の風景

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