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今月のハム

7L1FFN 磯直行さん

JARL愛知県支部長を務める中京大学工学部教授の7L1FFN磯直行さん。先の4月に行われた文部科学大臣表彰で、科学技術賞(理解増進部門)を受賞したばかりということもあり、各メディアからの問い合わせへの対応や原稿の執筆に追われている最中で取材に応じていただいた。

磯さんは子供の頃からもの作りが好きで、横浜市に住んでいた小学2、3年生の頃にはハンダごてを片手に電子工作キットなどを作って楽しんでいた。その頃の将来の夢は、町の電気屋さんになることだったという。愛読書は「初歩のラジオ」で、毎号掲載されていた電子工作の製作記事が楽しみだった。「今では考えられませんが、父親に買ってもらった60Wのハンダごて1本ですべてのハンダづけを行っていました。そのこては高校を卒業するまで使っていましたよ」、と話す。

横浜で手に入らない部品は秋葉原まで部品を買いに出かけていたという。特殊なものは秋葉原でしか入手できなかったからだ。「初歩のラジオ」にはアマチュア無線に関する記事もよく掲載されていたが、「その頃はアマチュア無線には全く興味がわきませんでした」、と話す。

小学校を卒業すると、磯さんは中高一貫校に進学した。この中高6年間、磯さんはマーチングバンド部で活躍した。このクラブは全国大会で優勝するなどの強豪で、そのため練習時間が長く、毎週末はパレードに招待されるなど、電子工作を楽しんでいる余裕はほとんど無かった。磯さんの担当はスーザホンで、「アメリカへの遠征旅行にも連れて行ってもらいましたよ」、と話す。

卒業後は山梨大学工学部電子工学科に進学した。この学科を選んだ理由は、子供の頃からの夢だった電気屋さんになる目的で、電気製品の設計、製作、修理などを学びたいからだったと話すが、入学後すぐに、大学ではそのようなことを教えてくれないことが解り、以後、回路設計や修理技術などは独力で勉強した。まだアマチュア無線には興味が無かったものの、微弱電波のトランスミッターを作ってミニFM局を開局するなどして楽しんでいた。自作のトランスミッターはPLL方式で周波数表示・設定回路には学校で習ったデジタル回路の知識を応用した。「ここではじめて学校で習ったことと自分のやりたいことがつながりました」、と話す。

大学4年生の時に同じ研究室にいたすでにアマチュア無線を運用中の友人から勧められた事がきっかけで、大学院に進んだ1年目の1990年8月、夏休み期間中に4アマの国試を受験し、同年9月に当時下宿していた山梨県甲府市で7L1FFNを開局した。

磯さんは430/1200MHzの2バンドハンディ機で開局したことから、開局第一声を発したのは1200MHzだった。ただ1200MHzが賑わっていた1990年当時でさえ、関東平野とは山で遮られる甲府盆地では、QSO相手が少なかった。そのため日頃の運用は430MHzでもっぱら行ったというが、好きなバンドはやはりトランスバータやアンテナなどの自作が行われていた1200MHzだった。144/430/1200MHzの3バンドモービル機を入手すると、車で山に移動して1200MHzの運用を楽しんだ。一度富士山頂に無線機を持って登ったところ、1200MHzにこんなに局がいるのかと思ったが、逆に430MHzではロケが良すぎて空き周波数が全くなく、近くに局がいすぎで遠方とはQSOできないことが分かった。

アマチュア無線の免許取得後は50MHzのFMトランシーバーなどを作った。しかし、同時に自分で高性能な無線機を作るのは無理だと判断したという。アマチュア無線を運用すると楽しくなり、もっと遠くと通信したくなる。そのためにはハイパワー機が欲しくなり、磯さんは大学院2年の時に3アマと2アマを相次いで取得した。さらに名古屋大学大学院の博士課程に進んだ後に1アマを取得してJS2LGPを開局。「私は基本V/UHFしか運用しないので、1アマは実質不要なのですが、資格だけは取得しておきました。当時の1アマ試験は電気通信術の実技試験もありましたので、モールス符号を覚えましたが、免許取得後に電信はほとんど運用していませんね」、と話す。その頃から移動運用でコンテストにも積極的に出るようになり1200MHzを主体で運用した。コンテストの副産物としてJARL発行のアワード1200MHz500局賞も受賞した。

博士課程を終えた後は、大学に助手として残ったが、その頃はアマチュア無線人口が減少していく時期に入っており、マイクロ波に出る局が少なくなっていったこともあり、磯さんは時々JARL愛知県支部の活動にも参加するようになった。そうこうするうちに支部の運営委員になり、JARL東海地方本部の幹事としての活動も本格的に行うようになった。


学生と一緒になって学校の屋上に建てたJA2RL/JA2YRLの常設アンテナ

2000年10月、磯さんはJARL東海地方本部のコンテスト委員長に就任した。その頃、東海地方本部が主催するコンテストは、3月の東海QSOコンテストと、11月の東海マラソンコンテスト2つだけだったが、2006年からは9月に愛・地球博コンテスト、さらに2012年からは11月にD-STARコンテストをスタートさせ、現在4つのコンテストを主催している。

昨年の東海QSOコンテストからは、東海4県内入賞者には、賞状を各県の支部大会に取りに来るようにお願いしたところ、支部大会への出席者が増え参加率があがるという結果となり、経費削減も同時に達成できて、「より良い傾向が現れました」、と話す。なお、支部大会に出席できない入賞者には、返信料の切手のみ送れば引き続き賞状の発送を行っている。

2002年5月には、2エリアD-STAR協議会(D-STAR2)の委員長に就任した。その頃、JARL東海地方本部内のスタッフでデジタル通信について一番詳しいのが磯さんだったから、というのが理由だが、結果的に本業の技術を趣味の分野で生かせるカタチになった。まもなく磯さんはD-STARの情報提供ホームページを立ち上げてサポートを開始した。このホームページでは、D-STARの運用や、機器の設定に関する各種情報をはじめ、最新のレピータ情報も提供しており、これは現在も更新している。同時に磯さんはD-STAR初心者向けメーリングリストを開設し、ベテラン各局と一緒になって初心者のフォローを行っている。

D-STARが始まった当初はQSO相手に困ることが多く、そのため、せっかくD-STAR機を購入しても、テストをする機会が少なかった。そのため2005年、磯さんはD-STARでのQSOの機会を提供するため全国規模のD-STARロールコールを始めた。毎週土曜日の19時からスタートし、インターネットにつながっている全国全てのレピータから声を出している。参加者は毎回50~80局程度で、少ないときでも50局を下回ることは無い。磯さんはこのロールコールをもう13年間も続けている。「参加局が100局に達したら、目的は達したと判断してロールコールを止めます」、と宣言しているが、未だにこれが達成できないでいる。

当初はゆっくり全国を回って2時間足らずで2巡もできたが、今はレピータが約230局もある。そのため今では全国をくまなく回るのに4時間以上かかることもしばしばで、土曜日の19時にスタートし、回り終わったら日付が変わって日曜日になっていたということも増えた。かつては、コンテストで自分が移動した日も、移動先の山の上からロールコールを実施していたが、今はレピータの数が増えて、ダブルアクセスしてしまうことが多くなったため、山の上に移動した日は休みにしている。

同じ2005年に愛知県で開催された愛・地球博(2005年日本国際博覧会)では、遊びと参加ゾーン「わんぱく宝島」内に開設されたアマチュア無線特別記念局の総合プロデューサーとして、約半年間にわたり、愛・地球博でのアマチュア無線のピーアールと特別記念局の運用に尽力したが、この特別記念局8J2AIではゲストにもD-STARの運用を体験できるようにした初めてのケースだった。また、2007年からは日本D-STARユーザー会を立ち上げ、毎年ハムフェアに出展し、初心者向けにD-STARの運用等のアドバイスを続けている。

磯さんはその後、JARLの青少年育成委員会委員、不法局対策委員会委員、JARL東海地方本部のARISSスクールコンタクト推進協議会委員長などを歴任した後、2011年10月、JG2GFX種村さんの後任としてJARL愛知県支部長に就任した。「運営委員の皆さんがよく動いてくれるので、本当に助かっています。何かイベントがあれば、スタッフがどんどん手を上げてくれます」と話す。ただし悩みどころもあり、「一番動いてくれる40~50代の支部運営委員が、職場での出向とか、一時的な転勤などで名古屋を離れてしまうケースが多く、これが痛いですね」、と話す。

本年(2018年)4月17日、磯さんは平成30年度の文部科学大臣表彰で科学技術賞(理解増進部門)を受賞した。これは、ARISSスクールコンタクトでの実績と、親子を対象とした電子工作教室の実施実績が認められ、JE2SOY成瀬さん、JA2HDE木村さんと連名で、磯さんが筆頭として表彰されたものだ。


左からJE2SOY成瀬さん、7L1FFN磯さん、JA2HDE木村さん

磯さんによると、特に電子工作教室の実施が評価されたとのこと。これは、主に小学校4年生から6年生の親子を対象としたもので、エレクトロニクスに興味を持ってもらい将来技術者を目指すきっかけになればという思いで、毎年、東海4県及び名古屋市内で実施している。この教室は多いときで30組60名ほどの親子の参加がある。「これらも、各県支部の有志がボランティアで手伝ってくるので、助かっています」、と話す。

磯さん曰く「アマチュア無線家は基本的にボランティアで動きます。人件費、交通費、昼食代などはすべて自己負担です。皆さん、子供達の笑顔がもらえればそれでだけで良いと、喜んで手伝ってくれます。だから外部資金を獲得するコンペでも有利となる事が多く、たとえばハンダごてなどの必要機材を国の機関などから購入してもらえることが多いんです」

最後に、磯さんは将来の夢として、「まずは時間を確保して、いろいろなものを作りたいです」、「将来の工作のために確保した部品はたくさんあるのですが、今は作る時間が全くとれません。リタイアしたら、手持ちの部品を活用して色々なものを作りたいです」、「ただし、作りたいものがたくさんありすぎて、まだ具現化はしていないのです。強いて言えば、デジタルに関連するものですか。さすがに高性能な無線機を作るのは無理でしょう」、と笑って話す。

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