2016年5月号
JH5FOQ 林秀則さん
2008年に日本で初めて2m DXCCの完成という偉業を成し遂げた愛媛県松山市在住のJH5FOQ林さん。両親(JA5EW & JA5HPI)がハムという環境で育った林さんだったが、ライセンスを取得したのは高校生になってからの1978年、松山市でJH5FOQを開局した。開局後は2m SSBがメインバンド/モードとなる。その頃は国内QSOに精を出し、地上波で交信可能な西日本各局とのQSOを楽しんだ。しかし、就職と同時に東京に転居することとなり、同時にアマチュア無線活動もいったん休止となった。
1988年、実家のある松山市に転勤となり新居を探すことになった。林さんは将来のアマチュア無線再開も見据え、市街地より少し高台にある土地を購入しそこに新居を構えた。新居での生活が落ち着くと、さっそく2mの2x12エレ八木をルーフタワーに設置して運用を再開した。すると、目論見どおりに電波が飛び、実家からでは困難だった1エリアの局と交信できた。その後は再びアマチュア無線に熱中していった。
その頃は、春から夏の夜間によく出現するFAI (Field Aligned Irreguralities)伝搬で交信するため、アンテナには仰角ローテーターも備えて、コンディションの良い日は深夜まで運用し、北海道や東北など、通常の伝搬では困難な地域の局とも多数交信して楽しんでいた。仰角ローテーターを装備したことから、1992年11月のARRL EMEコンペティションにて、試しにアンテナを月に向けてみたところ、月面で反射してきた米国のKB8RQのCW信号が受信できた。2mのリグから聞こえる米国からの信号に感動し、これが林さんがEMEを始める直接のきっかけとなった。
EMEのQSOを行うにはハイパワーが必須のため、まずは資格からだと、93年4月、10月の2回の国試で1アマのライセンスを取得。すぐにアンテナのグレードアップ(2x2x13エレ八木)と500W出力のリニアアンプも用意して、1994年4月に変更申請書を提出、変更検査にも合格して、2mのハイパワーライセンスを取得した。
EMEでの初交信は、KB8RQと行うことに決めていた林さんは、免許取得後、他の局には目をくれずKB8RQのCQを探して呼び出し、応答をもらって1st EME QSOを達成した。当時はまだ2m EMEで現在主流の通信ソフトWSJTが世の中になく、交信したモードはもちろんCWだった。林さんの運用はEME一筋となり、月があればアンテナを月に向けて運用した。
一方、2002年頃にK1JTがWJSTを公開し、一部の局がJT44モードを使って、EMEによるQSOでテストを行いだした。さらに2004年になると、WJSTにJT65モードが搭載され、CWモードより微弱な信号でもQSOが可能なことから、JT65でQSOする局が徐々に増えていった。このような状況下、林さんも2004年にパソコンとのインターフェースを製作してJT65モードでのQSOをスタートした。比較的小規模な設備でもEMEが行えることから、JT65を使ってEMEに参入してくる局が増えていったこともあり、林さんのEMEでのQSO数はどんどん増えていった。
また、JT65は、小規模設備でのEMEを可能にしたことから、EMEのDXペディションが増えていった。その結果、それまで巨大なアンテナがないと完成は不可能だった2m DXCCが現実的になってきた。林さんはEMEのDXペディションに合わせて仕事を調整したり、時には狙った局とQSOするためだけに出張先から一時的に帰宅したりしてQSOエンティティ数を伸ばしていった。そしてついに、2008年2月、BY7PPとのQSOで、日本の局としては初めて、2mで100エンティティとのQSOを達成、QSLカードも入手して同年9月、世界では31番目となる2m DXCCを受賞した。その中で一番印象に残っているのは、2007年に西回りでQSOしたPY4OGだという。
現在使用中のアンテナ(2x2x14エレクロス八木)
EMEでは、今でこそインターネット掲示板でCQ周波数を告知する形態のランダムQSOが多いが、林さんがEMEを始めた頃はスケジュールQSOも多く、そのため、世界の各局とEメールなどで連絡を取ってCWでのスケジュールQSOにトライした。そのため、「EMEを始めたことで世界中に友人ができたのが大きな収穫でした」と話す。
林さんは、2012年の英国ケンブリッジ、および2014年の仏国ランニヨンで開催された国際EMEカンファレンスに参加し、「世界のEMEerとアイボールQSOして、親交を深めることができました。今年(2016年)は伊国ベネチアで開催されますので、参加する予定です。特にCW時代につながった旧友と会えるのがうれしいですね。」と話す。一方、全日本EMEミーティングも4年に1度開催されており、林さんは2000年の松山大会では開催スタッフとなり、その後2004年の新潟大会、2012年の久留米大会にも出席した。今年(2016年)は札幌での開催が予定されているが、もちろん出席する予定だという。
林さんの今後の目標は、まずは「アクティビティの継続です」と話す。その延長線上として、DXCC200の達成、全米50州とのQSOなどを挙げる。また、「将来は、ノイズのない環境にリモートシャックを構築し、遠隔操作でもDXペディションを狙える様にしたいです。さらには、自分自身もDXペディションに出かけて、これまでお世話になった世界の各局に恩返しがしたいです」と抱負を話す。
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