2015年10月号

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JA8IAD 鳴海道則さん

札幌市豊平区の自宅に2基のパラボラアンテナを設置し、月面反射通信(EME)にアクティブな鳴海さん。無線に興味を持ったのは青森県弘前市に住んでいた高校生の頃だった。通っていたのが電波高校だったこともあり、在学中に電話級無線通信士(現在の第四級海上無線通信士)※の資格を取得した。
※この資格で第四級アマチュア無線技士の操作範囲の操作が可能。

高校卒業後、就職に伴って県内の八戸市に転居してからアマチュア無線局の開局申請を行い1966年にJA7FTMを開局した。八戸市からは2年間ほど7MHzや21MHzを中心に運用を行った後、1968年に北海道勇払郡安平町に転勤となった。転勤後数年間はJA7FTM/8で運用し、その後変更申請を行って現在のJA8IADを取得した。安平町では木製の電柱にモズレーのTA-33を上げ、トランシーバーにはスターの700ラインを使って運用したという。

当時、安平町に隣接する千歳市には米軍基地があり、基地に勤務する隊員にもハムがいた。仕事で基地に出入りする日本人ハムに紹介してもらい米軍のハム達と知り合いになった後は、時々基地に遊びに行った。「そこにはコリンズのラインがずらっと並んでいて羨ましかったです」と話す。

その後、数回の転勤を経て札幌市に転居した後は、7MHz用2エレ八木や、ハイバンド用5エレ八木を上げるなど、ますますアクティブに運用を行っていたが、ある日市内のJA8XFP安藤さんのシャックで、432MHzのEMEでCWのエコーを聞かせてもらったところ、月面に反射し2.5秒遅れて返ってくるエコーに大きな感動を受けた。

これを機に鳴海さんはEMEの魅力に取りつかれてしまった。まずは手ごろな144MHzからスタートし、アンテナにはM2社の17エレ八木を4枚上げた。さらに144MHzの運用を続けるうちに他のバンドも運用したくなり、次は432MHzを始めた。432MHz用にはM2社の28エレ八木を4枚上げ、その後このアンテナを6枚まで増設した。しかし、432MHzはEME人口が少なく、144MHzの様に多くの局とはQSOができなかったという。

鳴海さんはさらに上の周波数であるGHz帯のEMEにも挑戦する。まずは1.2GHz。この周波数ではパラボラアンテナの使用が一般的であるが、アマチュア無線用のEME用パラボラアンテナの市販品は無い。そのため、鳴海さんは直径4mのパラボラアンテナを自作した。このアンテナで1.2GHzのEMEを始めてみると、月さえ見えていればいつでも自局のエコーが聞こえ、このバンドに熱中する。

しかしアンテナが大きくなれば、それに伴って受風面積も大きくなるため、この4mパラボラは冬の暴風雪に破壊されてしまった。それでも鳴海さんは春になると一回り大きな直径5mのパラボラアンテナを作って再建し、さらには2.4GHzも始めた。5mパラボラで両バンドにオンエアしているため、バンドチェンジにはフィード(給電部)を取り替える必要があり、鳴海さんは主にコンテストに合わせてバンドを決め運用している。


432MHz 6x28エレ八木、1200MHz 5mパラボラ、144MHz 4x17エレ八木

2.4GHzは日本と外国とでは割り当て周波数が異なるため、スプリットで運用する必要がある。具体的には2.4GHzで送信し、2.3GHzを受信するという具合である。2.4GHzでCQを出し終えたら、受信機のダイヤルを回して2.3GHzをワッチするのである。逆に、外国局のCQに応答する場合は、その局が2.4GHzをワッチしている必要があるが、その場合は「CQ JA」と打っているので、それで判断できるという。


2.4GHz用フィードを取りつけた5mパラボラ

鳴海さんのEMEは144MHzから順次あがって行ったため、144MHz~2.4GHzの4バンドでQSOした局も数局いるという。その後、鳴海さんのメインバンドは1.2GHzと2.4GHzになった。144MHzのアンテナは、雪が付着したときの強風でブームが曲げられてしまったのを機に下ろした。「北海道は雪が降るためアンテナの保守が大変なんです」と苦労を話す。

さらに鳴海さんの挑戦は終わらず、次は5.7GHzへのトライを始めた。2007年には5.7GHz50Wの変更申請書を提出したが、その時北海道総合通信局には5.6GHzに対応した測定器が無かった。そのため、変更検査は総通局に測定器が入るまでしばらく待たされることになったという。5.7GHz用には1.2GHz/2.4GHz用とは別に、小型のパラボラアンテナを設置した。これら2基のパラボラアンテナの駆動には、方位角は減速機付きのチェーン駆動のローテーター、仰角は業務用のアクチュエーターを使用し、コントローラーで自動追尾させている。「1度狂ったら信号は聞こえませんから、アンテナは正確に月に向ける必要があります」と話す。


コントローラーで自動追尾

しかし5.7GHzでのQSOはなかなか難しく、2015年9月現在ではまだこのバンドでQSOを達成できていない。「現在の目標は5.7GHzでの1st QSOを達成することです。このバンドの運用局は日本に数局、外国には多くいます」、「高い周波数のEMEには魅力があり、やりがいがあります」と話す。


5.7GHzの送信アンプ+トランスバーター

来年2016年6月には北海道でEME全国大会の開催が予定されている。「これは4年に一度開催される国内で最大規模のEMEのイベントです。EMEに興味のある方はぜひご参加ください。お待ちしています」と、鳴海さんは話す。


鳴海さんの現在のアンテナ群

このコーナーでは、アマチュア無線の様々な楽しみ方に挑戦するハム(アマチュア無線家)を紹介します。
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