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Summits On The Air (SOTA)の楽しみ

その12 知的好奇心とSOTA(JG1GPYさんの楽しみ方)

JH0CJH・JA1CTV 川内徹

みなさんこんにちは、JH0CJH川内です。
今回は関東地区でSOTA運用をアクティブに楽しまれている、JG1GPY安部さんを紹介したいと思います。 安部さんは非常に多彩な趣味の持ち主で、アマチュア無線にとどまらず、写真、絵画、天体観測そして英語でのコミュニケーション力も生かし非凡な才能をグローバルに展開しているタレントの持ち主です。その安部さんがSOTAに興味を持っていただいたということはおそらくSOTAの世界的な活動など大きな楽しみを期待してのことだと思っています。決してSOTAに限定されることはなく、多くの可能性を探求する心、知的好奇心こそ、アマチュア無線の原点があるのだろうと思います。今回はそんな安部さんの限りない好奇心の一つとしてのSOTAの楽しみを紹介させていただきます。

知的好奇心とSOTA

安部健 JG1GPY


沖縄旅行をした時の移動運用(妙山:JA6/ON-038 )

きっかけは多摩川移動運用

きっかけは、何年か前のハムフェアの時、ふと目についた50MHzの2エレのデルタループアンテナを購入したことだった。デルタループアンテナはとにかく格好いいと思う。結構安かったと記憶している。自宅に持って帰って組み立ててみるとやっぱり格好いい。早速自転車に括り付けて近くの多摩川に移動運用に出かけた。FT-817NDに単三電池で運用すると、SSBですぐに何局かとの交信はできた。サイクルロードになっている多摩川の堤防で、6mのデルタループは結構目立つらしく、よくサイクリングしている人から声をかけられた。他方、交信する相手の局からは「2エレのデルタループならもう少し強くてもいいんですがねえ。」などコメントをもらったりした。「やっぱり高さかなあ」とちらっと思いつつも、こっちにはパワーを上げることもこれ以上アンテナを工夫することもままならない、技術的にはちょっと行き詰った感じもあった。まあ、超格好いいデルタループを上げて土手の上で自転車を止めてQSOをするというスタイルは、十分満足できるレベルではあった。


デルタループはいつみても美しい。多摩川土手での移動運用がSOTAのきっかけになった。

SOTAデビュー

そんな移動運用の様子を自分のブログにアップしたところ、思いがけず近くに住む方からコメントを頂いた。その方は、それまでにもいろんな山への移動などをされているOMで、山行きの道具から持って行くアンテナまでいろいろと助言をいただいて、ほどなくしてSOTAデビューすることになったのだ。新品の登山靴を履いているのに、当日はあいにくの雨。レインコートを着て、目的地の権現平(JA/KN020)に向かった。神奈川県の権現平は登山というほどのことはない低山だけど結構場所が広く、屋根のある場所もあって初心者にはピッタリだったと思う。2016年4月24日とログには記録がある。その日は18MHzCW4局、50MHzSSB8局と交信した。それから約2年半の間に61回のアクティベーションを行っている。(2018年8月18日現在)


SOTAへ導いてくれたJL1NIE局(左)と一緒に(大菩薩嶺)

趣味の広がり

初めのころは鉛蓄電池を担いていったのだが、やはりあの重さはなんとも大変なのでリチウムイオン電池に乗り換えたり、HFのアンテナもダイポールからエンドフェッド、さらにはグランドプレーンといろいろと変遷があった。APRSやWIRESにも興味が出て、ハンディ機もお供に加わった。最初は車で行くことの多かった山登り、帰りに眠くなるのが怖いのと中央高速の午後の渋滞に閉口して、最近は電車で奥多摩方面に出かけることも多い。無線がきっかけで始めた山登りだったが、会社の同好の人たちに誘われて立山連峰の雄山や北アルプスの蝶が岳にも登ることができ、山周りの趣味も広がりが出てきた。最初の一歩を踏み出すことができたOMのご指導に心から感謝している。


最近のSOTA装備。SOTA旗も自作した。30リットルのリュックにすべてを詰め込んでいく。リュックの背中には、SOTAの文字とコールサイン。遊びは形にとことんこだわりたい。

とにかく忙しい頂上での作業

写真(それもモノクロフィルム!)を趣味にしているので、初めのころはよくカメラを持って山に向かったが、もう直せないようなアナログカメラを壊しては一大事なので、だんだんカメラは持って行かなくなった。その代わりと言っては何だが、山の上からスケッチすることを思いついた。カリスマカラーというちょっと値の張るこってりとした色鉛筆に無印良品の無地のダブリングノートを持って行く。少し紙に厚みがあるので、色鉛筆のスケッチとは相性が合う。ノートはログブックと共用で、景色のスケッチと交信記録が同じノートに記録される。山でスケッチをするようになると、それまで大して気にならなかった山の名前とかも記入したくなってきた。食事の準備も含め、いろんなことをやるので、とにかく頂上では忙しい。持って帰ったスケッチは、デジカメで撮った写真を見ながら完成させ、交信した局へのQSLの絵として利用する。面倒くさいQSLの発行だけど、自分の絵を入れてカードを作るとこれも楽しみの一つになる。


山で描いたスケッチを使ってQSLを作るのも楽しみの一つ。北アルプス蝶が岳頂上からの眺めをスケッチ。

チャレンジし続ける心

とまあ、これが私のSOTAスタイルである。なんだかとっちらかった感じはするが、まあ趣味の領域なのでそれはそれでいいと思っている。SOTAのポイントの方は、同じ山に何度も登ったり、1ポイントしかつかない低山に登ったりしているので、一向に伸びず大体ランキングの30位くらいを行ったり来たりしている。SOTAの楽しみ方は人それぞれだと思う。もちろんポイントを多く集めて賞状や盾を目指すのものすばらしいし、DXとのQSOを増やすためのリグやアンテナの工夫もあると思う。でも、そういう結果をゴールにしていると、ゴールに到達した瞬間に飽きてしまうような気もするのだ。道具に関しては結局お金をかければそれなりのツールは手に入ってしまうのも事実だろう。登山道具しかり、無線の道具しかりである。そんな物欲に負けないようにするために、ちょっとしたチャレンジを自分に課すようにしている。この前の登山でちょっとうまくいかなかったポイントを思い出してみるだけでもいい。CWの599BKの交信にちょっとだけ普通の文章を入れてみるのもいいかもしれない。事実、私のSOTAカンニングペーパーには、バンドプランやビーコンの周波数と一緒に、「ちょっと寒いです。」とか「ここは眺めがわるいです。」みたいなセンテンスがモールス語(?)で書いてある。そういうトライアルの結果が上手く行ったか行かないかは、それほど大きな問題ではない。その結果に対する「なぜ?」があるだけだ。一局も交信できなくても構わないし、高い山に登れずに同じ低山ばかり登っても構わない。「なんで今回は上手く行かなかったかなあ?」と考えてみるプロセスが大切だと思う。そういう知的な好奇心を刺激し続けてくれているSOTAプログラム、そしてそれをぐっと身近なものにしてくれたSOTA日本支部の皆さんに感謝したいと思う。


山のちょっと湿った空気を吸いながら一歩一歩山頂を目指す。そのプロセスを楽しみたい。

この前の夏休みにハワイ島に家内と遊びに行った。その時初めて海外運用をやってみようとリュックにリグやアンテナを詰めて持って行った。リチウム電池は空港でトラブルになるかも知れないとアルカリ電池をたくさんしこんで行ったが、結局1局も交信できずに終わった。コンディションとかバンドや運用時間の選択、ホテルのベランダからのアンテナの展開の仕方とか反省しきりではあったが、それはそれで楽しかった。SOTAを含め私の無線修行はまだまだ続きそうだ。


結局一局も交信できなかったけど、ハワイ島からのQRV。チャレンジは続く。

どうでしょうか。私は安部さんと話していてまず感じるのは少年のような心を持っている人というイメージです。アマチュア無線の原点である知的好奇心を純粋に追及している、そんな安部さんの様子が少しでも理解いただけたらと思います。おそらくそれはアマチュア無線やSOTAに限定されることなく、広くご自分の興味のある分野を深く追求し、そこから広がる世界の中に真理を追究する様子が伺えるのではないでしょうか?アマチュア無線は一人ひとりに別の世界が広がり、おそらくそれは誰のものとも違う、そこにこそ自分の価値がある、そんなことを感じています。

JH0CJH 川内 徹

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