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Summits On The Air (SOTA)の楽しみ

その10 SOTAと地図と冒険心(JA1CTCさんの楽しみ方)

JH0CJH・JA1CTV 川内徹

みなさんこんにちは、JH0CJH川内です。

今回紹介するのはJA1CTC小林さんです。小林さんは千葉、茨城から北関東から南東北、そして信越地区を中心にアクティブに活動をされています。小林さんは特に地図についての思い入れが深く、GPSや数々の地図ソフト、アプリにSOTAの山岳位置情報を表示する機能を追加するなどソフトウェアの見識もお持ちです。SOTAに登録されている山岳名が未知の場所に行って山岳名の情報も積極的に連絡していただいています。題名通り地図に対しての思いと冒険心からのなせる業だと思います。今日は文章を読むだけでもわくわくするような小林さんのSOTAの楽しみ方を紹介したいと思います。

SOTAと地図と冒険心

JA1CTC 小林恵一

「無線が先か山が先か?」。私の場合は山が先になります。無線の従事者免許は取得しましたが開局はしないでしばらくいました。山に登るのに当時は携帯電話がない時代だったので万が一の場合に備えて無線機をもっていったほうが安全との理由で2mのポータブル機を購入して開局しました。

初めて無線機を持っていった山が八ヶ岳の赤岳、単独のテント泊だったので無線機の重さもこたえましたがまだ若かったのでカバーできました。山頂で試しに内蔵のホイップを伸ばしてコールすると3エリアからコールバックがありました。山の上からはこんなに遠くに飛ぶのかと新鮮な驚きがありました。この経験から山頂で無線を行うようになりました。


地図には山名が載っていない千葉の<JA/CB-008>にて

その後は、登山は年に数回程度おこなっていましたが、無線はしばらく休んでいる時期がありました。その間もハムフェアーには顔をだしていました。数年前に山岳移動のブースで話を聞いて面白そうなのでメンバーになり、その会合でSOTAを知ることになりました。山頂(ピーク)での無線の面白さは知っていましたが、どこの山で行うか、100名山等とは違う観点で選定していて興味がわいたからです。何かの指針を求めていたのかもしれません。

標高差150m以上の世界

SOTAで選定している対象の山頂(ピーク)はコルとの標高差が150m以上あることを基準に機械的に選定しています。そのために、例えば100名山の隣のピークであったり、三角点もないような単なるピークが選定されているケースが多数あります。SOTAの日本山岳名リストで「点△△△」や「〇〇山近傍」と表記されている部分がこれに該当します。

この場所を探し、どのように登るか、どの方面からアプローチするか、地図上やネットの情報を探すのもSOTAの一つの楽しみです。山名となっていますが、私のなかではSOTAの指定位置は単なるピークと理解しています。偶然そのピークに山名や三角点がついていたということ。でも、その位置に山名等の名称がないと他の登山記録やルート検索に非常に不便であるため、登られて山名のないピークや三角点などで山名が確認されましたらSOTA日本支部まで連絡をお願いします。

この日本山岳名リストの山名もSOTA参加者の協力で維持改善されています。このように、SOTAと通常の山での無線運用との違いはその位置にあることも特徴です。山名があるとか山容とか、山頂からの風景とか信仰、歴史とかとは別に今はやりの言葉でいうと、「AIが選んだピーク(頂)」でしょうか。

SOTA日本山岳名と地図アプリ・GPSとの連携

このようなピークがどこにあるか、SOTA日本山岳名リストでは位置情報が示されています。SOTAのマップでも確認することができます。しかし、自分が利用しているハンディGPS(Garmin社製)との連携を考えた場合は、カシミール3Dに選定されたピークが表示されるとルート設定やトラックログの管理など非常に便利で、対象ピークが使い慣れた地図上に表示されるようにならないか検討しました。そうして、カシミール3D用の地名データにSOTAの日本山岳名リストを変換することにしました。

変換ツールはRubyで作成しましたが、現在はすべてPythonに書き換えています。その後、GPS(Garmin)の位置情報(POI)に変換しその際に、住所情報を付加してJCC/JCGコードも表示できるようにしました。こうすることで無名のピークや有名でない三角点に登る時に有効なツールとして活用できるようになりました。藪のなかで、GPSを片手にピークである三角点を探したり、ピークと思われる場所をうろうろ探し回るのも楽しみかもしれません。ちょっとした冒険が楽しめるのもSOTAならではでないでしょうか。


GreminGPSでの表示例(表示データマスクあり)

スマートフォン(地図アプリ)との連携

SOTAは位置情報が基準になるのでGPSと密接に関連しています。もちろんGPSがなくても問題がありませんが、登山道がなかったり三角点もない単なるピークに出かけるときはあると非常に便利です。

ハンディGPS以外にも最近はスマホのGPS機能を活用した登山に便利な地図アプリが多数あります。その中で、「地図ロイド」と「Geograhica」用に変換したSOTA日本山岳名リストも作成し公開しています。バッテリや明るい屋外での視認性の問題がありますが私もハンディGPSと併用しています。スマホにこのようなアプリを入れるときは、一緒にSOTA日本山岳名リストを組み込んでいるとSOTAの活動がより楽しめると思います。もちろん、電子機器はトラブルやバッテリ切れがつきものですから紙ベースの地図やコンパスも必須です。


地図ロイドの表示例


Geograhicaでの表示

また、よく使用されているGoogleEarth用のKML形式に変換したSOTA日本山岳名リストも変換して公開しています。これは、SOTA Mapping Projectでも個別に見れますがKML形式の勉強を兼ねて作成してみました。


GoogleEarthのSOTA山名リスト表示例

運用情報収集

SOTAの特徴のひとつに、ログのデータベースへの登録とそれの公開があります。これから登って運用してみたいピークについて、過去に登って運用している人がいる場合は、いつ、だれが、どんな周波数とモードで誰とどれだけの数を交信しているかすぐに判明する仕組みになっています。これを見るとそのピークでの運用はどんな具合か見当がつきます。

多くの運用実績がある場所はそれだけ容易に登れて飛びがよい証拠で、どのピークに登って運用するか場所を探している人は検討材料に活用できます。また、誰も運用していないピークも一覧からわかります。最初にそのピークで運用するとFirst Activatorとしてデータベースに登録されます。このいちばん最初の運用者もねらい目ですね。冒険心がくすぐられます。

設営の楽しみ

指定されているピークに着いてから無線運用を行いますが、どの周波数でどのようなアンテナでどの位置から運用するかを決めるのも楽しみです。SOTAでは指定されているピークより標高差で25m以内(GPSや高度計の出番)が有効なので山頂のどの位置にアンテナを立てるかはいつも悩むところ。私は通常3種類のアンテナをもっていきます。周囲の状況(広さ、登山者、樹木、岩稜等)、どの方向に開けているか(相手無線局がいそうか)、風の強さ等を考慮してバンドとアンテナを決めます。事前にある程度は予想していますが気象条件や現地の状況で変更します。


(左)日留賀岳<JA/TG-018>(右)伊予ケ岳<JA/CB-009>

山の動物・虫は手ごわい

SOTAが指定する位置は有名な山である場合は登山道等がしっかりしているので安心ですが、里山といわれる1000m未満のピークは道が入り組んでいたり、荒れていたり、昔は道があったが今はないような藪同然になっていることが多数あります。このような場所に行くときは道迷いに注意することも当然ですが、害虫対策も必須です。ヤマビルやダニ、無線運用しているときによってくるブヨなど意外に手ごわいです。私はダニに2回やられました。もちろん、熊や猪も要注意です。


(左)夫婦山<JA/TG-035>(右)三峰山<JA/NN-080>

最初の目標は近場から

私が住んでいる千葉県は、全国で一番山がすくない県で当然SOTAの対象となっているピークも最小の12箇所で全部のピークに登ってもSOTAのポイントでは12点、冬に少し高い山に1山登ったのと同等以下です。隣の茨城県も少なく25箇所です。SOTAを始めるにあたり手始めに県内の指定されているピークにすべて登ってみることを目標にしてみました。しかし、1か所は自衛隊のレーダー基地があり無線は不可でした。(SOTAの指定する位置ですべて無線ができるとは限りません。火山等の禁止区域、私有地やゴルフ場、基地などはできないことがあります)残りはなんとか登ることができました。400mに満たない山々でしたが、県内でほとんど行ったことがない場所を車で走り、道のない山を登ってみて、同じ県内でこんなところがあったのか、指定ピークが削られつつある山の山頂であったりと開発が進む現地や朽ちかけた山頂の神社や祠、山を取り巻く時代の変化など新たな発見がありました。無線は、ほとんどのピークからは海が見えてU/Vでも結構楽しめました。一部は藪の山で苦戦しましたが。

また、隣の茨城県の指定ピーク25箇所もすべて登ってみました。素晴らしい里山であったり、登山道を維持している人に出会えたりと里山ならではの出会いがあり、これもSOTAを始めたからです。里山や無名ピーク、三角点に出かけることは今まではなかったので新たな発見のトリガになっています。100名山はもちろん素晴らしいですがSOTAが選定した無名の里山やピークも結構楽しめます。

そう、ピークに登頂しても誰もいないことがほとんどで無線運用には最適です。でも、このような無名のピークで運用すると場所の説明に困ることがあります。SOTAではすべてのピークにコードを付けているので、そのコードを伝えることで場所がわかるような仕組みになっています。例えば、茨城の無名のピークである「点300」は「JA/IB-018」となっていますが、音声で「JA/IB-018」といってわかるようになるくらいにSOTAの認識が上がるとうれしいですね。SOTAの理解を深めてもらうことがこの記事の目的ですが。それまでは位置情報をどう伝えるか相手の状況に応じて的確に伝えることが頭の体操のようです。これって意外と難しいです。APRSという手もありますが。


(左)宝篋山<JA/IB-022>(右)会津駒ケ岳<JA/FS-002>

運用している場所については、前記述のSOTAのマップやカシミール3DやGoogleEarth用のSOTA日本山岳名データを活用するとPC上で素早く検索、表示することができるのでチェイサーの方も楽しめると思いますがどうでしょうか? こんなところで運用しているのかがわかると会話の内容も印象深くなると思います。

高さが生かせるバンドから

無線はピークである高さが活用できる50MHzから上のバンド(主に2mのSSB)を中心に運用しています。地方の山奥では厳しいこともありますが、山岳反射や回折などで思わぬところから声がかかることがあり地図上での見通し距離以外とも交信できるので楽しめます。

といいながらも3時間近くかけて登って、1局だけの交信で下山したこともありますが、交信できただけでもラッキーと思うことにしています。その分は登山というプロセスを楽しめたことで納得です。


(左)箕輪山<JA/FS-012>(ピークは藪)(右)朝日山近傍<JA/FS-132>

最近の運用スタイル

ここ数年は、パートナーと同行して登山&無線をすることがほとんど。パートナーは健康志向の一環とのこと。したがって登山がメインになりつつあります。そこで無線運用に関しては、設営・撤去に時間をかけないような工夫をせざるを得なくなり、簡素化と分担作業ができるようにしています。軽量化に一番苦労する外部バッテリは、ピークまでの移動時間や無線機によりリチウム系のバッテリ(Li-ion、LiPo、Life)の3種類を重さとトータル運用時間により使い分けています。FT-817を利用する機会が多いのでマイクについては、超小型マイクを作成して操作性は犠牲になりますが運搬・重量・容積重視で活用しています。運搬時はリアのアンテナ端子と放熱器の間に入れて保管しています。

運用する時間も短時間で一定局数を越えたら終了という家庭内ルールの中で運用していますが、コールが聞こえましたらお声がけをお願いします。

QSLカードはSOTA運用らしく歩いた軌跡と運用場所を地図上に印刷したものを発行しています。こんなところを歩いて登っていったのかと、数ケ月後に思い出していただけると嬉しいです。

各種提供データの配布場所
https://little-ctc.com/sota_hp/

いかがでしたでしょうか? 

地図をみてまだ見ぬ山岳へのルート、そして山頂に立った時の光景まで思い描きながら山に登る、そして無線を楽しむ小林さんの様子が目に浮かぶようです。我々も小林さんを見習い、いつまでも冒険心とわくわくするような気持ちを忘れずにいたいものです。

JH0CJH 川内 徹

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