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楽しいエレクトロニクス工作

第75回 ハンディ無線機用電源

JA3FMP 櫻井紀佳

携帯電話に使える補助電源は色々出ていますが、この電源をアマチュア無線のハンディ機に利用できないか考えてみました。携帯電話用の外部電池の中で今回はANKER社のAstro E1を選んでみました。この電池の充電入力端子はMicro USB Bタイプのため携帯電話の充電器で充電でき、容量は5V 5200mAhあります。また、出力端子は標準のType A端子となっています。


ANKER Astro E1

アマチュア無線のハンディ機の外部入力電圧は10V~15Vが多く、そのためこの電池の5Vの出力を10V程度まで昇圧する必要があります。目標としてAstro E1の電池から5V 2A(max)を取り出してハンディ無線機の外部電源端子に供給することにしました。昇圧回路は色々あると思いますが新日本無線のIC NJM2360(DC/DCコンバータ制御用IC)を使った回路を実験してみたいと思います。

その回路は次のようなものです。


巻末のNJM2360の資料のように、このICは内部のトランジスターだけで1.5Aのスイッチング能力がありますが、必要な要求に少し足りないと思い外部にトランジスター 2SC4552を追加することにしました。2SC4552は10A位まで電流増幅率hfeが平坦であり良好な特性を持っていて今回の用途に十分使えると思います。

この回路は、Astro E1から入ってきた5VはR2を通してL1のインダクターに接続された端をQ1のトランジスター2SC4552でスイッチします。Q1がONになるとエネルギーがL1に蓄積され、Q1がOFFになるとそのエネルギーが電源5Vに上乗せされた形でD1にかかり、整流されてC3に充電されます。

C3に出力される電圧はL1に蓄積されたエネルギーに依存するのでQ1のON時間が長くなると大きくなり、短くなると小さくなります。従ってQ1のON時間をコントロールすれば必要な電圧が得られることになります。C3の出力電圧はR5、R6、R4で分圧されてIC1のピン5に帰還させ、内部の基準電圧1.25Vと比較してパルス幅をコントロールしてQ1をドライブし、出力電圧をコントロールします。その動作は巻末のICの資料をご参照ください。

R2は電流制限回路の電流検出抵抗で、インダクターを保護するために今回使ったL1の最大電流が4.3Aで、内部の電流制限検出電圧は250mVなので250mV/4.3Aで約60mΩとなります。このような低い値の抵抗は市販ですぐ見つからないので入手可能な1Ωのチップ抵抗をパラレルに接続して作ることにしました。1.27mmピッチのスルーホール付の穴あき基板に1Ωの1608のチップ抵抗を8本並べて取付け、同じものを2段重ねて1/16で62.5mΩの抵抗を作ることができました。

これらの回路の組立は45mm x 45mmの穴明き基板に部品をハンダ付けしました。Q1のトランジスターはケースを放熱板とするため基板の端に取り付けてケースにネジ止めします。このトランジスターは全体が絶縁されているため絶縁シートが不要でトランジスターとケースの間に放熱用コンパウンドを塗って取り付けました。基板の下にスペーサーを取りつけてアルミケースから浮かせましたがトランジスターとアルミケースの間の寸法が合わず、この間にさらに1mm厚の銅板を挿入しています。

外観ケースは、以前は他の用途で使っていた60mm x 90mm x 20mmのアルミケースに入れました。前面には電源スイッチとパイロットランプをつけ、後面にはAstro E1からの入力用Micro USB Bコネクターと無線機への出力コネクターをつけています。


ケース前面 (左)と後面 (右)

出来上がったユニットに外部の定電圧電源から供給した5Vをつなぎ、まず負荷試験器で試験してみました。この負荷試験器は以前に他の用途でも使っていたもので、負荷になるFETの電流を可変するもので1Aまでの負荷電流を可変できます。Astro E1の最大電流2Aまで試験しました。

試験の結果は次のようになりました。

試験の結果、当初考えていた効率より悪いことが分かりました。出力電流の変化で効率はあまり変わらないため、電流による効率の悪化ではなさそうで原因はよく分かりません。Astro E1から取り出せる電流はMax. 2Aなので仮に効率100%としても出力10V 1Aしか取り出せないことになり、当初の目標までいきませんでしたが、この状態で使ってみることにします。

試験が終ったので早速Astro E1の電池に付属のUSBケーブルで接続してみましたが3.75Vしか出力されませんでした。不思議に思って色々調べてみた結果、電池側のUSB端子3のD+をグランドに落としておかないと3.75Vになって、5Vにはならないことが分かりました。
原因は通販で買ったMicro USB Bのコネクターが電源用の2端子だけのものでD+の端子が開放になっていた為でした。もう一度全端子が出ているコネクターに買いなおすことになりました。

ハンディ無線機に接続して使うため手持ちのID-31について試験してみました。ID-31の電源を入れずにこの昇圧ユニットを接続すると300mA位の電流が流れます。これはID-31が充電状態になるためで、ID-31に装着したリチウムイオンバッテリーの状態によって電流は変わると思います。次にID-31の電源を入れると電流の変化はあまりありませんでした。

ID-31の送信時の電流を調べるため、一度昇圧ユニットから定電圧電源に繋ぎ変えて電流を測定しました。10Vの電源では送信出力High(5W)で1.2A、Mid(2.5W)で0.8A、Low(0.5W)では450mA位になりました。従ってこの昇圧ユニットを使うと送信出力Low以下で運用する必要がありますが、昇圧ユニットを接続しておくことでID-31に装着したリチウムイオンバッテリーが充電されるため通常の運用ができると思います。

ハンディ無線機を持って出かける時、このユニットとAstro E1の電池を持って行くと電池切れの心配がなくなり便利と思います。

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