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楽しいエレクトロニクス工作

第74回 NAVTEX

JA3FMP 櫻井紀佳

NAVTEXは海上安全情報を船舶向けに中波帯域のFSK(Frequency Shift Keying)で送信しているシステムです。世界的なシステムですが日本国内の場合、海上保安庁が運用しています。電文には英文と和文があり、518kHzでは英文で、424kHzでは和文で、4時間おきに那覇、門司、横浜、小樽、釧路の全国5つの各海岸局から航行警報テレックスとして送信されています。各1回の配信時間は英文約10分、和文約15分です。

プロ用のNAVTEX受信機はこの電波を自動的に受信し、内蔵のプリンタで印字する機能が付いています。この装置はNAVTEX水域を航行する船舶局に搭載が義務付けられています。受信する電波の周波数の特性上、日中は近辺局の信号しか確認できませんが、夜間になると全国の海岸局からの信号が確認できます。

そこで今回はこの電波を受信する受信ユニットを作ってみました。相当以前になりますがNAVTEXが話題になったことがあり、その時に手に入れた518kHzの水晶フィルターを持っていることを思い出したので、これを使ってみることにしました。NAVTEXの受信に水晶フィルターが必須ということではなく、LCを使って十分受信できますが、たまたま持っていたので使ってみました。


NAVTEXユニットと518kHzフィルター特性

また、FSK信号の受信に便利なダイレクトコンバージョンのICの評価基板を持っていたので、これも使ってみることにしました。このICはPlessy社のSL6649-1ですが、現在はこのICは製造されておらず、Plessy社そのものもなくなっています。ただし、このICをインターネットで探すとまだヒットするので手に入るかも知れません。

今回使ったダイレクトコンバージョンのICは中波のような低い周波数を目的に作られたものではなく、V、UHF帯の当時のポケットベル等FSK通信の受信をターゲットにしていますが、今回のように低い周波数でももちろん使えます。

ダイレクトコンバージョンの受信方式は、次のような構成になっており、受信信号を直接ベースバンドの信号に変換するものです。従って局部発振周波数は受信信号と同じ周波数になりますが位相が90°異なった二つの局部発振の信号が必要です。


実際のIC内部には次のような機能が入っています。


また、今回使ったPlessyの評価基板と局部発振を含む全体の回路は次のようになりました。


アンテナコネクターから入力された信号はL1、C21のマッチング回路で518kHzフィルターの500Ωのインピーダンスにマッチングさせて入力します。その後RF AMPで増幅された信号はT1のトランスを通して2つのMixerに入力します。2つのMixerは90°位相の異なる局部発振信号とミックスされて90°位相の異なるIとQの信号を取り出します。

IとQの信号は増幅後、不要な高い周波数成分をChannel Filterで取り除きます。その後Limiterで振幅制限した後4φDetectorで復調信号を取り出します。復調された信号はBit Rate Filterで不要な雑音等取り除き、Limiterで振幅制限をかけて出力します。

Mixerに入力する90°位相の異なる518kHzの局部発振の信号は、ロジック回路の水晶発振回路で4.144MHzを発振し、1/8に分周した信号から取り出します。最初に1/2に分周してその後1/4に分周しますが、1/4分周の分部で90°位相の信号を作り出します。

このIC SL6649-1の電源回路は2電源でVcc1が+2.3V、Vcc2が+3.0Vになっています。3Vの3端子レギュレーターを持っていなかったので5Vの3端子レギュレーターを使って直列にLEDを通して+3Vを作りました。使用した緑のLEDは順電圧が丁度2Vになり5V-2Vで希望の電圧を作ることができました。評価基板のVcc2に+3Vを接続すると基板内にダイオードが入っているので+2.3VのVcc1を自動的に作ってくれます。

今回作ったユニットは、ベースにした基板上に水晶発振回路、分周回路、電源回路や518kHzフィルター等を載せ、その上にSL6649-1の評価基板を載せました。

なお、NAVTEXの電波を受信するにはアンテナが大きく影響します。最初は7MHzのダイポールや3.5MHzのツェッペリンアンテナで受信してみましたがほとんど受信できず、7mの垂直アンテナを使ったところ受信できました。また受信地点が内陸部のため昼間はほとんど受信できず、夜間を待つしかありませんでした。

今回作ったユニットは518kHzの信号をダイレクトコンバージョンでベースバンドに変換するだけのものなので信号の解読プログラムと表示が必要です。この解読プログラムは幾つかあってインターネットで「NAVTEX」を検索するとフリーソフトが見つかると思います。それらは著作権があるのでここでは詳細に提示できませんが、無償提供されていますのでそちらにアクセスしてみてください。

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