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楽しいエレクトロニクス工作

第71回 ワイヤレス充電

JA3FMP 櫻井紀佳

電気自動車などでワイヤレス充電が話題になっています。ワイヤレス充電はスマホや電動歯ブラシなどで既に実用になっているものも多くありますが、無線通信機関係ではまだポピュラーになっていないようです。

ハンディ無線機などでワイヤレス充電を実際に実験するには無線機本体の改造が必要になるため、あまり簡単に手が出せません。そこで今回はハンディ無線機の充電器に相当するワイヤレス充電の実験をしてみることにしました。

ワイヤレス充電は、レーザーのような放射型を除くと非放射型では次のように色々な方法があるようです。

この中で無線屋としてすぐ思いつくのはコイル対コイルの結合による電磁誘導式になると思います。磁界共鳴式は送電、受電でそれぞれLとCの共振回路で構成され技術的にはアマチュア無線に近いものですが、電波として放出されるエネルギーも多く受信機にノイズとして入力される可能性が高いため避けることにしました。

電磁誘導式では結合するコイルはどの程度のものか、駆動回路はどんなものが良いか、周波数はいくら位が良いのか全く経験がないので見当がつきません。従って今回は最良のものができました、という結果にはなっておりませんが、ご了承願います。

今まで公表されている資料を参考にして原理に近いものから実験してみることにしました。

まず使用周波数は高い方が使用するコイルも小型にでき、効率も高くできそうですがコイルをドライブするパワーFETの周波数特性の問題と、何より手元にあるFETを使いたいため自ずと周波数が決まってしまいそうです。

手元にあるFETで使用できそうなものは2SK2342と2SJ387があり、これで検討してみます。電源電圧は13.8V系を使いたいので、2SJ387はVDSSが-20Vで少し心配ですが一度実験してみます。2SK2342はVDSSが30Vなのでこちらの方が多少安心です。

適当な周波数を決めるためにドライブ回路を先に実験して見ることにしました。出力ドライバーのFETとこれをドライブするCMOSのインバーターを働かせて信号源はCR発振器を使います。信号源としてこの連載の「第55回 低周波発振器」で作った発振器を使いました。出力にコイルを接続する前に抵抗負荷で試験してみます。


ドライブ部分は上下対称にして、上側のQ1がONの時、下側のQ4がONに、下側のQ3がONの時、上側のQ2がONになって交互にスイッチします。

これらのFETはCMOSのICでドライブします。電源電圧が13.8V系のためCMOSも18V系の4000シリーズを使用します。74HCの5Vシリーズは定格の電源電圧が低く使用できません。

FETのドライブ電圧は4V以上にしたいのですが、CMOS出力をFETのゲートにそのまま接続したり、抵抗分割したドライブでは上側のPMOS FETと下側のNMOS FETに同時に電流が流れる瞬間ができてしまいます。これを避けるためツェナーダイオードD2~D5でオフセット電圧をつけて両側が導通するドライブ電圧を避けています。

出力を10Wとすると、理想的にスイッチできれば完全な矩形波となって実効値は電源電圧と同じになるので、10W = 13.8V x 725mAとなり、負荷抵抗 RLは13.8V/725mA = 19Ωになります。実際には完全なスイッチ特性は無理で、また完全な矩形波にもできないのでRLは10W 20Ω程度で実験してみます。

負荷抵抗にオシロスコープを接続して波形を測定し入力の周波数を変えてみると、高い周波数では波形が崩れますが、まずまずの矩形波と思われる周波数は予想よりはるかに低い10kHz程度でした。


FETの出力波形 (左) とCMOSドライブ波形 (右)

この状態で振幅は13.4Vp-p程度で矩形波の波形はご覧の通りです。負荷抵抗に接続するリード線に結合してデジタルクランクメーターで電流を測ると670mA位になりました。このメーターは実効値を表示します。13.4V x 670mAで約9W程度のようで初期目標の10Wにはなりませんでしたが、まずこれで進めてみます。


デジタルクランクメーター (共立エレショップで購入)

FETの周波数特性が分かったので最終の実験回路は次のようにしました。


使用する発振回路はインバーターを使ったロジック発振回路で、発振周波数はf=1/2.2CRで決まります。従ってC1 = 1nF、R3 = 47kΩで発振周波数は9.7kHzになりました。発振部はTC4069のアナログ対応のICを使っていますが、FETドライブ部分はドライブ能力の高いTC4049を使いました。出力側のL1とL2の間が電磁結合でワイヤレスになります。

この回路は47mm x 72mmの穴あき基板に組み立てました。基板右端の黒い2つの板はFETの放熱板で裏側に4個のFETがついています。

回路的にはこの状態として、まずコイルを適当に作ってみます。0.8mmのポリウレタン線を8回平面に巻いて取りあえず接着剤アロンアルファで固定します。

出来上がったコイルをCR発振器に接続して矩形波で駆動し、オシロスコープで波形を見てみると相当な微分波形になっていてLが足りないことがはっきりしました。試験した周波数が500kHzでこの状態なので10kHzではとても使えそうにありません。念のためインダクタンスを測ってみると3.3μHしかありませんでした。


空芯コイルと500kHz駆動波形

このような構造でインダクタンスを大幅に上げるのは困難なため、別の構造を検討します。

手元にあった22mmφの壺型のコアが使えるのではないかと考え、このコアで実験してみます。ドライブ側のコイルは中のボビンに0.4mmのホルマール線を60回巻きました。インダクタンスは112μH位になりました。

対向する取り出し側は30回巻くことにしました。取り出し側にはショットキーダイオードによるブリッジ整流回路と平滑用のタンタルコンデンサーを取付けました。


ドライブ側コイル(左)と取り出し側コイル(右)

これで実験してみると、両側のコイルを密着させても5V 100mAが取り出せません。コイルの材料や作り方に大幅な改良が必要と思われます。

インターネットでこの用途のコイルを調べてみると結構多く販売されていることが分かりました。これらのコイルの大半は3μH~10μHのものが多く、動作周波数は100kHz以上のように思われます。

今回の回路を100kHz以上に高速化するには、まず高い周波数まで使えるFETに取り替える必要がありますが、インターネットで調べた回路例ではPMOSとNMOSのコンプリメントの回路は少なく、NMOS上下2段の回路が多いのも研究課題と思います。機会があればもう一度挑戦してみたいと思います。

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