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楽しいエレクトロニクス工作

第54回 スイッチトキャパシターフィルター (SCF)

JA3FMP 櫻井紀佳

半導体メーカーのMAXIMの製品の中にスイッチトキャパシターフィルター (以下SCFと表記) のICがあります。以前からこのICに興味があり、今回はこれを使ってフィルターを実験してみることにしました。


SCFを使ったRTTYターミナル (外観と内部)

MAXIMにはこのシリーズのいくつかのICがありますが今回はMAX297を使用しました。なお、SCFの原理と動作に関しては、多くの文献があるのでそちらを見て頂きたいと思います。

このICは基本的にLPFですが、SCFの特徴としてスイッチングクロック周波数の変化でそのLPFのコーナー周波数を自由に変更できます。また、このICは8次ローパスエリプティックフィルターで素晴らしい特性をしています。このICの代わりにOPアンプを使った場合でも、 同じ特性のフィルターを作ることが簡単にできるとは思えません。

このICのクロック周波数はコーナー周波数の50倍になっており、例えば3kHzのコーナー周波数を持つLPFならクロック周波数は150kHzになります。

このフィルターの特性がよいので、これを利用したRTTY用のBPFを考えてみることにしました。RTTYはアマチュア無線では、一般的に2125Hzと170Hzシフトした2295Hzが識別できるフィルターができれば実用になるのではないかと思います。キャリア周波数やシフト幅が異なる組み合わせもあるようですが、必要なら変更は可能です。

BPFといってもRTTYの場合は、帯域幅はあまり必要なく1点に近い狭帯域で間に合うと思います。SCFのLPFをBPFにするために一工夫することが必要です。そこで下図のようにLPFの出力をミキサーで一度シフトアップして周波数をずらせて、もう一度LPFに通せばコーナー周波数が残るBPFができることになります。

周波数シフトするためにミキサーを使いますが、以前からよく使っているCMOSのスイッチによるミキサーにしてみます。図のようにLPFの出力を、このLPFのコーナー周波数の2倍の周波数でスイッチするとこの周波数を中心としたLSBとUSBの信号ができます。この出力を元のLPFと同じフィルターに通せばコーナー周波数だけ残したBPFができることになります。これで2125HzのBPFができるので、シフトした2295Hzもクロックを変更して同様なBPFを作ります。

次の図はスイッチングしたミキサー波形です。

この図のミキサー出力の波形は分かり難いと思いますが、クロック周波数の上側のUSB信号と下側のLSB信号の両方が含まれています。この信号をSCFのLPFに通してコーナー周波数のLSB信号だけ取り出します。

RTTYの信号を取り出すフィルターだけの回路なら次の図のように比較的簡単にできます。

この図は2125HzだけのBPFで、従ってそのクロック周波数は50倍の106.25kHzです。また、スイッチによるミキサーの局発周波数はその2倍の4250Hzでミキシングしています。この回路の後側のLPFは前側のLPFと全く同じものを使います。

170Hzシフトした2295Hzのフィルターも回路は全く同じでクロック周波数を117.75kHzに、ミキサーの局発周波数を4590Hzにして作ります。これらの回路を通すと2125Hzと170Hzシフトした2295Hzの周波数を選択したシャープなフィルターを通した信号が取り出せます。

これらのフィルターとミキサーに必要なクロックの発生回路は次のようになっています。

必要な周波数は2125Hzの50倍とミキサー用の4250Hzなので発振回路の周波数を212.5kHzにして1/2で106.25kHz、1/50で4250Hzを取り出し、170Hzシフトした2295Hz用には発振周波数を229.5kHzにして同じ分周比で取り出します。

このクロックはロジック発振回路で作り、その周波数はf = 1/(2.2 x 330pF x R)で決まります。Rは6.48kΩと6.0kΩ位になるので2.2kΩと10kΩのVRで調整できるようにしました。2125Hzと170Hzシフトした信号をBPFから取り出したRTTYの信号をIC18Aで合成し、 CMOSの4046のPLLに入力して復調にしました。この回路はFSK等の復調によく使われているものですが、復調の後にIC18BとIC20Aで波形成形しています。その信号はQ3のエミッターフォロワーでDATA信号として出力します。

RTTYの復調は一応基本的なことはできますが、これだけでは飽き足らず、CW信号等のフィルターとしても使えるよう広範囲な可変狭帯域フィルターとしても使えるように周波数を可変にしたため全体の規模が大きくなってしまいました。周波数可変用のVRはスライド型のものがあったのでそれを使い、ユニット前面に細長い穴を開けて取り付けました。

全体の回路は次のようになりました。


ユニット全回路

RTTYを復調した出力は、ピンジャックへの出力と、さらにパソコンに取り込むための9ピンRS-232Cコネクターへも出力しています。

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