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楽しいエレクトロニクス工作

第57回 AMトランシーバー

JA3FMP 櫻井紀佳

前回グリッドディップメーターを作ったことで真空管にすっかりめざめ、昔を思い出して真空管1本の50MHzトランシーバーも作ってみたくなりました。最初はどなたが作られたのか分かりませんが、真空管3A5 1本だけの回路図を何回見直しても当時の傑作だと思います。

3A5は3極管が2本入った双極管ですが、直熱管でグリッドディップメーターに使った12AT7のようにカソードとフィラメントが別ではなく、フィラメント=カソードとなっています。この3A5は以前秋葉原に行った時、ジャンク屋で予備を含めてつい2本買ってしまったものですが、今でもたぶん売っていると思います。開局当時に、友人のものも含めて同じようなトランシーバーを何台も作ったことを思い出します。

ただ、このトランシーバーは完成しても自励発振に直接変調をかけているため、無線局の免許申請の際の保証認定は受けられず、送信機として免許を受けることができないため電波を実射できません。昔懐かしい実験だけに留めています。

このトランシーバーの回路図と完成した外観は次のようなものです。

送信部は、L1とC3およびC1のバリコンによる共振回路で3A5の半分を使った自励発振なので周波数安定度はもちろんあまりよくありません。

変調はカーボンマイクから入った音声信号を1:3のトランスT1で昇圧して3A5の残り半分で増幅します。この負荷はチョークコイルT2により、増幅された電圧が発振側の3A5のプレートにもかかっているため、この振幅でAM変調がかかります。この変調回路はハイシング変調と呼ばれていました。英語ではHysingになると思われますが、今になって改めて調べてみると手元にあるいくつかの辞書からはHysingの単語がでてきません。最初に考案した人の名前かも知れませんが何だったのでしょうか。

受信部は超再生方式で、回路図上側の送信時発振に使った3A5の半分の3極管だけで受信します。一般的な再生回路は、受信信号を正帰還するとゲイン、感度が上がりますがすぐに発振して不安定になります。この発振ぎりぎりの所で感度が良いため、この部分を早い周期のクェンチング発振の信号で何回も繰り返すのが超再生検波です。この回路はクェンチング発振と再生検波を同時にしているため自励式といわれています。

検波された信号は回路図下側の3A5の半分で増幅されクリスタルイヤホンに出力します。このアンプは送信時R6を通してイヤホンに出力されモニターとして使います。

真空管が貴重な時代、できるだけ少ない数の真空管でその機能を果たすための素晴らしいアイディアで回路を考えていた先人に頭がさがります。5球スーパーや6石ラジオのように素子の数で性能を誇っていた時代がありましたが、今ではトランジスターの多くがICに替わり素子が少々増えても気にならなくなりました。

今回の製作で、実は最大の難関が真空管のプレートにかける67.5VのB電池だったのです。このようなトランシーバーが流行った頃にはまだ真空管式のポータブルラジオがまだ残っており、67.5V等の乾電池が一般的に売られていましたが、もちろん今は販売されていません。


当時の67.5Vの乾電池と頭部電極 (左)

そこで3A5のフィラメントに使う3Vの乾電池から昇圧して疑似B電池を作ることにしました。当時の67.5Vの乾電池は羊羹のような形をしていたので形も似せて作ります。

その疑似B電池の回路は次のようになりました。

この疑似電源回路はCMOSのロジック回路で発振させ、トランジスターQ1~Q4で上下交互にスイッチさせてトランスをドライブします。3V : 67.5Vに昇圧するトランスの巻き線の出力をD2のブリッジで整流して直流を取り出します。この出力は乾電池に似せて特に定電圧制御しないことにしました。


今回作った疑似乾電池外観と内部ユニット

なお、当時の電源はフィラメント、ヒーター用がA電池、プレート用がB電池、グリッドバイアス用がC電池と呼ばれていました。

ここで困ったことが出てきました。カーボンマイクがないのです。昔の公衆電話にも使われていた低圧600Ωのカーボンマイクが手元になく、インターネットでも適当なものが見つかりません。あれほど大量の公衆電話のマイクはどこへ行ったのでしょうか。カーボンマイクは、周波数特性はともかく出力が大きいことが特徴です。仕方がないのでエレクトレットマイクとアンプで代用することにしました。そのため、ここでも疑似カーボンマイクということになってしまいました。


エレクトレットマイク回路

手元にあったエレクトレットマイクのユニットを使いOPアンプで増幅します。電源が3Vと低いので使用できるOPアンプがある程度限られますが、持っていたOPアンプNJM4580の電源規格は最低2Vとなっていて3Vでも使えそうです。600Ωのカーボンマイクでも電流は3V/600Ωで5mA程度流れますのでIC型でもあまり消費電流は変わらないようです。

全体の加工、工作はどうしてもバリコン中心になってしまいます。昔使っていたバタフライバリコンが手元になく、仕方がないのでジャンクボックスにあったFM放送用の3連バリコンの2ブロックを使うことにしました。

このバリコンとC3の27pFを使い、50MHzに同調するコイルを作ったところ、内径12mm、線径2mmの銅線で7tの空芯コイルになりました。なお、この銅線は室内配線用のVVFケーブル(Vinyl insulated Vinyl sheathed Flat-type cable)の外皮をむいたものです。また2tのコイルでアンテナ出力にカップルしています。


3連バリコン(左)、減速機構(右)

周波数の調整が微妙であり、バリコンに直接ツマミを付けたのでは調整困難となるため、減速機をつけました。一般的にはバーニアダイアルを付ければ良いのですが、手元に昔の減速部品が残っていたのでこれを使うことにしました。また、ダイヤルの目盛版もジャンクの中に残っていたものをツマミに接着剤で貼り付けて作りました。

バリコンと減速機構をシャーシー・ケースに取り付け、真空管のソケットも金具を使って近くに取り付け、できるだけ配線を短くします。その他の部品はほとんど空中配線になってしまいした。後は半導体回路に比べて部品の形が大きいので物理的に収まりやすい場所に取り付けることになりました。

組立てが完了したトランシーバーの内部は次のようになりました。

完成したトランシーバーの出力を、パワー計で測ってみると300mW程度でした。昔はこれでよく通信できたものだと改めて感心しました。出力端子にパワー計をつないだまま、IC-9100をAMモードで受信しモニターしてみたところ、一応正常に変調もかかっていることを確認しました。。

また、アンテナをつないで、毎週土曜日の21時から行われているJA2のAMロールコールを受信してみたところ、感度はどの程度か分からないものの、強い局は受信できました。

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