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Summits On The Air (SOTA)の楽しみ

その38 山岳移動用ギボシアンテナについて

JH0CJH・JA1CTV 川内徹

気が付けば今年2020年もあと2週間、山に行ける週末もあと2回しかなくなってしまいました。今年は何と言っても新型コロナウィルスに全世界の人々が振り回された年になってしまいました。歳をとると月日の経つのが早いと感じますが、2020年が瞬く間に過ぎていくのは年齢だけが理由ではないようです。外出自粛などで、やりたいことも我慢の日々で、家にこもる毎日、今年一年いったい自分は何をやってきたんだろうと思う方も多いのではないのでしょうか? 来年こそは自由に何も心配せずに外で活動できる年にしたいですね。まだ先になるのかな・・・・

さて、今回は私が山岳移動用として使っている装備のうちHFで使っているアンテナを紹介してみたいと思います。山岳移動では設備も電源も大きさや容量が限られますのでQRP運用が基本となります。(SOTAではバッテリーや太陽発電電池等での運用に限られるルールがあります)QRP運用ではあるものの、見晴らしの良い山頂からの運用になりますので、QRPでの制限は軽減されることになります。パワーは少ないけれどもロケーションは誰にも負けぬ最高の条件です。さて、このような状況で運用の成否の鍵となるのは何でしょう?・・・・もうお分かりですね、アンテナです。いかにアンテナの送受信の性能を改善するかがQRPの運用に必要なことになります。では「いいアンテナ」というのはどういうものでしょう? アンテナのSWRにこだわることも必要です。SWRはアンテナの性能を見極める、一つの重要な要素です。しかしSWRが落ちていても電波が飛ぶということではありません。お手持ちのダミーロードを考えてみてください。SWRはおそらく1.0に限りなく近いでしょう。でも、アンテナとしては全く意味がありません。ほとんどすべての電力がダミーロードの中で消費されるからです。では何に注目するかというとアンテナ効率です。これはアマチュア無線の資格試験の無線工学の中でも出てきますので大半の方がご存知のことなのですが、どれだけアンテナから効率よく送信機の電力が電波として自由空間に輻射されているかという点です。アンテナの効率を良くするにはアンテナの放射抵抗以外の抵抗成分(インピーダンス成分)、つまりアンテナの導体抵抗と接地型の場合は接地抵抗をどれだけゼロに近づけることができるかにかかっています。この点で私は半波長水平ダイポールアンテナは非常に高効率であると思っています。接地抵抗? ダイポールアンテナには関係ありませんね。導体抵抗? フルサイズのダイポールアンテナでは銅線などアンテナ素材の抵抗だけです。限りなくゼロに近いです。短縮コイルもキャパシタもありません。

HF帯の運用ですと、その大きさも、また水平であることから設置する広さが必要となってしまいますが、打ち上げ角などの条件を考えず、アンテナ効率の点だけ考えると、半波長水平ダイポールはおすすめです。さらにアンテナの効率が良いということは受信側でも同じメリットが得られ、感度も良くなることとなります。

私はこのようなことから山岳でのHFの運用には半波長のダイポールを使っています。しかし各バンド毎にフルサイズのダイポールを準備していたら荷物が増えるだけです。しかもアンテナに使われる銅線は結構重くなります。山に重量物を担いで登るのは体力を消耗するだけです。

そうです、ここでギボシアンテナが登場します。ギボシアンテナ(英語ではLink Dipole)はエレメントの途中にギボシ端子などで銅線の接続と切り離しができるようにしたもので、HFのそれぞれのバンドで半波長の長さとすることで、どのバンドでもフルサイズダイポールアンテナであることを実現しています。


だいたいの長さの寸法を下記の通り示しますが、これはアンテナ線材の太さや周囲の影響などもありますので参考程度としてください。これよりちょっと長い線材を使って少しずつSWRを追い込むといいと思います。ギボシ端子の接続部分の返しの長さも含んでいる線材自体の長さです。14MHzから28MHzまでの5バンドのギボシアンテナです。

● バラン-28MHz: 2520mm
● 28-24MHz延長部分: 510mm
● 24-21MHz延長部分: 560mm
● 21-18MHz延長部分: 640mm
● 18-14MHz延長部分: 1020mm

ギボシダイポールは連結を外した時にもアンテナの形状として、つながっている必要がありますので連結部分は、上の写真のように接続を外しても絶縁体でつながった状態になるようにしておきます。これは直接ギボシ端子にアンテナの線材の重さがかからないようにしておくという意味もあります。

アンテナの調整(銅線のカット)は波長の短いほうからやっていきます。波長の長いほうから調整すると、短いほうで銅線を切ると長いほうでも線長が切られているということになります。そうかといって長い側を全く近づけずに短い側を調整すると実際の運用では長い側のエレメントが至近距離にあるので一応、つないで調整していったほうがいいと思います。経験上、影響は少ないと思いますが。

つまり下図のように片側を圧着し、反対側を仮止めでアンテナ長を調整していきます。


アンテナの給電部にはバランを使っています。


ここも直接ギボシにアンテナの重さがかからないようにしておく必要があります。写真のようにOリングとサルカンを使っています。

アンテナの支柱はケーブルキャッチャーと呼ばれる工事用のツールを使っています。これは釣り竿よりも少し強度があることと、釣り竿よりも収納時に短くなること、そして先端に金具がついているため、バランなど給電部が取り付けやすく、山岳移動ではとても有用です。私は下の写真のように蝶ネジと蝶ナット、そして大きなワッシャーを使ってケーブルキャッチャーの先端に固定しています。


そして同軸ケーブルですが、これも結構な重量のあるアイテムです。銅がほとんどですから当然ですね。上に写っている写真の同軸ケーブルとは違いますが、私は同軸は1.5D-2Vという細いものを使っています。下の写真で少し見えているような細いものです。


ケーブル損失は太い同軸ケーブルより大きいですが、HFではほとんど影響はないレベルです。一方、同軸ケーブルが太く重いと支柱であるケーブルキャッチャーがしなってしまいますので、荷物を軽くするという理由だけでなく、同軸ケーブルもできるだけ軽量化することが必要なのです。

完成したギボシアンテナはこんな感じでSWRを追い込むことができました。まだまだ改善できそうですが現在はこのような状態で使用しています。

28MHz


24MHz


21MHz


18MHz


14MHz


ギボシアンテナ以外でも、アンテナはいろいろと皆さんの工夫の見せ所です。ぜひ良いアンテナができたり見つかったら教えてください。

SOTA日本支部では常時メーリングリストの申し込みを受け付けております。私宛のメール、jh0cjh599アットマークgmail.comでも結構ですし、SOTA日本支部のホームページの問合せのページから連絡を頂いても結構です。

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