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日本全国・移動運用記

第64回 長崎県対馬市移動

JO2ASQ 清水祐樹

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長崎県対馬市は、九州の最も北に位置する、離島にある市です。固定局による運用が少ないバンド・モードでの運用リクエストがありました。そこで、冬季でも交信できるサテライト通信や1.9MHz帯での運用を主な目的として、移動運用を計画しました。

運用の計画

対馬市への交通手段は、船と飛行機があります。船では移動に時間がかかるので、飛行機で移動して現地でレンタカーを借りる、1泊2日の計画を組みました。運用場所を決めるため地図を調べてみると、対馬には広い平地が少なく、人が住んでいる集落の多くは山に囲まれた地形のようです。海岸の周囲は切り立った崖に囲まれており、HF帯の運用はできたとしても、サテライト通信には支障がありそうです(写真1)。そのため、山の上にある公園で運用することにしました。


写真1 対馬市の海岸の一例。周囲は山で囲まれていることが多い。

運用の様子

公園の駐車場の一角で設営を行いました。この公園には展望台があり、昼間は観光バスで観光客がやってきます。そのため、観光バスの駐車の妨げにならない場所を確保しました(写真2)。この場所は頭上に木が伸びているため、八木アンテナのようなものを設置するには不向きです。今回はダイポールアンテナだけなので、頭上に木が少ない場所を選んでアンテナを設置しました。

北~東方向は下界を見下ろす絶好のロケーションで(写真3)、この方向を通過する衛星のダウンリンクは良好に聞こえていました。


写真2 運用場所の様子


写真3 公園内にある展望台から北方向を眺めた様子

1.9~50MHz帯はダイポールアンテナを使用しました。1.9MHzのアンテナは長さ80m近くになり、給電部と両端だけで固定すると、給電部の伸縮ポールとバランに大きな張力が加わり、また、両端を固定する強度を確保する必要があるため、バランス調整が難しくなります。そこで、エレメントの途中を木に引っ掛けて空中に浮かせるように設置しました(図1)。こうすると、伸縮ポールとバランに加わる張力が小さくなり、取り回しが容易になります。また、アンテナが張ってある場所を人や動物が通過して引っ掛けられる可能性も低くなります。
(注: V/UHF帯は、木の葉を通過する際に電波が減衰するので、このように木の陰に隠れる形でアンテナを展開すると、信号が弱くなります。)


図1 ダイポールアンテナの設置方法。長いダイポールアンテナを給電部と両端だけで固定すると、給電部と両端に加わる張力が大きいため、バランス調整が難しくなる。ダイポールアンテナの途中を木に引っ掛けて支持すれば、給電部と両端に加わる張力が小さくなって扱いやすい。

運用を開始しようとすると、スマホの電波の入感状況が弱く、車内からは音声通話や動画付きニュースサイトの閲覧は困難な状況でした。文字だけのサイトは安定して接続できたので、まずはこの状態で運用を開始しました。荷物を開梱してアンテナを設置すると、ちょうどサテライトのFO-29が来ました。序盤こそ猛烈なパイルアップになったものの、この衛星は1パス当たりの時間が長く、ダウンリンクも安定しているので、中盤以降はCW・SSBともに適度なペースでQSOできました。

HF帯の運用は10MHz帯から始めました。局数が多い1エリアは強力に入感しており、すぐにパイルアップになりました。しかし3エリアより西の近距離は信号が弱く、約30分、51局できたところでCQが空振りになりました。続く14MHz帯は8エリアの局が圧倒的に強く、1エリアの強力な局が時々聞こえる程度でした。このような場合、18MHz帯は国内が全く聞こえない場合もあります。それでもあきらめずに18MHz帯にQSYすると、コンディションが上がってきたようで1エリアが聞こえてきました。しかし、信号がフワフワした、いわゆるQSBを伴う状態で、何回もレポートを送り直して交信成立することが多くなりました。電離層の正規伝搬だけでなく、スキャッターと呼ばれる、大気中で電波を散乱する層が発生していたようです。そして28MHz帯まで、日本海側の0・1・7エリアの信号が強い局と交信できました。ただし、50MHz帯はダイポールアンテナで、信号が強くなる方向に回すことができず、交信には至りませんでした。

近年、7MHz CWで伝搬のコンディションが悪く、私の信号が弱くてなかなか聞こえないという感想をいただきます。離島移動は、十分に調整したダイポールアンテナ(アンテナ単独でSWR≒1.0)と出力50W運用で、移動局としては、かなり強力な設備です。それでも聞こえないとなると、運用する時間帯をうまく選択する以外に、打つ手がありません。7MHz帯の国内遠距離に対する伝搬は、一般に昼休み前後の時間帯はコンディションが悪く、夕方にかけて信号が強くなる傾向があります。15時過ぎからCWの運用を開始して、それなりにQSO数は伸びたものの、遠距離が強力に聞こえることは少ない感じでした。

HF帯の運用中には、前回の記事で紹介した通り、Oblique propagation frequency summaryで、国分寺(東京)と山川(鹿児島)のデータを見ながら、運用周波数選びの参考にしました。夜は厳原地区のホテルに宿泊しました。市街地にはコンビニエンスストアがあり、食事の調達に困ることはありませんでした。

運用した2日間を通して、雲がほとんど無い快晴の天気でした。風がほとんど無かったため、三脚に固定したサテライト用のクロス八木アンテナが倒れそうになることは一度もありませんでした(写真4)。


写真4 レンタカーの車内と、サテライト用のアンテナ

結果

運用日別のQSO数を表1に示します。1.9MHz帯と3.5MHz帯のQSO数が多く、需要が多かったと思われます。12月6日は朝6時頃からアンテナを設置して、これらの周波数帯で多くのQSOができました。


表1 運用日別のQSO数

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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