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日本全国・移動運用記

第20回 広島市移動

JO2ASQ 清水祐樹

政令指定都市には、移動運用が難しい市(区)が多くみられます。建物などが密集して、空きスペースが確保しにくいことが、その主な理由です。また、京都市、神戸市、広島市のように、市街地のすぐ近くに山があり、地形的な理由で運用が困難という場合も見受けられます。

そこで、以前から移動運用のリクエストが多かった、広島市での移動運用を行いました。山に囲まれている地形で、移動運用の場所を確保することが難しいことが予想され、事前に様々な調査をして本番に備えました。V/UHFの運用に適した場所が少なく、1.9/3.5MHzの運用がほとんど行われていない区もある様子でした。

山に囲まれている東区、海岸付近に小高い山がある南区

初日は東区から運用を開始しました。東区は山に囲まれた地形で、広い平地は少ないという印象を持っていました。実際に運用できそうな場所かを判断するには、地図やカーナビを見るだけでは限界があり、まずは現地で車を停めて、周囲の地形や建物などの様子を探ることにしました。
最初に見つけた駐車場は、周囲が多少は開けていたものの、大型ショッピングセンターの空調ダクトが近くにあり、そこから発せられるものかは断定できませんが、HF帯で人工的なノイズが強烈に混入してきました。

2017年に入ってから電離層の状態の悪い日が続き、昼間に7MHzで交信することが難しい日も珍しくありませんでした。15時を過ぎて7MHzの近距離が次第にスキップしていく中、このノイズで交信がかなり厳しい状況でした。

南区は、まずは海沿いに行ってみました。駐車できそうな公園等があっても、周囲は高い建物、高速道路の高架、さらには自然の山に囲まれており、電波が飛びそうな場所が見当たりません。しかし、海岸付近に小高い山がいくつかあります。車で登れそうな山を見つけて行ってみると、展望の良い駐車スペースがあり、ちょうど夕日がきれいに見える所でした。眼下には市街地や工業地帯の夜景、橋を行き来する車の流れが良く見えます。ここなら電波も飛びそうです。

夕暮れの夜景を見ようと訪れた車が頻繁に出入りする中、片隅でひっそりと運用。V/UHFの電波の飛びは満足でした。日没後、空が暗くなって見える景色も限られてくると、来訪者も少なくなって静まり返りました。

リクエストが多かったローバンドを本格運用するため、東区に戻りました。到着直後の気分が高まった状態からは落ち着き、冷静に周囲の地形を探ってみると、高台にある公園を見つけました。深夜は閉鎖されるとの表示がありましたが、運用の予定時間には重ならず、ローバンドのアンテナを展開して多くの局と交信できました。


写真1 南区での運用の様子

移動運用が最も難しい中区

2日目の午前中は、西区と中区での運用を計画しました。西区は海沿いに空き地や公園があり、周辺の建物や通行人を気にしなければ、運用場所の確保は容易でした。

しかし中区の運用場所探しが難航しました。海岸に行けば、港や公園があって何とかなるだろうと楽観したのが大誤算。海岸付近は住宅地に工業地帯が隣接しており、住宅地は駐車スペースが全く見当たりません。工業地帯は立入禁止となっており、おまけに一方通行が多く、一度通り抜けると元の場所に容易に戻れない道もあり、思った通りの移動運用が始められない焦りが出てきました。

市街地に近い側にとりあえず行ってみると、細長い駐車場を確保。周囲は建物や高架に囲まれているものの、何とか運用はできそうでした。中区のローバンドもリクエストを頂いていたのですが、午前9時台では1.9MHzも3.5MHzも全く聞こえず、この運用は次回に持ち越しとなりました。

午後は佐伯区と安佐南区を計画しました。電離層のコンディションが悪く、HFで交信できる時間帯が限られているため、コンディションが良いうちに2つの区を行き来して運用しようと考えました。

佐伯区と安佐南区の境界付近は住宅地の開発が進んでおり、古いカーナビで山林になっている場所には、既に居住を始めている家もありました。住宅地には駐車場付きの公園があり、駐車スペースには困りませんでした。ただ、山を切り開いた地形で起伏があるため、方角によっては電波が飛びにくい状況もあるようです。

夜は安佐北区に移動しました。大部分が山間部であり、広い平地はあまり見当たりませんでした。この区あるサービスエリアは高速道路で通過する際によく利用していました。しかし、この場所は高い山に接しており、電波の飛びは決して良いとは言えません。河川敷のちょっとしたスペースでローバンドを運用、さらには川沿いの伝搬で南区の局と1200MHzで交信できたことが特筆ものでした。

漁港、工業地帯の印象が強い安芸区

安芸区も山に囲まれており、さらに海にも接しています。平地はごくわずかで、運用場所を探すのに手間取りました。隣接する安芸郡も同じような地形で、こちらのリクエストも多くありました。海岸沿いで駐車場所を見つけました。この場所は近所の人の憩いの場所にもなっているようで、犬の散歩をする人や、近くでゴルフの素振りをする人もいました。

しかし、電離層のコンディションは相変わらず上昇せず、午前中は7MHzで東日本の局からポツリポツリと呼ばれる程度でした。3日間で広島市の8区全てで移動運用したものの、思うように交信できなかったことが心残りでした。


写真2 安芸区での運用の様子

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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