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日本全国・移動運用記

第85回 夏の北海道・十勝方面移動

JO2ASQ 清水祐樹

2022年の4月末から5月初めの大型連休に北海道で移動運用を行い、その様子を6・7月号の記事で2回に分けて紹介しました。

北海道は市町村の数が多く、その時に行けなかった市町村でも運用したいと考え、引き続き8月の夏休みにも移動運用を計画しました。今回は道央方面から、道東にあたる十勝地方の一部にも移動範囲を広げました。

1日5か所程度の予定で、HF帯とサテライト通信の運用時間を確保

移動の計画として、札幌周辺の町村で最近運用していない所が多かったので、その地域を重点的に回るように予定を組みました(図1)。


図1 今回の移動ルート

1日目(8月11日)~2日目(8月12日) 到着時は大雨、夕張郡の3町と夕張市を1日で回る

今回は、夏休みのためフェリーが満員・満室で、船内での運用場所の確保が困難であったことから、フェリーでの/MM(マリタイムモービル)運用は行いませんでした。北海道に到着して最初の運用地は、苫小牧から東に進んだ勇払郡(胆振)むかわ町でした。到着時には大雨で、靴底が水に浸かるほど浸水している場所がありました。野生動物との遭遇を避けるため、人家に近い運動公園で、1.9~7MHz帯とサテライトを運用しました。

翌日は、夕張郡長沼町-夕張郡由仁町-夕張市-夕張郡栗山町-空知郡(空知)南幌町-岩見沢市 の順で運用しました。いずれも運用リクエストが比較的多かったところです。地図上では隣接していても、隣の町の運用地点まで20km以上になる場合があります。また、コンビニエンスストアなどが存在する地域が限られているので、食料の確保に困らないよう、事前の調査・準備をしておきました。

運用場所の確保は、次のように考えました。長沼町・由仁町・南幌町は大部分が平地で、川の堤防上など周囲に障害物の無い場所が容易に確保できます。栗山町は山が近くなるので、南幌町の境界に近い、川沿いの開けた場所で運用しました(写真1)。夕張市は山に囲まれているので、広い駐車場があり、衛星が来る方向にできるだけ山が無いような場所を選んで運用しました。


写真1 夕張郡栗山町での運用の様子

12日は天候が回復し、涼しいとまではいきませんが不快感は感じない暑さで、雲の切れ間からは日差しが強烈に感じられました。HFのコンディションはそこそこで、28MHz帯で2エリアが聞こえる時間帯もありました。50MHz帯は交信に至りませんでした。

3日目(8月13日) 札幌市で、前回運用していなかった4つの区へ

翌日は、札幌市で前回運用していなかった区に行くことにしました。夏休み中で市街地は渋滞が予想されるため、朝一番で市街地に近い南区で運用し、そこから清田区・厚別区の郊外に抜けて、東区へは高速道路を利用して移動時間を短縮するルートを考えました。

最初の南区で運用中に、HF帯のコンディションが上がってきて、14MHz帯で近距離が強力に入感していました。この後、清田区への移動に時間がかかること、衛星の時間が決まっていて時間に制限があることから、南区での運用は14MHz帯までで打ち切り、次の清田区に向かいました。

清田区では28MHz帯で22QSOなど、伝搬のコンディションが良い感じでした。といっても、激強というほどではなく、50MHz帯は聞こえませんでした。続く厚別区では、昼休み時間帯でコンディションが低下した感じで、10MHz帯でも近距離がカスカスになってしまいました(写真2)。午後からの東区、三笠市はコンディションの変化が激しく、28MHz帯までの各バンドでそれなりに交信はできるものの不安定で、10MHz帯や14MHz帯で多くの交信ができました。


写真2 札幌市厚別区での運用の様子

4日目(8月14日) 樺戸郡、空知郡(空知)へ

樺戸郡の3町と、空知郡(空知)で未運用だった残りの2町である、奈井江町と上砂川町で運用する計画です。樺戸郡の3町は石狩川の西側に広がっていて、川に近い場所には広大な平地があります(写真3)。

1日に5か所で運用する予定で、しかも上砂川町から翌朝の運用場所までは移動に2時間近くかかることが予想されたため、早めの終了を計画していました。1か所あたりの運用時間は90分程度しかありません。最初の月形町では、14MHz帯で多くの局から呼ばれて、そのまま時間切れでした。続く浦臼町も18MHzに上がった所で時間切れ。新十津川町は21MHz帯まで行けました。コンディションは良い感じで、このまま50MHz帯まで上がったら、かなり多くの交信ができたと思われます。

奈井江町も川を渡ってすぐの堤防上で運用し、山間部にある上砂川町では、町の中心部に観光客向けと思われる駐車場を発見し、そこで運用しました。この日は夏休み中の平日で、公共施設なども夏休みの所が多く、観光客の姿はあまり見かけませんでした。

上砂川町では、7MHz帯の1回目ではコンディションが悪くてあまり呼ばれず、日没に近づいた時間に再度運用すると多くの局から呼ばれ、7MHzだけで70QSOできました。


写真3 樺戸郡浦臼町での運用の様子

5日目(8月15日) 占冠村を経て、河東郡、足寄郡へ移動

翌朝は勇払郡(上川)占冠(しむかっぷ)村で運用を開始しました。ここは山間部にある村で、広い平地はあまり見当たらないのですが、村の中心部に近く、南側がそこそこ開けている空き地を以前の運用で見つけており、その場所で運用しました。1日で6か所での運用を計画していたので、この日も1か所での運用間は90分ほどになり、占冠村のHFは7~14MHzだけを駆け足で運用しました。

道央自動車道を利用して、河東郡音更町の公園へと向かいました(写真4)。この間の移動距離は80kmに及びました。ここからは、衛星が来る合間の短時間で7MHz帯と10MHz帯を駆け足で運用して、呼ばれなくなったらすぐに次の場所に移動するようになりました。

国道241号を北上して上士幌町、足寄町で運用しました。上士幌町もリクエストが多かった所ですが、時間の都合で短時間運用になってしまいました。足寄町は日本で最も面積が広い町です。町の多くは山地であり、広い場所は町の中心部に限られています。町の中心部に近い公園の駐車場で運用しました。


写真4 河東郡音更町での運用の様子

足寄町の次は、その北にある陸別町に移動しました。隣の町といっても、町の中心部間の移動距離は30km近くあります。陸別町ではコンディションが非常に良く、14MHz、18MHzと順に上がっていくと、各バンドで猛烈なパイルアップになって、いつ終わるかも見当が付かなくなりました。結局、28MHz帯で41QSOできた時点で、4時間近く連続で運用したことによる疲れも出てきて、ここで打ち切りました。コンディション的には50MHz帯でも交信出来そうな雰囲気でした。

夜には激しい雨が降り始め、翌朝の運用予定地である幕別町まで80km以上の距離を移動しました。北海道の一般道路は、市街地では制限速度40km/hの地域が多く、交通量も多かったため、途中の休憩も含めて2時間以上かかりました。

6日目(8月16日) 最終日は、大雨で通行止めに

中川郡(十勝)幕別町の公園で一夜を明かしました。夜中に激しい雨になり、雨の音で何度も叩き起こされました。最終日で時間の延長はできず、移動距離も長いため、午前5時過ぎから運用を開始しました。さらに雨が激しくなり、水しぶきをあげながらの走行となりました。

豊頃町の堤防上の空き地(写真5)、その次は更別村の公園と移動して、7~14MHz帯とサテライトを運用しました。隣接している市町村であっても、例えば豊頃町から更別村への移動は40km近くあり、途中は農道で急カーブや路面状況の悪い場所も多く、さらに大雨で冠水している場所もあって、運転は非常に疲れました。


写真5 中川郡(十勝)豊頃町での運用の様子

中札内村に移動する途中で、道東自動車道が大雨で通行止めになったことを知りました。一般道路も通行止めになっており、土砂崩れも発生しているとのことです。この地域では稀にみる大雨と報道されていました。

中札内村の次は、沙流郡日高町に道東自動車道で移動することを予定していました。日高町は南北に分かれた2か所の飛び地になっており、北側の地区には道東自動車道で短時間で移動できると考えたからです。しかし、この状況では日高町の北側の地区に行く手段が限られていました。

現実的に考えられるルートは、南下して広尾町と浦河町を結ぶ国道236号(天馬街道)経由です。帯広広尾自動車道を南下して広尾町に向かう途中、天馬街道が通行止めになったという情報が入りました。そうなると、通れる道は最後の1か所、えりも町方面を海岸に沿って走る国道336号(黄金国道)のみです。

インターネットで検索すると、黄金国道は道が険しく通行止めが多い区間とのことで、ここが通れなくなると、道東から札幌方面に行く手段は実質的に絶たれると話題になっていました。自衛隊の車や工事車両も含めて道路が混雑してきました。

中札内村から日高町へ、渋滞や信号待ちもある一般道路を4時間近くかけて、なんとか日高町の南側の端に到着しました。ここで運用を再開したところ、あまりの疲労でCWの符号が乱れたり、SSBのしゃべり方がおかしかったりしたと、心配して連絡を下さった方もいたほどです。

コンビニの食料品の棚も空きが目立つようになっていたところ、何とか食料を確保して体力は少し持ち直しました。平取(びらとり)町と日高町の境界付近に近い堤防上に到着して、平取町で1.9MHz帯まで含めた最後の運用を行い、雨が降り続く中、フェリー乗り場へと向かいました。

結果

運用日、QTHごとのQSO数を表1に示します。HF帯のコンディションが5月初めよりも良かったことと、昼間に使える衛星が多くサテライトでのQSO数が多かったことで、4日連続で1,000QSOができました。



表1: 運用日・QTH別のQSO数。1.9~50MHzはCW、サテライトはCW/SSB。

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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