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日本全国・移動運用記

第57回 アマチュア無線オンラインレッスンを開催

JO2ASQ 清水祐樹

この連載でも紹介している通り、毎年4月末から5月初めの大型連休には、長期間の移動運用に出掛けていました。しかし、2020年は皆様ご承知の通りの事情で、移動運用ができなくなりました。

STAY HOMEの状況下でも、アマチュア無線を楽しんでいただく機会を提供したいと考え、その一環として、アマチュア無線オンラインレッスンを開催しました。

Zoomのオンラインミーティング機能を使用

インターネット上で、映像と音声を使って離れた相手とのコミュニケーションを可能にするオンラインツールが、近年では盛んに利用されています。「オンライン飲み会」「オンライン帰省」という言葉もよく聞かれます。この機能を使って、オンラインレッスンを実施しました。

使用したツールはZoom(https://zoom.us/)です。操作が簡単、機能が豊富、通信の安定性が高いといった特徴があります。自分のPCの画面を参加者に見せながら、映像と音声を使ってレッスンを行いました(図1)。

Zoomの無料プランでは、3人以上のミーティングは40分までの時間制限があります。そこで、有料プランで時間制限を24時間とすることで、40分以上のミーティングが開催できるようにしました。ホスト(主催者)が有料プランであっても、ホスト以外の参加者は無料で利用できます。

参加者には、ホストから「招待状」(URL等を記載したテキスト)を送付します。そのURLにアクセスすれば、ミーティングに自動的に参加できます。


図1 オンラインレッスン開催中の画面の様子(CW入門)

レッスンの内容と参加の申し込み

レッスンの内容は、筆者が詳しい分野であり、かつオンラインでの対応が容易なテーマとして、次の3テーマとしました。
1. CW入門
2. D-STAR解説付き交信(画像伝送も対応OK)
3. 無線設備構築の相談

参加の申し込みは、Googleフォーム(https://www.google.com/intl/ja_jp/forms/about/)で作成したアンケートを使用しました(図2)。入力された内容は、編集できない形で自動的に集計・記録ができます。このフォームを採用した理由は、Eメールで直接申し込みを受け取った場合は、初めての相手からのメールを迷惑メールと誤判定されたり、メールを誤って削除・上書きしたりする可能性があると考えたためです。

申し込み時に、例えば「CWのスキルはどのくらいですか」といった質問を設けて、参加者それぞれに合わせた資料をPowerPointで作成し、発送しました。


図2 参加申し込みフォーム画面の一例。記述式テキスト(必須/選択)、チェックボックス、プルダウンなどの記入形式を自由に設定できる。

レッスンの様子: CW入門

CW入門は、電鍵を操作することでCWの音を出して、その音をPC等のマイクで拾って、Zoom経由で当方にお聞かせいただくことで、模擬交信を行いました。

CQを出す側と、それに応答する側の役割を交代して、それぞれの模擬交信を行い、時間に余裕があれば599BK方式のショートQSOに加えて、QTHやNAMEを送信するラバースタンプQSOのパターンも実施しました。画面上に参加者のコールサインも含めた電文の例を表示しておき、画面に表示された通りにCWを打つだけで交信ができるようにしました(図1)。

最初の模擬交信で、トラブルが発生しました。こちらで送出したCWの音が、相手には良く聞こえないとのことです。音量を調整しても、なかなかうまくいきません。どうやら音量レベルの自動調整により、マイクから離れた音を雑音として認識し、聞こえにくくなる機能が働いているようです。そこで、CWの音はスピーカーではなくヘッドホンから出すようにして、ヘッドホンをPCのマイク(ヘッドセット)に近付けると、適度な音量でCWの音を送出できました。

レッスンの様子: D-STAR解説付き交信

「ハンディ機1台で開局したばかり。近所の方にお願いして付属のホイップアンテナで交信できることを確認しただけ…。D-STARのレピータは近くにありそうだけれど、使い方が分からない…。」

このようなビギナーの方のために、図で分かりやすく示したD-STARの説明資料を作成し、資料を見ながら実際に交信する形でレッスンを進めました(図3)。


図3 D-STARの説明資料の一例。設定方法をオンラインで説明しながら、D-STARで実際の交信を行った。

無線機を操作しながら、D-STARのレピータを設定していただきました。まず、こちらから参加者の最寄りレピータにカーチャンクをすると、私のコールサインが参加者の無線機に表示されました。

「では、RX→CSを長押しして、こちらを呼んでみてください。」
「あれ? 聞こえてきませんね…」

状況をお聞きすると、室内から付属のホイップアンテナ使用では、レピータに電波が届かない様子でした。Zoomに接続中のスマホと一緒に、ハンディ機をベランダに持ち出していただくと、安定した交信が可能になりました。

レッスンの様子: 無線設備構築の相談

「HF帯で移動運用をしたい」との申し込みがあり、移動運用ですぐに役立つ実践ノウハウを盛り込んだ資料を作成しました(図4)。

機材の説明では、画面上の図や写真にマウスで描き込む機能を利用しました。このメーカーのこんな製品があるとお話しすると、すぐに検索して「オークションに**円で出ています。」と他の受講者に情報を展開していただける方もおられました。一方通行の講義だけではなく、参加者が互いに情報を共有することも、オンライン講義では容易にできます。


図4 無線設備構築の相談で使用した説明資料の一例

オンラインレッスンを終えての感想

インターネット接続上の大きなトラブルはなく、どのレッスンも充実した内容となりました。「個人の理解度に合わせて指導できる」点も良かったと思います。

今後取り上げて欲しいテーマとして、「FT8」「FreeDV」「リフレクター」「検索してもなかなか出てこない交信のルール」などの要望がありました。また、開催の時期にはWebカメラが入手困難になっており、「顔出しで参加したかった」とのご意見もいただきました。

筆者がCWを始めた頃、送受信は独学で習得できたものの、実際の交信方法が分からなくて困っていました。年に1回開催されていたCW勉強会に参加して、ようやく自信を持って運用できるようになったことを、今も鮮明に記憶しています。講習会の参加には、時間や地理的な制約による困難を伴うことがあり、気軽に受講できる機会を設けたいと考えていました。

アマチュア無線の楽しさを伝えるには、仲間が集まったり、交信を体験したりするだけに限らず、知識や技術を伝授する機会が重要と考えています。オンライン会議は、それを実現する強力なツールになることが実証できました。

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