Monthly FB NEWS 月刊FBニュース 月刊FBニュースはアマチュア無線の電子WEBマガジン。ベテランから入門まで、楽しく役立つ情報が満載です。

日本全国・移動運用記

第65回 沖縄県宮古島市移動

JO2ASQ 清水祐樹

こちらの記事を印刷する(PDF 形式)

沖縄県宮古島市は、全域が離島にある市です。2020年12月号で紹介した石垣市と同様に、本州からの距離が遠いため、バンド・モードによっては交信が難しい市の一つです。宮古島は、観光地として有名な場所でもあります。そこで、混雑する可能性が低く、台風も来ない12月末を狙って移動を計画しました。

運用の計画

宮古島には自分の車を持ち込むことができないので、機材を船便で事前に郵送し、現地でレンタカーを借りて運用しました。レンタカーはガソリン車を選択しました。一般に、ハイブリッド車は12Vバッテリーの容量が小さく、エンジンを止めた状態で無線機に電源を供給することが難しくなります。

宮古島には海岸に面した公園が多く、高い山が無いため、運用場所の選定は容易です。景色の良い場所では観光客が多くて混雑すると考え(写真1)、観光客が来ないと思われ、さらにアクセスが容易な穴場スポットを候補地としていくつか挙げました。


写真1 宮古島の観光地として有名な、伊良部大橋。無料で通行できる橋としては日本最長。

アンテナの設置では、沖縄ならではのトラブル発生

1日目の運用開始は、夕方からになりました。まず、地図で見つけた広い公園で運用を開始しました。宮古島にはハブがいないので、草むらの中を思い切り駆け抜けてアンテナを設置できます。しかし、敷地が変則的な形をしており、人通りも多かったため、長いダイポールアンテナを、通行の妨げにならないように設置するには時間を要しました。それでも、北東側の本州方向には障害物が無く、周囲にノイズ発生源が見当たらないため入感状況は良好で、1.9MHz帯で22局とQSOできるなど、まずまずの成果が得られました。

2日目の朝は、地図で見つけた、別の海岸の駐車場に行ってみました。冬の沖縄は日の出が遅く、午前6時では完全に真っ暗です。周囲の状況が全く見えない中で、懐中電灯を頼りに1.9MHz帯まで対応できる、長さ80mのダイポールアンテナの設置をを開始しました。

長いダイポールアンテナは、2021年1月号で説明した通り、途中を木に引っ掛けて設置しました(写真2)。沖縄の海岸では、「アダン」「モンパノキ」という植物をよく見かけます。アダンとは、葉っぱが長さ1m以上に達し、繊維を利用するために使われる植物です。この葉っぱにアンテナを引っ掛けたところ、葉の縁にあるトゲが指に刺さって、負傷してしまいました。そこで、触っても安全なモンパノキに着目しました。葉っぱが肉厚で大きく、表面に柔らかい毛が生えているモンパノキにダイポールアンテナを引っ掛けて設置しました。


写真2 2日目午前の運用場所の様子。写真左側にある「モンパノキ」は、葉に多くの水分を含んでおり、1.9MHz帯のダイポールアンテナを引っ掛けるとSWR最小となる周波数が低い側に変化した。

ところが、SWRを測ると、1.7MHz付近でSWRが最小で、1.9MHz帯ではSWRが高くて使用不可でした。無線機やアンテナアナライザが故障したのではないかと、ヒヤリとしました。

電気的な接続を点検しても問題は無く、ダイポールアンテナの両端を折り返して短くするとSWR最小の周波数が高くなることを確認しました。長さ80mのアンテナの両端を行き来して調整すれば、1.9MHzでのSWRを下げることはできそうです。しかし、その調整には時間がかかります。日の出を過ぎると1.9MHz帯のQSOができなくなってしまうので、このままの状態でIC-7300の内蔵チューナーでSWRを下げて運用しました。それでも、SWRは3以下には下がりませんでした。無線機が故障する可能性があるため、このような使用方法は避けたいところです。

モンパノキをインターネットで調べると、葉に水分を多く含んでいるとありました。これが導体に近い性質を示してSWRが変動したと推測しました。そこで、2日目の午後と3日目は別の場所に移動し、アダンとモンパノキを避けて、支柱や枯れ木にアンテナを引っ掛けるようにしたところ、アンテナは正常に動作しました(写真3)。



写真3 2日目の午後から3日目の運用場所の様子

2日目の午前中は伝搬のコンディションが悪く、のんびり昼食をとりながら電離層観測データを眺めていたところ、弱いEスポ(スポラディックE層)の気配を察知しました。すぐに運用場所に移動し、28MHz帯で試しにCQを出してみたものの、全く聞こえないとのことでした。さすがに季節外れのEスポは弱く、無理があったようです。18MHz帯に移ると一気にパイルアップになり、その後は信号の浮き沈みを伴いながら、夕方まで10~28MHz帯の各バンドを巡回して交信数を積み重ねました。国内QSO向けに北東側が海に面した場所を確保したため、各バンドとも受信状態は良好でした(写真4)。


写真4 運用場所から北東側を眺めた様子

宮古島市は7MHz帯のリクエストが多くありました。しかし、7MHz帯での国内交信は非常に難しく、伝搬特性をよく知った上で対応することが重要です。昼間はほとんど聞こえず、朝と夕方の限られた時間しか交信のチャンスがありません。

結果として、7MHz帯の国内交信は、朝の7~9時台と、夕方の18時台だけしかできませんでした(なお、17時台はサテライト通信を重点的に運用したので、この時間帯も7MHz帯の国内交信に適している可能性があります)。7MHz帯で宮古島市Wantedの局が数百局いると仮定すると、この限られた時間帯に国内向けサービスをしなければならないので、短期間の運用では需要は満たされないでしょう。昼間に7MHz帯をワッチして「宮古島市が偶然聞こえる」確率は、ものすごく低いはずです。

朝のベストタイムを過ぎると、7MHz帯の信号が急に弱くなって10MHz帯が強くなり、夕方は入感する地域が次第に遠くなって国内が聞こえなくなり、3.5MHz帯が安定して聞こえるようになりました。沖縄での3.5MHz帯は、3.509MHzより低い周波数に常時強力なノイズが出ていたり、CWやRTTYの周波数に海外のSSBが混信したりするので、周波数の確保に苦労しました。

宮古島にはD-STARのレピータがあります。ホテルの客室でも、ハンディ機とホイップアンテナでレピータからの信号が聞こえました。東京・大阪以外で、このような場所は少なく、貴重な体験でした。

結果

QSO数を1時間単位で集計した結果を表1に示します。伝搬があっても運用のタイミングが合わない場合があるので、QSOが無い周波数帯=伝搬が無い、とは限りませんが、朝早い時間にはHF帯のハイバンドでの交信は難しく、午後から多くの周波数帯が聞こえる傾向が分かります。また、早朝の1.9MHz帯と3.5MHz帯でどこまで交信できるかは、前例が少なかったのですが、沖縄が日の出以前である午前6時台には、ある程度は交信できることが分かりました。


表1 運用日・時間帯(1時間単位)ごとのQSO数。3.5~10MHz帯はCWとRTTY、430MHz帯はD-STAR(宮古島430レピータ経由)、それ以外はCW。

日本全国・移動運用記 バックナンバー

2021年2月号トップへ戻る

次号は 12月 1日(木) に公開予定

サイトのご利用について

©2024 月刊FBニュース編集部 All Rights Reserved.