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日本全国・移動運用記

第27回 奄美大島移動

JO2ASQ 清水祐樹

奄美大島は九州と沖縄本島の間の、沖縄寄りに位置する島で、5つの市町村から構成されています。バンド・モードによっては移動運用が少ない市町村もありそうです。3連休があり、台風の影響が少ないと思われる11月に移動運用を計画しました。

奄美大島は、どんな場所?

奄美大島はとても大きな島で、スピードを出せない幹線道路もあるため、市町村間の移動に時間を要します。猛烈なパイルアップも予想され、どの程度の運用時間を確保すれば良いかの予想が難しいです。今回は1日最大3か所の運用としました。

奄美市の中心部には商店街・繁華街があり、夜遅い時間でも賑わっています。一方、人口が少ない地域では商店が少なく、夜に食事をしたり、現地で生活物資を調達したりするには、奄美市の中心部近くへ、場所によっては車で1時間近くの移動が必要です。

島の地形は起伏が多く、海岸線は複雑に入り組んでいます。広い平地は、島の東側(奄美市の飛び地)以外では見当たりません。海岸で運用する場合でも、各運用場所の写真に示す通り、山に囲まれていることが多いです。温暖な気候で、雨により若干冷え込んだ日以外は、全体を通じて快適に過ごせました。

奄美市での運用

最初の運用は、荷物の受け取りや宿の関係もあり、奄美市から始めました。島で唯一のJCCであり、その意味で多くの局から呼ばれることが期待されます。

奄美市の市街地は東・南・西方向とも高い山に囲まれ、北側の一部だけが海を見渡せる地形です。市街地から本州側、つまり北~北東に電波を飛ばすには、山でブロックされて難しそうです。市街地から山を一つ越えると広い運動公園があります。しかし、ロケ的にあまり開けておらず、さらにプロ野球のキャンプが行われており、近くでの運用は難しそうでした。さらに西に向かい、周辺が少し開けた海岸で運用しました。背の低い木が数100mに渡って並んでおり、ワイヤーアンテナの端を木に結び付けて固定できました(写真1)。


写真1 奄美市での運用の様子

最初の運用は10MHzでした。このバンドは、昼間は国内の中~遠距離が安定して入感するため、本州から距離が離れた離島での運用では、多くの局から一斉に強力な信号で呼ばれる面白さがあります。電波伝搬のコンディションはあまり良くないようで、4エリア、3エリアから遠方は強力に聞こえても、6エリアの九州本土は北部がカスカスで聞こえる程度でした。その後、高い周波数帯に順にQSYすると、21MHzまでは本州が瞬間的に聞こえたものの、24MHzと28MHzは鹿児島と沖縄だけが聞こえました。夕方の7MHz CWは1時間以上にわたってパイルアップが続きました。

奄美市の後は、一旦撤収して宿のチェックインを済ませ、龍郷町に移動しました。北側が海に面して、柵に沿ってアンテナを展開できて、さらにトイレがある場所を発見しました。21時を過ぎるとローバンドの遠方への伝搬が弱くなり、QSBも激しく、コールされた時にははっきり聞こえた信号が急に消えることもありました。信号の浮き沈みのタイミングにうまく合わせて交信するのが、ローバンドの遠距離QSOの面白さです。この場所では、日を改めて昼間にも運用しました(写真2)。海の色が非常にきれいな場所でした。


写真2 龍郷町での運用の様子

運用リクエストが最も多かった大和村

2日目の午前中は、運用リクエストが多かった大和村で運用しました。海に面した広場で、岸壁に高い波が打ち付け、雨粒と海水が混ざった大粒の水滴が横から飛んでくる状態でした。(写真3)


写真3 大和村での運用の様子

7MHz CWのパイルアップは想像以上に厚く、数10局と交信した後にもまだパイルアップが続きました。最終的には7MHzだけで2時間近く呼ばれ続け、182局と交信、続く10MHzも109局と、コンディションが不安定で聞こえにくい地域もある中で、需要の多さを伺わせました。14MHzで83局など、午前中の4時間強の運用で計462QSOでした。

3日目の夜に、大和村に再び移動し、同じ場所でローバンド(1.9MHz, 3.5MHz)を運用しました。またも雨が激しくなりましたが、幸いにして風は弱まりました。3.5MHzはバンド全体にパタパタパタという強力な雑音が混入しており、受信に大変苦労しました。この雑音は本州でもしばしば聞こえるもので、西日本ほど強くなる気がします。しかし、伝搬状況が非常に良く、各局の信号が軒並みS9の強さで入感しました。1.9MHzはノイズが全く無く、1.9MHzであまり交信機会が無い局とも交信できました。

山に囲まれた宇検村

2日目の夜は宇検村に移動しました。村の中心部は高い山に囲まれています。公園などでアンテナを設置するスペースはあっても、本州方向に開けた場所を探すことは難しそうでした。集落から少し離れた、整備中の空き地を見つけました。アンテナの一端は柵に固定できても、もう一端は草むらをかき分けて、木に固定するしかなさそうでした。ハブとの遭遇に注意し、コンクリートの上を一歩一歩確かめながら、慎重に歩きました。

夕方になると10MHzがまず聞こえなくなり、日没とともに7MHzの信号も弱くなりました。3.5MHzと1.9MHzにQSYすると、それなりに呼ばれるものの、全般に信号が弱く、パイルアップはあまり感じられませんでした。

南側しか開けていない瀬戸内町

3日目の午前中は、奄美市の市街地から南に約40kmの瀬戸内町に移動しました。瀬戸内町は奄美で2番目に大きな町で、スーパーマーケットやコンビニも見受けられます。町の中心部では、本州方向となる北側には山が広がっています。伝搬的には、さらにロケの良い場所を期待したのですが、利便性を考えてこの場所で妥協しました。(写真4) 海岸に面した駐車場は、釣りを楽しむ人が多く見受けられました。この日は18MHzが特に好調で、18MHzだけで30分以上呼ばれ続けました。


写真4 瀬戸内町での運用の様子

レンタカー移動運用セットの構成

今回の移動運用では、飛行機で移動して、現地ではレンタカーを利用しました(写真5)。レンタカー移動運用セットの詳細は2014年7月号(http://fbnews.jp/201407/rensai/jo2asq_idouunyou_ot_04_01.html)で紹介しました。このセットで1.9~430MHzとサテライト(衛星通信)を運用できます。


写真5 レンタカー移動運用セットを車に設置した様子

HF帯のアンテナは、逆V型ダイポールアンテナを基本としました。この場合、アンテナの両端部分の固定が課題となります。園芸用支柱(太さ16mm、前回の記事では11mmでしたが、折れることがあり太くした)の一端にフックを取り付けた物を持参し、側溝のフタの穴や、木の植え込みに突き刺して、フックにアンテナを引っ掛けることで固定しました(写真6)。


写真6 アンテナの端の固定方法。太さ16mmの園芸用支柱の端にフックを取り付けて使用。

電源として、発電機を宅配便で輸送することは困難なため、レンタカーのバッテリーから電源を取りました。バッテリー電圧はデジタル電圧計で常時監視しておき、電圧が一定値(11.2V)まで下がったらエンジンを起動させて充電しました。電圧の基準は、使用するバッテリーの状態によって調整が必要です。状態が悪いバッテリーでは、電圧が下がる前に早めに充電する必要があります。

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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