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日本全国・移動運用記

第72回 奄美大島移動

JO2ASQ 清水祐樹

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鹿児島県にある奄美大島には5つの市町村があり、移動運用のリクエストが多く寄せられています。そこで、カレンダー上で4連休になった2021年7月22~25日に、移動運用を計画しました。

本連載では、2017年12月号で奄美大島移動を紹介したことがあります。その時には、時期的にHF帯のハイバンドでの交信が困難だったので、今回の移動運用では、ハイバンドでの交信を期待していました。

動きが遅い台風6号の影響で、出発は1日以上の遅れ

4連休が近付くと、台風6号が沖縄に接近し、西にゆっくり動く進路をとりました。その影響で、7月22日に鹿児島から奄美大島に向かう飛行機は、早い段階で欠航が決定していました。当初の予定では、3日間で5つの市町村に移動し、最後の1日は交信数が少なかった所に移動する予備日として考えていました。しかし、欠航により、予定は白紙になりました。

23日の最終便は運航の可能性があるとのことで、23日の夜に奄美市で運用を開始し、25日の昼までに5市町村の全てに移動する強行日程に変更しました(図1)。その後台風は西に進んで、奄美からは一旦離れていったため、23日の夜に奄美大島に到着できました。


図1 奄美大島での運用予定

奄美市での運用は、激しい風雨に

WACA(全市交信)で奄美市が最後という2名の方から事前に連絡を頂いており、奄美市での運用は絶対に外せませんでした。幸い、23日の夜は、風は強いものの雨は弱く、奄美市の市街地にある公園で、出来るところまで運用することにしました。

奄美市の市街地は山に囲まれていて北側しか開けておらず、サテライト通信では衛星からの信号がなかなか聞こえずに苦労しましたが、幸い、南から北に進むパスで、衛星が北側の海の向こうに消える直前のタイミングで、何とか最低限の交信はできました。強風の中、ロングワイヤーアンテナを揺れないように木に引っ掛けて設置し、7MHzと3.5MHzのCWを運用しました。これで、1名の方がWACA達成となりました。

今回の移動運用では、荷物を減らすためオートマチックアンテナチューナーは持参しませんでした。狭い公園でロングワイヤーアンテナしか設置できなかったので、小型の手動アンテナチューナーを使ってチューニングを試みました。奄美市は、市街地の近くに中波帯の放送局があり、しかも周波数が1.9MHz帯に近いので、放送波でアンテナアナライザの指示値が振り切ってチューナーの調整ができず、1.9MHz帯が運用できませんでした。2日目(24日)は、山の上にある公園に移動しました(写真1)。風雨が強く、倒木や土砂流出の可能性があると考え、明るくなってから移動を開始しました。


写真1 奄美市での運用の様子

公園は強風が吹き続け、時々強い雨になりました。強風で伸縮ポールを伸ばすことが困難で、ダイポールアンテナは最小限の高さにしました。ダイポールアンテナの両端は、通常は柵などに結び付けて固定しています。しかし、柵の回りは、地面に水が溜まって近付けなくなっており、フックを付けた園芸用支柱にダイポールアンテナを取り付け、草木に引っ掛けて何とか固定しました。三脚に取り付けたサテライト用アンテナは、水を満たしたポリタンクを吊るして固定しました。それでも完全ではなく、強風でバランスが崩れると簡単に倒れました。結局、運用中は同軸ケーブルを足で押さえて、アンテナの全体が倒れないように固定しながら運用していました。激しい風雨で集中力が持続しにくい中、約5時間の運用で400QSO以上できました。ただし、28MHz帯は伝搬のコンディションが悪く、交信はできませんでした。

龍郷町では、10MHz帯と14MHz帯がメインに

奄美市から龍郷町(たつごうちょう)までは20kmほどの距離があります。龍郷町には大型ショッピングセンターがあり、ここで食料品を確保しました。

龍郷町の市街地に到着すると、風雨が弱まってきました。浸水して人が来ない、グラウンドの駐車場の片隅で運用を開始しました(写真2)。ところが、伝搬のコンディションが悪く、QSO数はなかなか増えませんでした。そんな中でも、10MHz帯と14MHz帯は東日本の局からそれなりに呼ばれて、2アマ以上が運用できる、これらの周波数帯のメリットを活用できた形になりました。


写真2 龍郷町での運用の様子

風雨が強まる中、大和村に移動

運用リクエストが多かった町村の一つ、大和村(やまとそん)に移動しました。北側が海に面した、ロケーションの良い場所はいくつかあります。しかし、集落から離れるとスマホが圏外になり、結局、前回(2017年)の運用と同じ海岸の公園を利用しました(写真3)。

台風が進行方向を変えて再接近したため風雨が激しくなり、伸縮ポールを伸ばして逆L型ロングワイヤーアンテナを展開しようとしても、ワイヤーが揺れてSWRが安定しませんでした。芝生の地面が水を含んで軟らかくなっており、その上にタイヤベースで伸縮ポールを立てても、強風で傾いてしまう状態でした。夕方、ハイバンドのコンディションが少し良くなりました。強風で伸縮ポールが引っ込むことがあり、雨に濡れながら修復して、1.9~28MHz帯の各バンドで交信できました。


写真3 大和村での運用の様子

山に囲まれており、運用が難しい宇検村

3日目(25日)、奄美市の市街地から40km近く離れた、宇検村(うけんそん)に移動しました。この村も運用のリクエストが多い所です。奄美空港から70km近い距離があり、移動すること自体の難易度が高いといえます。

台風の動きが遅く、船が数日間欠航して、生鮮食料品が入荷していませんでした。奄美市内のコンビニは食料品の棚が空になり、主食になりそうな食料品も次第に在庫が少なくなって、朝食はピーナッツ、スナック菓子、ようかん等で済ませました。

宇検村は、山が多くて平地が少ないので、地図上で見つけた展望台に行ってみました。しかし、スマホが圏外で、この場所では運用できないことが分かりました。8kmほど離れた村の中心部で、ようやく広い場所を見つけました(写真4)。北側には山があり、サテライト通信の運用では限られた時間しか信号が聞こえず、かなり厳しい状態でした。ここではHF帯のコンディションが徐々に上がって、28MHz帯まで多くの局と交信できました。しかし、時間が限られており、次の瀬戸内町に移動しなければなりません。ちょうど風雨が弱まったこともあって、撤収して移動を開始しました。


写真4 宇検村での運用の様子

瀬戸内町では風雨が激しく、山の上から港の近くに退避

瀬戸内町の中心部は北側に開けていないので、サテライト通信に適した北側(本州側)に開けた場所で運用するため、宇検村から30kmほど離れた山の上の展望台に移動しました。インターネット上に展望台の写真やレビューが投稿されており、スマホが使用可能だろうと判断して、この場所を選びました。

移動の途中、急激に風雨が激しくなりました。展望台のある広場に行くと、歩くことも困難なほどの、これまでに体験したことのない猛烈な風が吹いていました。風下側の窓を開けても、渦を巻くような風に乗って大粒の雨が横向きに降ってきて、紙ログは水浸しになりました。ここで、アンテナが風にあおられるのを何とか押さえながら、サテライト通信の運用をこなしましたが、予想を超える風の強さで、これ以上の滞在は危険と判断し、前回に運用した港に近い公園に移動しました(写真5)。風は相変わらず強いままで、軽量の逆L型アンテナを使用しても、伸縮ポールを全て伸ばすことができない状態でした。ロングワイヤーを張れるだけ設置して、手動アンテナチューナーで調整しながら各バンドに対応しました。伝搬の状態はまずまずで、7~28MHz帯の各バンドで交信ができました。


写真5 瀬戸内町での運用の様子

結果

1時間ごとに集計したQSO数を表1に示します。24日は3か所の運用で、それぞれの市町村間の移動に時間がかかる条件でありながら、1日1,000QSOを達成しました。短時間での一発勝負の運用だったので、QSYのタイミングや伝搬の特性により、交信できなかった局も多かったと思われます。50MHz帯は、強風が予想され専用のアンテナを持参しなかったため、交信ができませんでした。


表1 QSO数の1時間ごとの集計。モードは1.9~28MHzがCW、サテライトがCWとSSB

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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