日本全国・移動運用記
鹿児島県の徳之島は、天城町・伊仙町・徳之島町の3町がある島です。国内の全市町村との交信を目指している方からのリクエストが多く、台風の可能性が低い11月中旬に、2019年7月に続いて2回目の移動運用を計画しました。
国内の離島移動では、渡航自体が困難な場所のほか、奄美大島・徳之島・沖永良部島は特に需要があります。その理由は、これら3つの島には複数の市町村が存在しており、かつ、本土からの車の持ち込みが困難であるためと考えられます。
離島で移動運用する場合、民宿やホテルに機材を発送して、客室やコテージを利用して運用する移動局が多くみられます。この場合、基本的には一度に1か所の市町村でしか運用できません。複数の市町村が存在する離島で、それぞれの市町村から運用するには、島内での移動手段を確保する必要があります。
2町がある北海道の利尻島と、1市2町がある鹿児島県の種子島は、フェリーの車両航送で自分の車を持ち込むことが容易で、本土から数時間で行くことができます。しかし、奄美大島は5市町村、徳之島は3町、沖永良部島は2町があり、かつ、本土からの車の持ち込みは手間・時間と費用がかかります。筆者の場合、レンタカーで1.9~1200MHzとサテライトを運用する方法を確立しており、レンタカーさえ確保できれば、自分の車と同等のアンテナで運用が可能です。
需要が特に多いため、本連載では奄美大島・沖永良部島についてそれぞれ2回の記事を掲載しました(奄美大島1回目2017年12月号、2回目2021年9月号、沖永良部島1回目2016年4月号、2回目2022年5月号)。そして、徳之島移動も2019年8月号に続いて、今回が2回目の記事になりました。
図1 徳之島にある3町の位置と、運用スケジュール
徳之島は、右回りまたは左回りで、3つの町を行き来できます(図1)。ただし、平地が少なく、運用できる場所は限られていることと、道路が狭い場所もあることから、例えば天城町の運用場所から徳之島町の運用場所に移動するには40分ほどかかりました。電波伝搬の影響を受けにくくするため、それぞれの町で時間帯を変えて複数回運用すること、および、夜の1.9/3.5MHzは3町の全てで運用することを考えて、運用スケジュールを決めました。
最初の運用地点は、徳之島町にしました。島の経済活動の中心地で商店が多く、運用開始前に食料などを調達するには都合が良かったためです。2019年7月の運用と同じ、高台にある運動公園の駐車場に行き、レンタカー移動セットを組み立てました(写真1)。
今回の運用は、ハブ対策のため、整備された公園を利用しました。この場所は芝生が刈り込まれていて危険な生物が出現しそうな気配が無く、安心して運用できました(写真2)。11月といっても、日中は汗ばむほどの陽気で、平日の昼間でもゲートボールなどを楽しむ人でそれなりの利用者がいました。
写真1 レンタカー移動セットを設置した様子
多くの場所で運用する移動運用では、1.9~50MHz帯のアンテナとして、設置が容易な釣竿とオートアンテナチューナーを使うことが多く、その様子を本連載でたびたび紹介しています。ここでは、性能を重視してダイポールアンテナを使用しました。レンタカーで移動する場合、ダイポールアンテナの両端を固定する方法が問題になります。自分の車であれば、コンクリート製の旗立て台などを持って行き、周囲に何も無い場所でもアンテナの両端を固定できます。レンタカーでは、そのような重量物は用意できないので、柵や樹木など、アンテナの端を固定できる物がある場所で運用しています。この場所には、長さ80mに近い1.9MHz帯のダイポールアンテナよりも長い柵がありました。
16時頃から運用を開始すると、国内向けのHF帯のコンディションは次第に落ちて行く時間帯で、18MHz帯から上の周波数は非常に弱い入感状況でした。日没後に、7MHz帯のダイポールアンテナの両端を延長して、1.9MHz CWに出てみると、コンディションが悪くて1エリアまでは飛んでいないようでした。翌日(19日)の夜明け前に、同じ場所で同じように1.9MHz帯に出てみるも、やはり聞こえませんでした。ノイズを避けるため1.8MHz帯の空き周波数にQSYしても効果はありませんでした。
20日の夜、天城町での運用が終わった後に徳之島町へ移動し、アンテナを再設置して再び1.9MHz帯にチャレンジしたところ、激しいノイズの中の数10秒の浮きを捉えて、三度目の正直で1エリアの某局とQSOできました。
写真2 徳之島町での運用の様子
天城町は、空港の北側にある運動公園で運用しました(写真3)。この場所では自衛隊員がテントを張って滞在しており、駐車場の半分ほどを占有されていました。そこで、駐車場の空きスペースを利用して運用を開始しました(写真4)。19日の昼間はHF帯ハイバンドのコンディションが良く、28MHz帯で15QSOできました。ただし、50MHz帯は残念ながら聞こえませんでした。
20日の夕方からは、3.5MHz帯、続いて1.9MHz帯を運用しました。この時もコンディションが良く、徳之島町では3回に分けての運用で26QSOだった1.9MHz帯は、天城町では短時間で19QSOを記録しました。コンディションが良かったため、逆に7MHz CWの運用時間が十分に確保できなかったことから、最終日の21日午前に、月曜日ではありますが天城町で追加の運用を行い、3時間で7MHz CWでは54QSO、全バンド合計では176QSOを上積みしました。
写真3 天城町での運用の様子
写真4 使用したアンテナ(ダイポールアンテナは7~50MHz帯の昼間バージョン)
伊仙町では、海岸付近での運用を考えていたところ、良い場所が見つからず、運動公園を利用しました(写真5)。ここでは、ダイポールアンテナの両端を樹木に固定しました。写真5は南側の陸上競技場に向けて撮影したもので、この場所の北側には、高さ3mほどに成長したサトウキビの畑があり、サテライト用のアンテナよりも地上高がはるかに高いため、低仰角の衛星は聞こえにくくなることもありました。
伊仙町での運用は19日の夕方と20日の朝の2回限りでした。ハイバンドが開ける機会が少ない時間帯で、3町のうちQSO数は最も少なくなりました。
写真5 伊仙町での運用の様子
運用日、QTHごとのQSO数を表1に示します。運用時間は19日より20日の方が長かったのですが、18日と19日で多くの需要が満たせたようで、20日はQSO数が少なくなりました。
表1: 運用日・QTH別のQSO数。1.9~28MHzはCW、サテライトはCW/SSB。
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