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楽しいエレクトロニクス工作

第85回 デジ簡と特小のリンク

JA3FMP 櫻井紀佳

アマチュア無線はその使い方や運用の楽しさはご承知のとおりですが、免許のない人との通信はできません。今回は、免許が必要ではなく登録手続きさえ行えば誰とでも通信できるデジタル簡易無線登録局(以下「デジ簡」)と特定小電力無線局(以下「特小」)を取り上げてそのリンクを考えてみました。

デジ簡は無線従事者免許がなくても登録するだけで誰でも使えるもので、出力も5Wと大きく便利に使えます。詳しくは総務省やアイコムのホームページなどでご確認ください。また特小は小出力ながら便利な機能があり、組み合わせて使うと応用範囲が広がるのではないかとインターフェースを考えてみました。

なお、このやり方には法的に守らなければならないことがあるので巻末の「ご注意」をよく読んでそれに従ってください。

デジ簡と特小のリンクの構成は次のようなものです。


この図は少し大掛かりなものですが、右左1組ずつでも十分稼働できると思います。片方のエリアで特小の通信を行い、デジ簡を介してもう一方のエリアの特小のユーザーとも交信できるシステムが作れます。特小は出力10mWのため数100m位の通信しかできませんが、デジ簡は5Wも出力があるので条件を選べば数km離れたエリアまでリンクが可能になると思います。

このシステムでは、デジ簡と特小をつなぐインターフェースがポイントになるのでそれを考えてみます。アイコムのハンディ機では、デジ簡※や特小※、アマチュア無線まで外部マイクやスピーカー等オプション機器が使える3.5φと2.5φの2つのジャックが用意されています。


外部マイクの例 (※業務用はジャック形状が異なります)

この外部接続用ジャックを使ったインターフェースの回路は次のようになりました。


片方の無線機からのスピーカー出力でもう一方の無線機を送信状態にして、そのスピーカーからの出力をマイクに入力してリンクするものです。所謂ボイスコントロール(ボイコン)と言われるやり方で左右対称のためどちらからでも同様に動作します。


このインターフェースにはできれば電源を使いたくないので無電源の回路を考えます。送信スイッチにFETを使うと、電圧だけあればゲートをコントロールできますが、制御元のスピーカー出力はインピーダンスが8Ωや16Ω程度なのであまり大きな電圧が取り出せません。そこでAFトランスを使って昇圧することにしました。トランスT1、T2は入力用と称するインピーダンス比100k:1kのもので巻線比10:1になりスピーカー出力200mVでも2Vまで昇圧できます。さらにD1とD2で倍電圧整流にして制御電圧を上げています。

スイッチとなるFET Q1、Q2にはBS170を使いました。このFETは元々ロジック用なのでゲートの閾値が2.5V程度で制御に高い電圧が必要ですがスイッチ特性は良好です。トランジスターのスイッチも考えてみましたが、制御にベース電流が必要なため電力的比較でFETが有利と考えました。

このような回路で信号を整流して直流として使うとき、整流するダイオードの順方向電圧(VF)が問題になります。例えば整流器にシリコンダイオードを使うとシリコンダイオードの順方向電圧は、約0.6Vであるため、スピーカー出力のピークが0.6V以上なければ整流できません。このため順方向電圧が0.2V程度と低いゲルマニウムダイオードでジャンクボックスに残っていた古いタイプの1S188を使いました。

送信制御される側の無線機のマイク端子は、抵抗を介してグランドに落とせば送信状態になります。このためR3とR8をスイッチとなるQ1とQ2のFETのドレインに接続してグランドに落としています。

スピーカーの出力はR4、R5およびR6、R7で分圧して送信側のマイク端子に入力しています。R5とR7のVRで変調度を調整します。今回のやり方では、マイクの信号源をスピーカー出力から取っているため、受信レベルを決めるボリュームを一定にしなければなりません。通常使う適宜な音量にボリュームを設定して、その後この回路のR5、R7のVRを調整します。

当初はC7とC8はなかったのですが、デジ簡が動作して送信になるとその電波が回り込んで整流されFETがONになって制御側のSP出力がなくなっても送信が切れなくなりました。C7、C8はこの回り込み電波をバイパスするもので、今回使ったプラスチックケースを金属ケースにすると軽減するかも知れません。

これらの回路は50mm x 50mmの穴あき基板に組み立てました。その基盤を50mm x 70mm x 40mmのプラスチックケースに入れました。


インターフェースの内部と外観

無線機とこのユニットの3.5φと2.5φをそれぞれプラグのついたケーブルを接続して使います。色々なイベントでの通信などが考えられると思います。

(編集部注) 今回の製作はアイコムのトランシーバーを対象に考えられています。アイコム以外のトランシーバーをお使いになるときは、マイクラインの電圧や送信制御などの回路の動作は、事前にお確かめください。

ご注意

運用上は、このインターフェースに接続された特定小電力トランシーバーへ送信してくる人がインターフェースに接続されるデジタル簡易無線機登録局の登録人であること。

もし、登録人でない者であれば以下の手続きを行うこと。

登録人は、あらかじめ、登録人以外の者に対し、「登録状に記載された事項」、「登録局の適正な運用方法」及び「使用者が遵守すべき法及び法に基づく命令並びにこれらに基づく処分の内容」について説明を行います。

事後手続きとして、登録人は、登録人以外の者が運用開始後、遅滞なく、「運用させた登録局の登録番号」、「登録人以外の者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあってはその代表者の氏名」、「登録人以外の者による運用の期間」、「無線設備の製造番号」について届け出ること。

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