日本全国・移動運用記
神奈川県は、多くの移動局が運用している市町村と、そうでない市町村に差があるようで、筆者にもいくつかの運用リクエストが寄せられていました。そこで、1泊2日の日程で、移動運用を計画しました。
神奈川県への移動といっても、日程の都合で1泊2日しか確保できず、短期間の運用になりました。筆者の場合、HF帯のオールバンドとサテライト通信を運用することが多く、それだけで1拠点での運用に最低2時間は必要です。早朝と夜間は1.9MHz帯と3.5MHz帯が加わり、さらに、今回は首都圏で相手局が多いと予想される144~1200MHz帯も準備しました。
筆者宅から、神奈川県の最も近いポイントへは新東名高速道路経由で4時間近くかかります。この日は、使える衛星が少なく、11~16時頃に使えるリニア(CW/SSB)衛星がありませんでした。2日目の日曜日に16時過ぎまで滞在すると帰りが遅くなってしまうので、午前中のサテライトが終わった時点で終了としました。そのような事情を勘案して、運用地点は特にリクエストが多かった4か所に限定しました(図1)。
今回運用した場所でリクエストが多かった理由は、次のように推測しています。現地の状況を十分に知っているわけではないので、違っていたら申し訳ありません。
・高座郡寒川町: 一郡一町で、郡としての人口は少ない。町の全体が平地で、運用に適した場所が少ない。
・愛甲郡清川村: 神奈川県で唯一の村で、人口は少ない。広い平地はほとんど見当たらず、運用場所を探すことが難しい。
・横浜市青葉区: 固定局が多いため、移動運用の場所として選ばれにくい。
・大和市: 広い場所が少なく、ロケーションが良い場所はあまり見当たらない。
図1 今回の移動ルート
東名高速道路などを経由して、高座郡寒川町の河川敷の公園に移動しました(写真1)。東側と南側は高速道路の高架で囲まれており、西南西には富士山が見えるロケーションです。ここでは、首都圏以外では運用する機会が少なかった1200MHz CWに期待しました。既製品の10エレループアンテナに、自作11エレを延長して21エレに改造したものです。取り付け方法の詳細は2014年1月号の記事で説明しています。
144MHz帯と430MHz帯は、サテライト通信用のアンテナを使用しています。相手局の信号が強い場合は、アンテナの向きに関係なく、そのままQSOすれば済みます。相手局の信号が弱い場合は、相手局が送信しているわずかな時間にアンテナを手で回して微調整することで、信号が強くなる方向を探ります。時には、調整に失敗して相手局の信号を見失ってしまうこともあります。相手局の方向が事前に分かるケースは少ないので、困ったときには障害物が何も無い方向か、電波が反射しそうな高い山や建物に向けると、交信できる可能性が高くなります。
写真1 高座郡寒川町での運用の様子
1200MHz帯のアンテナはブームが長く、同軸ケーブルが太い(8D-SFA)ため、一気に大きく回すことができません(写真2)。指向性が鋭く、アンテナの方向を数度変えるだけで信号が弱くなることも、強くなることもあります。アンテナの動かし方を試行錯誤しながら、何とか3局とQSOできました。
この場所からは富士山も見えました。冠雪する時期には、富士山に電波を反射させることで、山の向こう側の遠方と交信できることがあります。しかし、この日には雪が無く、黒い富士山でした。電波の反射も弱く、富士山の向こう側は静岡方面で運用局が少ないため、富士山反射と思われる遠距離通信は静岡県の2局しか思い当たりませんでした。
写真2 サテライトと1200MHz帯のアンテナ
神奈川県で唯一の村である、愛甲郡清川村に移動しました。道の駅の近くは高い山に囲まれており、サテライト通信を運用できそうな場所が見当たりません。北上して宮ヶ瀬湖の方向に向かうと、駐車場はいくつか見つかったものの、全方向に開けた場所は見つかりませんでした。V/UHF帯の伝搬を考えると、人口が多いと思われる東側が開けた場所であれば、ある程度の交信ができると期待して、そのような場所を確保しました。
午後からは7MHz帯や10MHz帯の近距離の伝搬が好調で、多くのQSOができました。ハイバンドは電離層反射がほとんどありませんでしたが、直接波でQSOができました。運用中に、地元の方から退去の申し入れがあったため、別の場所に移動して再開しました。再開した頃には日没を過ぎて暗くなっていたため、ここでの運用中の写真はありません。
西側には山があったものの、ローバンドの電波は山を越えていったようで、西日本の局とも多くのQSOができました。
2日目の朝は青葉区で運用しました(写真3)。土地勘が無いので、広い駐車場を利用しました。西側は建物が無かったものの、東側はインターネット上の地図の写真で見た印象よりも建物が高く、144~1200MHz帯での交信は反射源を見つけるまでに手間取りました。早朝だったこともあり、QSO数は他の運用地よりも少なめでした。早朝は、HFハイバンドの国内向けの伝搬がほぼ無いため、HF帯は1.9~14MHz帯で打ち切りとしました。
写真3 横浜市青葉区での運用の様子
大和市は高台にある公園で運用しました(写真4)。しかし、高台といっても駐車場は広葉樹に囲まれ、周囲には民家や工場があり、全方向に開けた場所ではありませんでした。144MHz帯と430MHz帯は建物の反射をうまく利用して交信できたものの、1200MHz帯はアンテナの指向性が鋭すぎて反射源に上手く合わせられず、また周囲の樹木は1200MHz帯の電波を透過する際の減衰が大きいようで、交信に手間取りました。HF帯は、7MHz帯のコンディションが悪く、10MHz帯の近距離が好調でした。
写真4 大和市での運用の様子
運用日、QTHごとのQSO数を表1に示します。愛甲郡清川村では1.9~1200MHz帯の全バンドと、サテライトで交信できました。
表1: 運用日・QTH別のQSO数。1.9~1200MHzはCW、サテライトはCW/SSB。
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