2015年7月号

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海外運用の先駆者達 ~20世紀に海外でアマチュア無線を運用した日本人達~


JA3AER 荒川泰蔵

その28 米国で日本との相互協定による運用許可開始 1985年 (1)

米国で日本との相互協定による運用許可開始

本誌(月刊FBニュース)2014年9月号の当欄(海外運用の先駆者達)で、「相互運用協定への聴問会が開かれる」として紹介した、JA1BNW廣島孝之氏の寄稿記事にある、1981年10月22日の聴問会から待つこと4年、ようやく1985年8月8日に東京で日米間の相互運用協定が結ばれ、発効は9月7日と発表された(写真1及び2)。日本の免許を持つ在米日本人を中心に、多くの日本人が日本としては初めての相互運用協定による運用許可を求めてFCCに申請書を提出した結果、1985年11月5日に運用許可証が一斉に発行された。

今年(2015年)は、この相互運用協定から30年を迎えることを記念して、TIARA(Tokyo International Amateur Radio Association)ではこの8月に、記念局8J1JAUSの運用を計画中と聞く。尚、現在では相互運用協定による運用に際して、事前の申請は必要なくなっているが、FCC免許保持者は相互運用協定による運用が出来ない。


写真1. 日米間の相互運用協定締結を告げる、1985年8月15日付The ARRL Letterのトップ記事。


写真2. 日米間の相互運用協定締結を告げる、CQ ham radio誌1985年10月号の記事。
(クリックで拡大します)

1985年 (米国 JS1DLC/W2, JH1VRQ/W1, JP1TPZ/W2, JA1IST/W6, JA3AER/W2, JG3FAR/W2, NN7S, N2FCS, N7DDU, N6DHF, KE6DH, N6LYB)

JS1DLC/W2荒川謙一郎氏(写真3)は、「1985年2月に、転勤により2度目のアメリカ勤務となる。1984年夏、電話級ライセンスを取得したので、着任後早速JANETに連絡をとりN2JA塚本氏の応援をえるも、相互運用協定はまだなく、アメリカのライセンス取得が必要とのこと。着任後の忙しさもようやく過ぎて、そろそろ勉強と思った9月に、日米相互運用協定が結ばれ、ARRLから申請書610-Aをとりよせ、9月12日に申請を行ない、此の度、1年間の運用許可を取得した。FT-270(10W)による2mFM(144.92MHz)で、JANETメンバーと毎日のようにQSOを楽しんでいるが、HFに出られるよう、アメリカのライセンス取得のため勉強中である。(1985年11月記)」と、レポートと共にアパートの屋上にアンテナを設置するための申請書類や写真を送ってくれた(写真4及び5)


写真3. (左)JS1DLC/W2荒川謙一郎氏のQSLカード。
(右)左からN2ATF小林巌氏、HP1XKR瀬上功一氏、JS1DLC/W2荒川謙一郎氏、N2ATT筆者
(1986年N2ATTのシャックにて)。


写真4. JS1DLC/W2荒川謙一郎氏の、アパート屋上へのアンテナ設置許可を求める書類。
(クリックで拡大します)


写真5. (左)JS1DLC/W2荒川謙一郎氏のアパート屋上のアンテナと、(右)シャックのリグ。

JH1VRQ/W1秋山直樹氏はQSLカード(写真6)と共に、4回にわたる相互運用協定による運用許可証を送ってくれた(写真7)。「JH1VRQ/W1, 1985.11.5 - 1986.11.4 (1985年11月記)」、「JH1VRQ/W1, -1987.10.20 (1987年5月記)」、「JH1VRQ/W1, -1988.11.12 (1987年11月記)」、「W1/JH1VRQ, -1989.12.14 (1989年1月記)」


写真6. (左)JH1VRQ/W1秋山直樹氏のQSLカード。(右)W1/JH1VRQ秋山直樹氏のQSLカード。


写真7. JH1VRQ/W1秋山直樹氏の歴年の運用許可証。

JP1TPZ/W2澤木逸子氏(写真8)は、「ここニュージャージー州のサマービルという街へ来て約半年が過ぎ、アパート暮らしにも慣れてきました。以前から言われていた相互運用協定が成立し、ついに私もサードオペレーターではなく、自分のコールサインでマイクを持つことが出来るようになりました(写真9)。しかし、残念ながらここからVHF/UHFの電波が届くのは限られています。最近、主人(KR7T)とは毎日仕事の行き帰りに、430MHzでの交信を楽しんでいます。(1985年11月記)」と、相互運用協定による運用許可を得たことをレポートしてくれた。


写真8. (左)JP1TPZ/W2澤木逸子氏のQSLカード。(右)米国のハム仲間達とJP1TPZ/W2澤木逸子氏(中央)。


写真9. JP1TPZ/W2澤木逸子氏の運用許可証。

JA1IST/W6名黒和史氏は、「待望のJA1IST/W6の許可書がやっと届きました。色々と書物を見ているのですが、どうも運用範囲があいまいな気がしており、どうしたら良いものかと悩んでいます。(1985年11月記)」と、相互運用許可を得たものの、明確なルールが知らされていない懸念を伝えてくれた。

JA3AER/W2筆者は、XYLのJG3FAR/W2荒川洋子の運用許可証(写真10)と同時に運用許可証を受け取った。「相互運用協定による運用許可証が1985年11月5日付けで、それまでに申請していた日本人に一斉に発行されたと思われる。発行日が記載されていないので、1年間の有効期限から推測したものである。受け取った11月7日に早速運用してみた。また、許可証には日本のコールサインしか記載されておらず、運用地のエリア(プリフィックス)を後ろに付けるものと考えた。QSLカードは日本のコールサインのあとに/W2と運用地のプリフィックスを付けた(写真11)。後にこれではなくW2/JA3AERのように前に付けるのが正しいとか、FCCの免許に優先するので運用可能範囲が狭まるとの情報もあった。(1986年12月記)」


写真10. JG3FAR/W2荒川洋子の運用許可証。


写真11. (左)JG3FAR/W2荒川洋子のQSLカード。(右)JA3AER/W2筆者のQSLカード。

JA5DQH奈木昭人氏(写真12)は、「先日ハワイでUp Gradeしたライセンスが、NN7Sのコールで届きました。昨年1年間のW7でのExtraのコール発行状況から日割り計算して、NN7Nを狙って申請したところ、5番違いのNN7SがきましたHi。99% CW Manの私としては、かなりFBなコールで気に入っています。次の渡米の際には是非このコールでQRVしてみたいと思っております。(1985年5月記)」と、レポートしてくれた。


写真12. (左)ハワイにてJA5DQH奈木昭人氏。(右)KH6DM/Rのあるダイアモンドヘッドから、ワイキキビーチやホノルルのダウンタウンを望む(1985年4月JA5DQH奈木昭人氏撮影)。

JA4HRC岡本隆志氏はニューヨークでN2FCSとして運用中と歴年の免許状(写真13)と共に、受験の経験をレポートしてくれた。「1984年NYでTechnician級のライセンスを受け、1985年ハワイでGeneralとAdvancedを取り、今またNYにいる。現在2mでローカルの日本人とのラグチューのみ。HFに出たいがアンテナに問題があって残念。ハワイでは2ケ所のVECで試験をやっており、僕の受けた所は毎月第1土曜日、他は第3土曜日で、08:30amに指定された場所に行くと誰でも無料で試験を受けることが出来た。(1985年6月記)」


写真13. N2FCS岡本隆志氏のTechnicianからAdvancedまでの歴代免許状。

JF3PLF杉浦雅人氏は1985年に米国西海岸へ旅行中、既に取得していたN7DUUの免許を使って運用した旨レポートしてくれた。「観光が主だったのと、いい加減なものしか持って行かなかったのとで、交信局数は僅か2局です。S.F.では、同じ市内のクラブ局と交信、Seattleでは免許を取る時にお世話になったKU1E, Irvと、家の1階と地下で交信しただけです。(1985年11月記)」

JH1JGX田中哲夫氏N6DHFの免許を持っておられ、「渡米するたびに、VHFのFMでローカルQSOする程度です。最近JH1JGXのライセンスで相互運用協定による運用許可を得ました。(1986年2月記)」と、レポートしてくれた。

JA1FBD池田尚氏KE6DHで出ていると、近況をレポートしてくれた。「1976年12月17日に最初の免許を受けたが、San Francisco市内でFCCに受験に行った。午前中にGeneral、午後にAdvancedを受験し、1日で終了した(写真14)。このところConditionのせいもあり、なかなかHFでのActivityが上がりません。せいぜいUHFのレピーターを使用する位しか出ていません。(1987年4月記)」


写真14. KE6DH池田尚氏の免許状。

JH1ORL酒井章宏氏は船上でVECの試験を受け、N6LYBの免許(写真15)を得た経験をレポートしてくれた。「FO0XXクリッパートン島Pediの帰りにWのVEメンバーの協力を得て、船の上で試験を受けた。おそらく、船の上でのVEC試験は初めてだったのではないだろうかと思われる。U.S.A.本土では、145MHzによる連絡にしか用いた事がないが、U.S.A.以外の国においてライセンス申請時に役だっている。N6LYBの免許による運用は、/KH2, /KH6, /H44, FW/N6LYB等がある(写真16)。W6ではエキストラ級に合格し、現在コールサイン待ちです。(1990年5月記)」


写真15. N6LYB酒井章宏氏の免許状(コピーのトナーの定着が悪く消えた部分あり)。


写真16. N6LYB酒井章宏氏のマルチQSLカード。

1985年 (クリッパートン島 FO0XX)

JH1ORL酒井章宏氏FO0XXの一員として、クリッパートン島へのDXペディションの経験をレポートしてくれた。「W6OAT, Rustyを団長とする、クリッパートン島へのDX-Pediに参加させてもらい、JAを中心に、3.5~21MHz, SSB/CWで約5,000 QSOを行った。当時はコンディションが悪く、28MHzではJAとQSO出来ず、50MHzはどこもオープンしなかった。ライセンスの手配等は全てW6OAT及びUSAのメンバーが行った為、私はQSOのみに専念しました。日程はメキシコのカボサンルーカスより船で往復2週間、島での運用日数1週間で、合計約3週間でした。私がタヒチ領より、正式な日本人OP.第1号となった模様です。当時、日本で仏との間に相互運用協定はありませんでした。(1990年5月記)」

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