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楽しいエレクトロニクス工作

第55回 低周波発振器

JA3FMP 櫻井紀佳

色々な回路の実験や測定をするために低周波発振器が必要なことがよくあります。インターネットの広告で面白いICユニットを見つけました。外付けの部品が非常に少なく広範囲な周波数を発振できるICです。


(秋月電子の広告より)

早速これを使って低周波発振器を作ろうと、すぐこのLTC1799ユニットを発注して購入しました。ただ難点もあり、出力が正弦波ではなく矩形波であることです。そこで前回も使った可変フィルターで矩形波の高調波部分を取り除き正弦波にできる方法を思い付きました。その構成は次のようなものです。

広帯域発振器LTC1799の出力は矩形波ですが、周波数範囲の設定の関係でまず1/5に分周します。その後1/50に分周して信号を取り出し、その分周前の信号をトラッキングLPF(Low Pass Filter)のクロックに使います。

トラッキングLPFのMAX297は、前回の「スイッチトキャパシターフィルター」でも説明した通りLPFのコーナー周波数とクロックの関係は1:50になっており、この構成ではいつも信号はコーナー周波数の位置にあることになります。LPFはコーナー周波数より上の周波数を減衰させるため、矩形波の信号の高調波をすべて減衰させることになり、結局コーナー周波数にある基本波だけが残ることになります。

LTC1799は1つだけのVR (可変抵抗器)で広範囲に周波数を可変でき、更に切替えで10倍100倍にも変更可能です。詳しくは巻末の資料をご覧ください。


(秋月電子の資料より)

一般的な低周波発振器は周波数範囲が1Hz~1MHz位のものが多いと思います。今回はこのICの特性を有効利用するため最低周波数を40Hz程度にして100kΩのVRで比例配分すると、分周比100で1.2kHz-38.7Hz、分周比10で12kHz-387Hz、分周比1で120kHz-3.87kHzになります。このため冒頭のブロックダイヤグラムにあるように最初に1/5、その後で1/50に分周しています。

全体の回路図は次のようになりました。


回路の説明をしますと、IC1が発振用ICのLTC1799で、R1のVRで周波数を可変しています。S2は3ポジションのスイッチでレバーのポジションが真中ではどちらにも接続されず1、1/10、1/100の周波数レンジを切り替えています。

IC2Aは1/5分周で、IC3AとIC3Bで1/50に分周しています。IC3BのQAより50%のデューティサイクルで出力されR1とR2で分圧されてC1でIC4に交流接続されます。IC4はトラッキングLPFで信号はINに入力され、クロックは信号の50倍の周波数でCLKに入力されます。入力信号は矩形波ですがこのICのLPFの効果によりOUTより正弦波が取り出されます。

S1の切り替えスイッチで正弦波と矩形波のどちらでも取り出せます。Q1はエミッターフォロワーの出力バッファーで600Ωの低いインピーダンスにマッチさせています。出力信号は出力インピーダンス600Ωに近いR4とR5で分圧してS3の切り替えで20dBのアッテネーターとして使い、R4でレベルを可変しています。レベルは0dBmで約780mVと-20dBの約84mVをJ1より取り出します。R4は600Ωが欲しいところですが500Ωで我慢しました。電源はプラス側とマイナス側の両方が必要なため、IC5で+5V、IC6で-5Vを作っています。

回路図の破線内の部品は46mm x 52mmのプリント基板に組立てました。次の写真の左上にあるのがLTC1799の発振ユニットで、トラッキングフィルター MAX297はその右側です。

周波数を可変するR1の100kΩのVRは微妙な調整が必要なため、10回転型の精密可変抵抗で専用のバーニヤダイヤルが必要なため両方合わせて購入しました。


(秋月電子の広告より)

構成的にはシンプルなので配線を間違えなければ素直に働きます。バーニヤダイヤルの目盛と周波数のデータを取ってみました。その結果は次のようになりました。

全体のケースは部品屋さんで買ってきた84mm x 134mm x 38mmのプラスチックケースにプリント基板と基板外の部品を取り付けました。それぞれのスイッチやVRに、テプラで作った文字を貼り付け、出来上がりは下の写真のようになりました。

出力をオシロスコープで測定すると次のような波形になっていました。正弦波が点線に見えるのはトラッキングLPFの影響で、必要により簡単なCRで取れると思います。矩形波のサグはC7の容量不足で、計算せず適当に10μFにした影響です。SPICEのシミュレーションで確認すると220μFで問題ない波形になるので、後で取り替えるつもりです。


(左)正弦波、(右)矩形波

これで実験など気軽に使えると思います。

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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