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日本全国・移動運用記

第69回 北海道・道東方面移動(前編)

JO2ASQ 清水祐樹

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2021年の大型連休も、フェリーで北海道に渡り、長期間の移動運用を計画しました。今回は、道東方面をメインに予定を組みました。

計画編

広大な北海道ですので、隣の市町村に行くだけでも移動距離が長く、全ての市町村で運用することは時間的に不可能です。リクエストが多かった所だけ、1日5か所に限定して運用することにしました。

フェリーで小樽港に到着後、翌日は虻田郡(胆振)付近の町村で運用しました。その後は札幌市から旭川市、さらに名寄市まで北上した後に東側に進路を変えて紋別市に行き、リクエストの多かった内陸部の町を経由して網走市に移動し、そこから道東方面を目指すルートです(図1)。今回は前編として、ここまでの運用記をお届けします。

設備としては、アンテナはこれまでの記事で何度も紹介している8mの釣竿ロングワイヤーとオートアンテナチューナーAH-4を使用、電源はシールドバッテリー(12V 115Ahを2個並列)を、車のバッテリー→AC100V→バッテリー充電器を通して、走行中やアイドリング中に充電しています。今回の移動運用では、気温が低い道東地方での運用で、低温によるバッテリーの性能低下を懸念して、シールドバッテリーは新品を用意しました。


図1 今回の移動ルート

フェリーからは/MMで運用

フェリーには2020年9月号で紹介したIC-705マルチバッグを持ち込み、船内での運用にチャレンジしました(写真1)。これはIC-705を2台搭載しており、サテライト通信の運用が可能です。なお、船内では他のお客さんの迷惑にならないよう、全てCWで、イヤホンを使用して運用しています。

さらに、ハンディ機のID-52も持ち込み、GPS機能により進行方向、速度、グリッドロケータをリアルタイムで記録しました。サテライト通信を運用する場合に、衛星の方位を知る必要があります。以前は方位磁針を持ち込んでいたものの、誤差が大きく実用には難がありました。ID-52の進行方向表示と船の進行方向を揃えると、方位を知ることができます。

行きのフェリーでは、サテライト通信でグリッドロケータ(4桁)をアナウンスしながらCQを出しました。合計14QSOで、そのうち陸地が存在しないグリッドのPM89では4QSO、さらに、数分しか通過しなかった、同じく陸地が存在しないPN93で2QSOできました。HF帯は伝搬のコンディションが悪く、交信はできませんでした。


写真1 フェリーでの運用の様子

7MHz帯が、例年にも増して厚いパイルアップに

今年の大型連休は自宅で過ごされる方が多いとみられ、そのため7MHz帯や10MHz帯は例年にも増して厚いパイルアップになりました。

サテライト通信では、午前5時台に利用できる衛星が集中するので、できるだけ午前5時台から運用を始めるようにしています。この時間、一般に7MHz帯の国内近距離はまだコンディションが悪く、伝搬が不安定です。しかし、北海道での運用では、特に西日本とは距離があるため、午前5時台でも7MHz帯は強力に入感します。むしろ、ノイズや混信が少ないため、国内交信に適しているかもしれません。各地とも、7MHz帯は早朝からパイルアップになりました。

上陸から一夜が明けた4月29日は天気も良く気温も上昇し、絶好の移動運用日和でした。特に虻田郡(後志)京極町は、CWでの需要が多く、長時間のパイルアップになりました。(写真2)

北海道は郊外に出れば、広い場所はいくらでもあります。しかし、農地は防疫のため立入が禁止されていたり、路面状況が悪くタイヤが地面に埋まりやすい場所があったりするので、農道に車で進入することは厳禁です。可能な限り、インターネット上の地図や航空写真で運用場所を事前に調べておき、安全を確保してから運用するようにしました。

3日目の4月30日には札幌市から旭川市に移動しました。この日は一日中激しい雨で、写真を撮ることすら困難でした。さらに、旭川市に向かう途中では雪も降りました。伝搬のコンディションは、午前中の岩見沢市では28MHz帯で国内QSOができたものの、その後は天気と同様にパッとしませんでした。


写真2 虻田郡(後志)京極町での運用の様子

リクエストが多い上川郡(上川)の町村

HF帯、特に7MHz帯で日本の全市区町村と交信したい、という話を良く聞きます。全町村と交信する上で、まず離島が難関で、その次に、町村数の多い郡がネックになります。特に北海道の上川郡(上川)は、11の町があり広大で移動に時間を要するため移動運用が難しく、多くのリクエストが寄せられていました。これらの全部を回るには時間が無いので、今回は旭川市に近い、上川郡(上川)当麻町、比布町、愛別町の3か所だけ運用しました。当麻町と比布町は公園、愛別町は堤防上の空き地で運用しました(写真3)。

最初に運用した当麻町は、旭川市からの移動に時間がかかったため7MHz帯は午前6時半頃からの運用開始になりました。それでも1時間近く呼ばれ続け、ちょうど100局と交信できました。


写真3 上川郡(上川)当麻町での運用の様子

愛別町の次は、一気に北上して士別市に向かいました。ここも運用リクエストが特に多かった市です。大雨の後で、河川敷のグラウンドは冠水して誰も利用しておらず、広い駐車場で運用しました(写真4)。ここでは5時間ほど運用したにもかかわらず、HF帯のコンディションがあまり伸びず、さらに夕方になって信号が強くなるはずの3.5MHz帯も今一つで、少し物足りない結果になりました。


写真4 士別市での運用の様子

主に公園で運用し、網走方面へ移動

5月上旬としては気温が低く、最高気温が5℃以下の日が何日も続きました。雪でも耐えられる防寒具に、出発前に撥水スプレーで十分に撥水処理しておいたものの、降り続いた雨と雪で防寒具が濡れて、重く冷たくなっていました。

名寄市まで北上した後は、東に進路を変えて紋別市に向かいました。その間、山間部にある紋別郡西興部(にしおこっぺ)村では運用場所の確保に少し手間取りましたが、それ以外の市町村には広い公園があり、雨で利用者も少ないため、快適に運用できました(写真5、6)。

印象に残っているのは、「ラジコン飛行場」という看板を見つけて、ラジコンを飛ばす人がいるのかと思って行ってみると、施設は何も無い、単なる河川敷の広場でした。風雨が激しくなって誰もいないので、同じ電波を使う趣味として、アマチュア無線の運用に利用させていただきました。


写真5 上川郡(上川)下川町での運用の様子


写真6 紋別郡遠軽町での運用の様子

リクエストが多かった市町村の一つ、常呂郡置戸(おけと)町に移動しました(写真7)。その一つ前の運用場所である紋別郡遠軽町から、北見市の一部を通過して置戸町に移動し、その間の移動距離は60km近くになりました。

ここは山に囲まれていて広い平地が少なく、市街地の近くで運用場所を探すには苦労します。南側が開けた駐車場を見つけて運用してみたものの、伝搬のコンディションが悪く、7MHzでは近距離が聞こえるのみでした。遠距離との交信が難しそうだったので、この次の運用予定だった足寄郡陸別町に先に移動し、夜に再び置戸町に戻ることにしました。

陸別町では広大な牧場のそばで運用しました。北海道での運用と聞いて、牧場がある風景での運用を思い浮かべる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、牧場のそばで運用すると、牛の(好ましくない)匂いが車内に残ってしまい、その後に自動車用の芳香剤を購入して対応しました。

陸別町は、日本で最も気温が低い町として知られています。陸別用と置戸町の境界にある峠では雪が降っており、置戸町側で7MHz CWを運用した後、急いで撤収して標高が低い場所に移動し、雪による影響は回避できました。


写真7 常呂郡置戸町での運用の様子

(後編に続く)

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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