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Masacoの「むせんのせかい」 ~アイボールの旅~

第20回 気象庁HAMクラブ(JA1ZTF/JD1YAA)の皆さん

Masacoの「むせんのせかい」 ~アイボールの旅~

気象庁は、日本全国の陸地の観測だけではなく、各国と分担して海洋観測も行っていて、北西太平洋を担当! 気温や風向きなどはもちろん、海面から海底までの海流や水温、塩分や二酸化炭素など、気候変動や地球環境を知る上で重要なデータも計測しながら、決められたコースを数か月掛けて航海するそうです。そのための観測船の模型もあり、実は菅野さん、20年ほど前に気象観測船に2年間、気象観測担当として乗船していたことがあるそうです。


気象観測船の凌風丸(1,380トン)

「狭い船で、20日から2か月ぐらい航海するのは大変でした。見える風景は毎日変わらない、水平線だけですし(笑)」(菅野さん)

--あら、お船からアマチュア無線はやらなかったのですか?

「一度だけ、持参したホイップアンテナをデッキに仮設して無線機をつないでみたことがありますが全然ダメでした。マリタイムモービルは人気がないのかもしれません…」

--わあ、残念!!

そして、気象庁と言えば「気象レーダー」。その展示もたくさんありました!

--確か、富士山の頂上にも大きなレーダーがありましたよね? 小学校のときに教わりました。

「はい、1965(昭和40)年から富士山頂で有人のレーダー観測を行ってきましたが、1999(平成11年)に運用が終わって2001年に撤去されたんですよ。今は無人の気象観測施設が運用されています」

--あっ、そうなんや~! もうないんですね。


気象レーダーの歴史や原理が学べるコーナー。富士山レーダーに与えられたIEEEのマイルストーンのプレートも展示されていました

「はい。最近は気象衛星を使って宇宙から詳しい観測ができるようになりました。また全国各地に配置されたレーダーのデータを合成して、日本全体をカバーできるようになっています。富士山測候所の冬季の有人観測や、職員の交代は山全体がアイスバーンで本当に大変だったようですよ。昔は富士山測候所にもアマチュア無線クラブ(JA2YYN)があって、交信を行っていました」

「富士山レーダーは、IEEE(アメリカの米国電気電子学会)の“マイルストーン”という国際的な賞をもらったこともある大変な技術でした。その前に日本でこれを受賞したのは八木・宇田アンテナだったそうです」

お二人からのお話で、気象や気象庁の知識がどんどんアップデート(汗)。そして気象レーダー自体にも進歩があるんですって!!

「雨をより正確に観測できるよう、レーダーの発射する電波の偏波面を変えて観測する技術が進歩してきました。また現在の気象レーダーは、上下方向に首を振りながらクルクル回転して観測するパラボラアンテナが主流ですが、今後は上下方向の広範囲を一度にカバーするフェーズドアレイレーダーが使われるようになり、観測時間の大幅な短縮が図れることになります」

ますます早く観測ができるようになるんですね~! とっても面白くて勉強になりました。気象科学館、皆さんにも超オススメです!

気象庁 気象科学館 http://www.jma.go.jp/jma/kishou/intro/kagakukan.html

このあと、売店で「はれるん」のストラップを買って、クラブの皆さんが集まってくださった会議室へ!!

気象庁HAMクラブの皆さんへインタビュー!!

会議室に集まってくださったのは菅野さんと五味さんのほか、伊藤さん、千葉さん、大谷さんの合計5名です。お忙しい中、ありがとうございます!


集まっていただいた「気象庁HAMクラブ」の皆さん

「気象庁HAMクラブ」のメンバーは、おもに本庁舎に勤める職員の方で、部署は「予報部」「観測部」「地震火山部」「地球環境・海洋部」「東京管区気象台」などさまざま。「気象庁は無線を使うことが多い官庁なので、このクラブにもプロ資格をお持ちで通信関連のセクションを歩んでいる方が多いです」というお話でした。このほか地方の測候所などに勤めるメンバーもいらっしゃるそうですよ。

最初に、5人の皆さんに自己紹介とアマチュア無線を始めたきっかけなどを伺いました。

★五味さん(JF1GZZ)
「小学生の時、学習雑誌についていたゲルマラジオが面白く、モーターを分解して取り出した電線を部屋中に張って聞いたり、クリスマスプレゼントでもらったおもちゃのトランシーバーで“交信ごっこ”をして無線の世界に目覚めました。

中学校のときにハムになり、JR0GMCのコールサインで開局。そして気象庁へ。気象庁には無線や天文、山登りが好きという人が多いですね。皆さんはプロの資格を持っているのに、自分はアマチュア無線技士の資格のみというのが、ちょっと恥ずかしい感じがしています」。(「そんなことナイナイ!」「1アマじゃないですか~」と周囲の声♪)

★伊藤さん(JS1SDU/JH2GDN)
「入学した名古屋の亀島小学校にアマチュア無線クラブがあり、10歳のときに資格を取りIC-71で開局しました。船舶通信士になりたかったのですが、恩師の勧めもあり気象庁に入りました。岩手県のロケット観測所や名古屋、成田空港、大阪、気象庁本庁などを歴任しています」。


JF1GZZ 五味さん(左)とJS1SDU/JH2GDN 伊藤さん(右)

★千葉さん(JA1ALS/JA7QNL)
「宮城県に住んでいた中学2年生の時にアマチュア無線のことを知り、電波に興味を持ち、仙台の電波高専に進学して卒業後は東京に憧れて気象庁に入りました(笑)。コンテストに参加するようになったのは、気象庁HAMクラブに入ってからです」。

★大谷さん(JH4DHX)
「島根県出身で、中学生のときに“初歩のラジオ”を見てラジオに興味を持ちました。通信販売でゲルマラジオを買い、自転車の発電機のコイルをアンテナにしてみたり、機械式メモリーができるカーラジオでBCLを楽しんだりしてから、高校生の時にハムを取得。

最初は50MHz帯の無線機を買って電波を出したのですが、島根では相手局が誰もいなくて、“もうやめようか…”と思ったときにEスポが出て、日本中から呼ばれて俄然面白くなり・・・。大学の無線部ではコンテストに参加していましたが、気象庁HAMクラブで30何年ぶりにコンテストに出ました。やっぱり呼ばれないと面白くないですね。

あとは衛星通信や流星反射通信にも興味があり、JAMSATなどの団体にも入って活動しています」。

★菅野さん(JA1UWW)
「祖父が電気店を営んでいたので、小さい頃から電子工作やラジオが好きでした。高校卒業の年にハムの資格を取得。開局した当時(1990年)はパケット通信が大流行していて、その面白さにハマりました。現在は千葉県に住んでいますが、県内にはまだFWD-RBBSが7、8局あって私も参加しています。これだけはなぜかやめられません(笑)。

気象庁の採用面接の話が来たとき、採用条件に“南鳥島に赴任すること”と書かれていました。友人のハムに相談したら、“お前、絶対に行け! 行って交信してこい!!”と説得されました(笑)。

それで、山形地方気象台で2年、気象観測船で2年の勤務経験のあと、平成7年から南鳥島に行き、ライフラインである電気や発電関係のメインテナンスを担当するようになりました。島全体のことが見渡せる仕事なので楽しいです。これまでに通算で21回も現地勤務を行っていますが、現地から個人局で約4万局と交信していますよ」。


JA1ALS/JA7QNL 千葉さん(左)、JH4DHX 大谷さん(中央)、JA1UWW 菅野さん(右)。大谷さんは私のライブにお越しいただいたこともあります。ありがとうございます♪

皆さん、少年時代にアマチュア無線と出会って、それが今のお仕事につながっているみたいです。ステキですね~☆

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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