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Masacoの「むせんのせかい」 ~アイボールの旅~

第47回 第一電波工業の皆さん

Masacoの「むせんのせかい」 ~アイボールの旅~

あけましておめでとうございます、Masacoです! 新しい年、2020年がやってきました! 今年は東京オリンピック・パラリンピックイヤー、ハムフェアは10月末と、いつもとは違う年になりそうですね。そうそう、3月のIC-705の発売も待ち遠しいなぁ! これを担いで山登り運用もしなきゃ! そして今年もあなたの所へ取材にお邪魔しますよ。盛りだくさんな1年の始まり始まり~♪ 読者のみなさん、引き続きあったかい愛で、どうぞよろしくお願いいいたします。

さて今月は、アマチュア無線用やライセンスフリー無線用、プロ用のアンテナメーカーとしてお馴染みの第一電波工業株式会社を訪問するため、埼玉県川越市にお邪魔しましたよ~!

第47回 第一電波工業株式会社の皆さん


「ダイヤモンド」ブランドのアンテナでおなじみの第一電波工業。本社は東京都板橋区にありますが、アンテナの開発と一部製品の製造は埼玉県川越市の川越事業所で行っているそうです。JR川越線の南古谷駅から車で5分、かわいいレストランのような外観の川越事業所に到着しました!


第一電波工業の川越事業所に到着!! 建物はおしゃれなレストランのような外観♪

「Masacoさん、お待ちしていました!」出迎えてくださったのは取締役社長の前嶋正寛さん。実は私、前嶋さんとはいろいろなアマチュア無線イベントで何度もお会いしています。とっても気さくで優しい方なので、最初にお会いしたときは社長さんだとは気付かなかったほどです。スミマセン・・・!

「Masacoさん、川越事業所は初めてですよね? 最初に少し、中をご覧になってください」ということで、建物の中を案内していただきました。

川越事業所の中を見学!!

まず案内していただいたのが、会議室の一角にあるクラブ局のシャック。現在は“再整備の真っ最中”ということでしたが、懐かしい昭和の真空管式の無線機とIC-7610Mが並んでいました。


再整備中のクラブシャックです。IC-7610の前でちょっとポーズ!!

IC-7610Mでは7MHz帯がよく聞こえていました。「どんなアンテナをお使いですか?」と伺ったら、「屋上に設置してあるHFV5という短縮型のV型ダイポールです。障害物のない場所に取り付けて、ちゃんと調整すると、フルサイズにもひけを取らない性能を発揮するんですよ」と。クラブ局の運用が再開するのが楽しみですね!!

会議室の壁には、たくさんのモービルアンテナの展示パネルや、グッドデザイン賞を受賞したときの賞状がありました。


会議室の壁にはロングセラーのモービルアンテナ「スーパーゲイナーシリーズ」がズラリ!!


グッドデザイン賞やエコステージ認証書まで賞状もたくさん。会社の歴史を感じます!

私がキョロキョロしていると、「そうそう、面白いものがありますよ。たぶんMasacoさんはご覧になったことがないと思います」と前嶋さんが細長い木箱に入ったモノを見せてくださいました。

木箱の正面は透明のアクリルパネルになっていて、中に金色のモービルホイップが入っています。見るからに豪華な作りです!!


特製の木箱に入った、豪華なモービルアンテナ! 初めて見ました!

--これは豪華なアンテナですね!初めて見ました! 何かの記念で作られたのですか?

「はい、当社のモービルホイップアンテナのスーパーゲイナー(SUPER GAINER)シリーズが累計50万本出荷を突破したのを記念して、1996(平成8)年の秋に2か月間だけ限定発売した、SG7000Gのリミテッドバージョンです。アンテナは全体に金メッキが施されていて、ゴールドプレート付きの木箱に入っています」

--アマチュア無線のアンテナで、シリーズ累計50万本って凄いですね!! このリミテッドバージョンは1本おいくらだったのですか?

「当時の価格は15,000円でした。購入された方のコールサインを刻印するサービスも行ったんですよ」

--本当だ、コールサインが彫ってある!!

使うのがもったいないくらいキンキラキン! コールサイン入りで何とも特別感があります! このアンテナを買った方は、木箱を開けずにそのままシャックに飾ってるのかなぁ。


たった2か月間だけ注文を受け付けた限定アンテナ。希望者にはコールサインの刻印サービスもあったそうです

続いて社内見学をさせていただきながら別室へ。実はこの川越事業所には、D-STARレピータの「JP1YKW」(川越430、周波数434.20MHz)が設置されています。同行してくださったJR1UTI 藤田さんが「このレピータは埼玉県内に3つあるD-STARレピータの1つで、2013年に開局したものです。埼玉県の南西部をよくカバーしているんですよ」と教えてくださいました。


事業所内のいろいろな場所を見学させていただきました


設置されているD-STARレピータ局「JP1YKW(川越430)」のことを、埼玉県内のD-STARレピータのオーソリティ、JR1UTI 藤田さんが教えてくださいました

そして建物の外階段を上がって3階の屋上へ! ロケーションはVYFB!! 周囲に大きな建物がないので、電波は360度どこへでも飛んでいきそうです。前に私がお邪魔した埼玉県比企郡の堂平山も見えました♪


広くてロケーション抜群の屋上!! 手すりのあちこちにアンテナが取り付けられています

アンテナメーカーらしく、屋上の手すりのあちこちに、いろいろなアンテナが取り付けられています。また建物の両サイドにはクランクアップ式のアンテナタワーがあって、指向性アンテナのビームパターンが測定できるようになっていました。また1つ下がった2階のバルコニーには、モービルアンテナの開発に使うため、セダン型の乗用車も置かれています。どうやって2階に置いたのかしら?? そのことが何より気になっちゃって! 笑。

ちなみに、クラブ局用のHFV5は下の写真の左側にあります。そして中央の逆L型のパイプの上に取り付けられているのがD-STARレピータ用のGPアンテナです♪ 屋上にいらした技術の方が「同じ周波数帯のGPアンテナを2つ横に並べると、お互いが干渉して指向性などに影響が出るので、干渉を減らすためにこうして上下に並べています」とのことで、アマチュア無線ではあまり見かけない、プロの技かも!?


左がHF用V型ダイポールのHFV5。中央の一番高いところに設置されているのがD-STARレピータ局用のGPアンテナです

工夫を凝らした無線デモカー

さてさて第一電波工業というと、いろいろなアマチュア無線イベントで、無線機とアンテナを満載した無線デモカー(キャンピングカー)を展示することで知られていますよね。皆さんもハムフェアやKANHAMなどでご覧になった事があるのではないでしょうか!? そこで前嶋さんに「あの無線デモカーも川越事業所にあるのですか?」と伺ったら、「はい、今日は軽キャンパータイプを用意しています」とニッコリ!! さっそく駐車場で見せていただきました。

見せていただいたのは、2018年に完成した軽ワゴンがベースのキャンピングカー! とても小さくて可愛いんです♪ でも車内には1人がゆったり寝られるベッドと引き出し式のトイレ、小型の流し台がついていて、ラックには無線機がズラリ!! ベッドの下には大型のサブバッテリーを搭載しているので、エンジンをかけなくても長時間の運用が可能です。もちろん各バンドのアンテナもいろいろと装備していますよ。


軽ワゴン車をベースにしたかわいい無線デモカー(キャンピングカー)を見せていただきました


軽ワゴンでも内部は広々! 無線機用のラックやベッドのほか、トイレ、冷蔵庫、FFファンヒーター、サブバッテリーなどを装備しています


屋根の上にはソーラー発電用パネルと、走行中でも衛星放送(BS)が受信できるキャンピングカー用のアンテナ(もちろん第一電波工業製)も!!

--第一電波工業の無線デモカーって、よく車両が変わりますが、これまでに何台あったのですか?

「はい、初代が大型キャンピングカー(キャブコン)の“ダイヤモンド号”で2012年に登場しました。次がランドローバーのディフェンダーという硬派な車両を使った無線デモカーで、装備が異なる白い車両と黒い車両の2台同時に2014年に登場しました。さらにハイエースの1BOXを使ったキャンピングカーが2016年に登場して、2018年に現在の軽キャンパーを導入しましたから、これまでに5台ということになります」


2012年に登場した初代の無線デモカー「ダイヤモンド号」。総費用は1,200万円を超える豪華な仕様が話題になりました


2014年に登場した、ランドローバーのディフェンダーを使った無線デモカー。装備の違いで「白」と「黒」の2台がありました


2016年に登場した、トヨタのハイエースをベースにした「新・ダイヤモンド号」。FB Girls Radio Clubの移動運用でお借りしたこともあります♪

--そういえば、FB Girls Radio Clubの移動運用に、ワンボックスタイプの無線デモカーをお借りして、埼玉県内の公園から電波を出したことがあります! 寒い日だったけれど、ヒーターが入っていて車内がとても暖くて快適でした!

「そうなんです。FFファンヒーターとサブバッテリーとトイレは欠かせない装備ですね。あとは冷蔵庫や流し台も設けて、災害現場などでも“本当に長時間運用できる無線車”というコンセプトで作っています」

--アンテナの取り付け方とか、配線の引き回しなども見た人が参考になりますね。

「はい。この無線デモカーと同じ物を作るのはお金も掛かりますが、ご覧になった皆さんが1つでも2つでも、自分のモービル局作りの参考になれば…と思ってやっています。キャンピングカーのイベントや防災関係のイベントにも参加して、いざという場合に役立つアマチュア無線のPRも行っています」

--この次の車両の計画もあるのでしょうか?

「はい。まだナイショですが面白い車両を考えています。ご期待ください」

--わあ、楽しみです!

ハンディ機用のアンテナ調整は大変!!

このあと、技術部の部屋で担当の小林さんから面白い実演を見せていただきました。

「Masacoさん、いつも皆さんが使っているハンディ機についている、1/4波長がベースのホイップアンテナは、アンテナ単体で測定した場合とハンディ機に取り付けて手に持った場合で、SWR特性が全然違うのをご存じですか?」

--いえ、知りませんでした。でも、アンテナ単体で測定したほうが正確な感じがしますね。

「実はハンディ機は、手に持って口元に近づけて交信するものなので、ハンディ機用のホイップアンテナも、実際に使う位置で一番性能が上がるように設計・調整しているんです」

--え、そうなんですか!

ここで小林さんが試作アンテナをダミーのハンディ機に取り付け、測定器に接続して実演してくださいました。ハンディ機を机に置いたとき、口元に近づけたとき、手を伸ばして高く持ち上げた時でSWR特性(中心周波数やSWRの最良値など)がかなり変わりました。測定器で見てみると一目瞭然です(測定器につながっている同軸ケーブルの影響が出ないように補正して測りました)。


測定実験に使った140MHz帯のデジタル小電力コミュニティ無線用アンテナ。ベース部のコイルで全長が短縮されていますが、1/4波長のホイップアンテナです


ハンディ機(測定用筐体)にアンテナを取り付けたものを手に持って、位置や高さ、持ち方を変えるとSWRがいろいろ変化するのがわかりました


実験に使った測定器(ネットワークアナライザ)。画面の上がスミスチャート、下がSWR特性グラフです

小林さんは「実はハンディ機を持つ方の身長や、身体の水分量でもSWR特性が変わってきます。またハンディ機を斜めに持つのか、まっすぐ持つのかでも異なるんです」と教えてくださいました。なんだか体脂肪計みたい!?

また「最近はアンテナアナライザをお持ちの方が増えていますが、アナライザにホイップアンテナを直接繋いで“このアンテナはSWRが下がらない”と指摘されると、“いえいえ、それは測定方法が違うんですよ”という気持ちになります」という技術者のホンネも!?

そうそう、アンテナを取り付けるハンディ機のボディが、金属製か樹脂製かでも特性が変わってくるため、第一電波工業では標準の測定用筐体を設けているそうです。アンテナの設計と調整はとても手間がかかるんですね。これからは背筋を伸ばして、正しいポーズ(?)で交信しなくちゃ!?

第一電波工業のあゆみとこれから

最後に応接室で前嶋さんにお話を伺いました。

第一電波工業は現会長の福井賢一さんのお父様である福井得雄さんが昭和43年(1968年)に開業した会社で、昭和45(1970)年に第一電波工業株式会社として発足したそうです。ちょうど50年という大きな節目を迎えました。


お話を伺った第一電波工業の取締役社長、前嶋正寛さん

最初はHF帯のバーチカルアンテナや、50MHz帯と144MHz帯の固定局用グランドプレーン、そして輸出用の27MHz帯CBアンテナが中心でしたが、やがて自動車に無線機を搭載して交信を楽しむ「モービルハム」が人気になり、モービルアンテナをはじめ、144MHz帯や430MHz帯のアンテナのラインアップを拡充していったそうです。


1970年の無線雑誌に掲載された、創業間もない第一電波工業の広告。まだHFのバーチカルと50MHz帯、144MHz帯のGPアンテナが中心のラインナップです

ちなみに創業当時から使い続けているブランド名の「ダイヤモンドアンテナ」ですが、“世界中の人に親しんでもらいたい”という思いから、世界で通用する言葉である“ダイヤモンド”を入れて命名したそうです。これまでに何度もグッドデザイン賞を受賞するなど、アンテナの性能だけでなく、デザインや使いやすさ、安全性なども追求しています。

前嶋さんから伺った「Masacoさん、アマチュア無線のアンテナには流行があるんですよ」というお話がとても印象的でした。

「例えばモービルアンテナでは、昔は144MHz帯の5/8λ(ラムダ=波長)とか7/8λといった長くて利得の高いものが人気を集めていました。その後はノンラジアルタイプが流行するようになり、現在は全長1m以内のコンパクトなものが主流です。HFの固定用アンテナもHFV5のようなコンパクトなV型ダイポールが中心です」と、流行が変化しているのだそうです。

そこで第一電波工業では、今のアマチュア無線家の好みをリサーチし、ニーズに合った製品作りをするために、全国で行われる「ハムフェア」や「ハムの集い」といったイベントには積極的に参加しています。「メーカーや無線ショップ主催のものまで入れると、年間で100件近いイベントにブースを出展しているのでは…」とおっしゃっていました、数の多さにビックリ!!


ハムフェア2019の第一電波工業ブース。さまざまなイベントに年間で100件近く出展しているそうです

2019年は、アイコムの144/430/1200MHz帯オールモード機・IC-9700が発売されましたが、その直後から1200MHz帯のアンテナや、144/430/1200MHz帯のトリプレクサ(3バンド分配・共用器)が驚くほど売れたそうです!

そして2020年は春にHF~430MHz帯のオールモードポータブル機・IC-705の発売が始まります。「ポータブル運用に便利なHF~430MHz帯のアンテナのニーズが高まりそうですから、当社も間に合うように新製品などを準備したいと思っています」というお話もありました。期待したいですね♪


2019年12月21日に大阪、22日に東京で行われたアイコムの「IC-705プレ視聴会」にもブースを出展。IC-705を使ったフィールド運用が楽しくなりそうなアンテナをいろいろ展示しました

また第一電波工業は、ライセンスフリー無線用のアンテナのラインアップが充実していることでも知られています。


ライセンスフリー無線関連のイベントにも2台の無線デモカーで参加!! アンテナや周辺機器の展示や使い方の提案を行いました

これは代表取締役会長の福井賢一さんから「351MHz帯のデジタル簡易無線登録局は、業務からホビーまでさまざまな用途で使われていますが、ホビーでは昔のアマチュア無線のような雰囲気があり、気軽でフレンドリーな交信が行われているので私も大好きで楽しんでいます。愛好家にダイヤモンドアンテナのブランドを知っていただくためにも、積極的な商品展開をしています」と教えていただきました。

最後に会社の夢について、前嶋さんに伺いました。

「当社は創立50周年を迎えました。ここまで長く続いていた会社をさらに発展させるため、ここで一度初心に戻り、すべての社員と一緒に築き直していこうと思っています。製品については“ダイヤモンド”のブランドを今後も存続させていきます。アマチュア無線という趣味は、車にアンテナが取り付けにくくなったとか、アパマン住まいでアンテナに困っているといった弊害があると続けにくくなりがちです。そこで弊害に対応できる商品作りができる会社にしていきたいと思います」と、決意を込めて力強くおっしゃっていました。


前嶋さん、楽しく、情熱的なお話をありがとうございました!!

--前嶋さん、会長の福井さん、そして社員の皆さん、年末のお忙しい中ありがとうございました。環境や暮らしの変化に合わせて常に臨機応変に追求している「ものづくりの原点」は、私の音楽づくりにも共通し、学びをいただいた気持ちです。どんなに性能の良い無線機でも“電波の出入り口”であるアンテナをおろそかにしたらハムの楽しみは十分味わえない・・・。ユーザーさんの声にもしっかりと耳を傾けて、アイデアや思いが詰まったアンテナ! 私の小さなベランダでもチョコンとかわいく空を見上げてるのですが、なんとも愛おしくなってきました。作ってくださった方へ感謝の心を持ちながら、これからも無線ライフを楽しもう! 2020年も各地のイベントでお会いしましょう♪

(JH1CBX Masaco)

★Masacoプロフィール

兵庫県生まれ。シンガーソングライター。
学生時代は陸上競技ランナー、全日本インカレ出場。公務員となったが「歌い手になりたい」を実現すべく退職し上京。

NHK朝の連続ドラマ小説出演などを経て、IBS茨城放送のレギュラーラジオ番組パーソナリティーを6年、ラジオNIKKEI第一でもパーソナリティーとして活躍。全国高校統一模擬試験「英語リスニングテスト」の 日本語出題ナレーターなども務める。

オリジナル「あなたとともに咲かせましょう/むせんのせかい」はバックに流れるモールス信号も話題となり無線愛好家からの支持も得る。昭和歌謡の懐かしさに心躍る最新作「晴れおんな」ではMasacoの新しい世界を聞くことができる。

コールサインはJH1CBX(第3級アマチュア無線技士)

・公式サイト:http://www.19box.net/masaco/
・オフィシャルブログ(Masaco Diary):http://blog.goo.ne.jp/33masaco/
・Twitter:https://twitter.com/Masaco3
・Facebookページ:https://www.facebook.com/Masacosama

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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