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今月のハム

JA9CCG 福田良さん


メインのリグはIC-7700、アンテナは地上高15mの14/21/28MHz 4エレトライバンド八木

金沢市で14/21MHzのSSBを中心にオンエアされているJA9CCG福田さん。アマチュア無線と出会ったのは中学生の時。当時、BCLを楽しんでいて、偶然7MHz帯のAMでアマチュア無線の通信を聞き、その存在を知った。その後、CQ誌を読んでアマチュア無線の面白さや楽しさを知り、自分でも電波を出してみたいと思ったそうだ。

免許を取得したのは高校1年生の時。当時はTX-88(送信機)+自作の受信機とTVフィーダーを活用して作成したワイヤーアンテナを使い、3.5/7MHz帯のAMで国内QSOを楽しんでいた。「アマチュア無線に夢中になり過ぎて、勉強がおろそかになって希望の大学にも行けなかった」と当時のことを振り返り、笑いながら話す福田さん。高校時代は全生活の8割を、アマチュア無線に注ぐほど没頭していたそうだ。

大学時代は、金銭的にも余裕がなくQRTせざるを得なくなった。卒業後は地元の新聞社に就職。入社後7~8年が経ち、ようやく時間に余裕ができたためアマチュア無線を再開。2アマ、1アマと確実にステップアップしていった。

福田さんは相手の肉声が聞こえ、時には冗談が言って笑い合えるPhoneが一番好きとのこと。今もDXCCには全く興味がなく、海外ハムとのラグチューが中心だ。ラグチューが中心だからこそ、福田さんの思い出話はつきることがない。

アメリカの軍用機と21MHzSSBでQSO
20年以上前、21MHzでWの局と交信していた福田さん。Wの局なのにやけに電波が強いので不思議に思いQTHを尋ねてみた。すると「横田から本国向けの軍用機で飛行中」という返事が返って来た。飛行機好きの福田さんが機種を尋ねたところ「KC-135(4発の大型空中給油機)」とのことだった。その時は「軍用機からアマチュア無線の運用ができるわけがない」と半信半疑で聞いていた。その後、急激に信号が弱くなりフェイドアウト。「怪しいハムだなぁ」という印象だけが残ったそうだ。しかし、1年後、QSLカードが届いた。そこにはKC-135のイラストが描かれており、さらに「I fly KC-135(私はKC-135の操縦者です)」とのコメントがあった。突然フェイドアウトしたのは「地平線の彼方へ飛び去ったからなんだ」と、この時初めて知り、あらためて感慨にふけることになった。

南氷洋で難破寸前の漁船に湧きあがる歓声
1980年の夏、深夜、アンテナを南に向けワッチしていると、か細い信号が聞こえて来た。その信号はノルウェーの漁船からのもので「南氷洋で操業していて大時化(おおしけ)に遭い、海難事故寸前」という。福田さんが万一に備えて場所を聞き出し、経度と緯度を元に地図で調べると、ある島の近くだということが判明。「○○島の近くですね?」と尋ねると、まわりで聞いていた乗組員たちも一様に安心したようで「ヤッホー!イエス!イエス!」と大合唱となり、その声や拍手がスピーカーから聞こえて来たそうだ。遠く離れた日本のハムの声が、不安な乗組員たちに勇気と希望を与えることができたことに、福田さんはアマチュア無線の存在の大きさを感じたのだった。

JAS-1(日本初のアマチュア無線衛星)の産声を聞く
1986年8月、日本初のアマチュア衛星「JAS-1」が種子島宇宙センターから打ち上げられた。以前から衛星通信を楽しんでいた福田さんは、その信号(ビーコン)が届くのを、今か今かと待ち続けていた。しかし、予定の時間が近づいてもビーコンは入感せず。「失敗したか」と落胆した。でも、そこは好奇心旺盛なハム。簡単には諦めなかった。周辺の周波数を丹念にワッチし続けた。すると、微弱なビーコンが予告されていた周波数の少し上で聞こえて来た。ドップラー効果で周波数が上にシフトしていたのだ。最初は、か細かった信号も、日本上空を通過する頃には強力に入感するようになった。ハム暦50年の福田さんだが「このビーコンを聞いた時の感動と興奮は一生忘れられないだろう」と話す。


衛星通信はIC-271とIC-371のコンビネーション。仰角ローテーターも装備している

突然わが家にやって来たWのハムたち
出会いやハプニングは空の上だけではない。30年ほど前、朝6時、福田さんのもとへ1本の電話がかかって来た。電話に出ると英語で「過去にあなたとQSOしたことがある。あなたのコールサインをよく覚えている。今、列車で金沢駅に着いたが、あなたを訪問したい」とのことだった。その日は仕事もあったので、とりあえず夜に来て欲しいと伝えた。自宅では急遽、歓迎会の準備となった。そして、やって来たのはカリフォルニア州政府に勤めるJoe(WB6NPC)だった。日本を旅行中、ふらりと金沢にやって来て、福田さんのことを思い出し、連絡して来たそうだ。犬嫌いのJoeだったが福田さんが保健所から救出して室内で飼っている愛犬には気を悪くするようなことはなく、それどころか2年後再びやって来た時には犬好きになっていたそうだ。

さらに、もう一人。イリノイ州立大学の電子工学の教授であるJim(KA6A)も突然やって来た。20年ほど前のことだ。学会に出席するため金沢に来ていて、福田さん宅を訪れたのだ。シャックでPCとキーボードを使ってRTTYやCWの送受信を見せると、モニターに現れる英文に随分驚いていたそうだ。その後、何度かQSOしたが、慌しいコンテストの時でも、「TNX FER KANAZAWA MEMORY」と送ってくれるという。その度「ハムほど素晴らしい出会いのある趣味はない」と感じるそうだ。また、彼からはコールサイン入りのキャップが送られて来たそうで、今でも大切に使用されていた。

2人のハムの訪問は、福田さんのラグチューという交信スタイルが、お互いの距離を縮め、親交を育んだ結果生まれた嬉しいハプニングと言えるだろう。これからも、海外局とのラグチューを中心にアマチュア無線を楽しんでいきたいと話す福田さん。また、新たな出会いや印象深いQSO、想像もしていない嬉しいハプニングが待っているに違いない。

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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