日本全国・移動運用記
2023年5月1日掲載
浜松市には、現在7つの区があります。しかし、2024年1月1日に、3つの区に再編されることが決まりました。それに伴い、中区・東区・西区・南区・北区・浜北区の6つの区は消滅します。これらの消滅する区との交信を希望するリクエストに応えるため、2023年のうちに浜松市で複数回の運用を計画しました。
現時点での運用の成果や、現地の状況で気づいた点について、以下で紹介します。
浜松市は、2007年4月1日に政令指定都市に移行し、7つの区が設置されました。2023年2月22日に、浜松市区及び区協議会の設置等に関する条例の一部を改正する条例が議決・公布され、2024年1月1日に、7つの区から3つの区に再編されることが決まりました。これにより、6つの区が消滅して、2つの区が新設されます(図1)。
天竜区だけは、区域の変更がありません。詳細については、浜松市の公式サイト https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/kikaku/kuseido/index.html などでご確認ください。
図1 浜松市の区の再編
浜松市の区の再編を知った直後の2月12日に、1回目の移動運用に出かけました。2月ではEスポが発生する確率は非常に低く、HF帯は1.9~10MHz帯が主体になります。
特に、1.9MHz帯とサテライトを運用する移動局は、私以外には非常に珍しいと思われるので、まずここを埋めようと考えました。2月では、朝の5~6時ごろにも1.9MHz帯で交信できるチャンスがあります。
10MHz帯は、数年前までの太陽黒点が少ない状況では伝搬のコンディションが悪く、国内の近距離との交信自体が困難な時期もありました。2023年は太陽黒点数が多くなった影響で、昼間の10MHz帯でもかなり高い確率で近距離交信ができるようになりました。
早朝は、浜北区の天竜川河川敷に出かけました。浜松市の東側である浜北区・東区・南区は、天竜川の河川敷で広いスペースを容易に見つけることができます。2024年1月の区の再編後も、多くの移動局がこの付近で運用すると予想されます。地面が自然のままの場所では、大きな石や倒木が地面から飛び出していることもあり、夜間に車で進入する場合は注意が必要です。昼間に下見をしておくと良いと思います。
写真1 東区の運用場所の様子(2月25日に撮影)
HF帯のアンテナは長さ40mの逆L型ロングワイヤーと、オートアンテナチューナーの組み合わせにしました。HF帯で近距離と電離層反射で交信するには、垂直型よりも水平型のアンテナの方が、上方への電波の放射が多く、有利になると考えたためです。
水平型のアンテナとして、ダイポールアンテナでは設置に時間がかかるのと、両端の2点を地面から浮かせる必要があり、周囲に何も無い河川敷のような場所では設置が難しいので、端の1点を地面から浮かせるだけで済む、手軽な逆L型にしました。結論から言うと、このアンテナで1.9~50MHz帯まで快調に交信ができており、作戦としては良かったと考えています。
続いて、浜北区から数km南に進んで、東区の河川敷で運用しました(写真1)。河川敷では凧揚げやラジコン飛行機を楽しむ人たちがおり、人のいない場所を確保する必要がありました。通常、昼休み時間帯になると14~28MHz帯の近距離伝搬のコンディションは悪化する傾向がありますが、逆L型アンテナの効果があり、28MHz帯で9QSOできました。
中区は、人口密度が高く、浜松市で最も運用場所の確保が難しい区で、駐車場所の確保に苦労することがあります。しかし、強い雨が降り始めたためグラウンドなどを利用する人が少なくなり、アンテナを設置する場所も問題無く確保できました。10MHz帯がものすごいパイルアップになりました。
北区は、山地も含めて運用場所は多くあります。しかし、市街地からは移動に時間がかかるので、市街地に近い公園で運用しました(写真2)。ここでも、10MHz帯がパイルアップになり、さらに、夕方に28MHz帯の近距離が良く聞こえてきて13QSOを記録しました。冬季の伝搬コンディションで、かつ1か所あたりの運用時間が短い早回り移動でも多くのQSOができたので、需要が多いことがうかがえます。
写真2 北区の運用場所の様子(2月26日に撮影)
2月25~26日にかけて、消滅する6区全てで1泊2日の運用を行いました。前回の運用では1日4か所で、1か所の運用時間が2~2.5時間程度だったところ、今回は1日3か所に絞り、1か所の運用時間を3~4時間に延ばすことで、時間的に余裕ができました。
まず、前回に運用できなかった東区の1.9MHz帯を埋めるため、早朝に東区の天竜川河川敷に移動しました。路面も整備されてトイレもある場所がありました。ところが、太陽が昇って明るくなると、駐車場が多くの車で急速に埋まり、近くでは子どもたちが野球の練習を始めてボールが飛んでくる可能性もありました。そこで、人がいない場所に移動して運用を再開しました。
伝搬のコンディションは、14MHz帯の国内近距離は良かったものの、18MHz帯から高い周波数帯は苦戦しました。
天竜川河川敷を南下して、南区で運用しました(写真3)。伝搬コンディションはあまり良くなく、7~50MHz帯を2巡したものの、パイルアップになる場面はほぼありませんでした。
西区は海岸に近い堤防上で運用しました。ここでは車が揺れるほどの強風になり、アンテナが揺れてSWRが変動することもあって、HF帯の交信は思うように進みませんでした。1.9MHz帯のコンディションは良好でした。
写真3 南区の運用場所の様子
翌朝、北区の前回と同じ場所で運用を開始すると、早朝の伝搬の特徴で7MHz帯が安定していました。その後、浜北区に移動して、10MHz帯で多くの交信ができました。
中区は、運用場所が限られているため1.9MHz帯のリクエストが多かった区です。この日は、日没後も1.9MHz帯の遠距離がなかなか聞こえず、19時近くになってようやく福岡県と交信できるようになりました。伝搬のコンディションに恵まれなかったため、1.9MHz帯と14~50MHz帯は未交信の局が多いと予想されます。
4月16日に、第1回と第2回で運用していなかった天竜区にも行きました(写真4)。2月よりも4月の方がHF帯の伝搬が良くなることを期待したところ、28MHz帯で17QSOできるなど、良い結果が得られました。
しかし、次に移動した西区と南区では、伝搬のコンディションが低下してしまいました。14MHz帯から上の周波数帯では、電離層反射による近距離との交信が困難でした。7MHz帯や10MHz帯は伝搬が良かったものの、既に交信済みの局が多く、CQの空振りが多くなりました。
写真4 天竜区の運用場所の様子
QSO数の集計を表1に示します。区によってQSO数に違いがあり、その様子を図2のバブルチャートで可視化してみました。1.9MHz帯は南区、3.5MHz帯は東区と西区、7MHz帯は西区のQSOが少ないことなどが読み取れます。
ただし、QSO数が多い区・周波数帯の組み合わせでも、局数が多い1エリアとの伝搬の相性が良かったことが原因で、それ以外のエリアとはQSO数が少ない場合もあります。いずれにせよ14MHz帯から上のバンドはQSO数が少なく、5~7月のEスポシーズンに底上げを期待します。それから、全ての区では難しいかもしれませんが、ロケーションの良い場所を見つけて1200MHz帯でのQSOにもチャレンジしたいと考えています。
表1: QSO数の集計。1.9~430MHzはCW、サテライトはCW/SSB
図2: 区・周波数帯別QSO数のバブルチャート
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