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Masacoの「むせんのせかい」 ~アイボールの旅~

第70回 エフエム和歌山と和歌山七番丁430レピータ管理団体の皆さん

2024年5月1日掲載

Masacoの「むせんのせかい」 ~アイボールの旅~

皆さんこんにちは、Masacoです! あっという間に5月、太陽がキラキラと眩しい初夏がやってきましたね。4月21日に東京都羽村市で行われた「第4回ハムらde無線フェア」では、ミニライブと司会で丸一日会場にいましたが、無線家の皆さんが少年に戻ったようにワクワクした表情で、趣味の世界に没頭されている姿がとっても羨ましく、ほのぼのしました。

「今度はいつお空に出ますか? 電波で繋がりたくて3アマ取りました!」という方や、「学生の頃が懐かしくなって再免許を取得したんですよ!」って方もお声をかけてくださったのがうれしかった! それで私も、IC-705を持ってどこかの山から電波を出したいなーとウズウズしています(笑)。梅雨入り前のこの季節が、フィールド運用には最適!? ですよね! 「FB Girls Radio Club(JL3ZGL)」でも、個人コールのJH1CBXでも、CQを出そうと思いますので、耳を澄ましててね♪ 繋がりましょう!

さて今月は、D-STARレピータも設置しているという和歌山県のコミュニティ放送局を訪問し、なんとなんと! ラジオ番組にも生出演させていただいて、スタジオからD-STARを使った交信の様子も放送されましたよ~!

第70回 エフエム和歌山と和歌山七番丁430レピータ管理団体の皆さん


今回お邪魔したのは和歌山県の県庁所在地、和歌山市です! ここに2008年4月に開局したコミュニティ放送局「エフエム和歌山」(コールサインJOZZ7BE-FM、周波数87.7MHz、出力20W)があります。愛称は周波数にちなんで「Banana FM」、送信所とアンテナは市の中心部、和歌山城のすぐ近くにあるホテルの屋上に設置されていますが、その同じ場所にD-STARレピータの「和歌山七番丁430」(JP3YJD、434.36MHz)もあるそうです♪

FB NEWS編集部のほうで、エフエム和歌山の方と訪問の打ち合わせを進めていたら、「せっかくですから、Masacoさんに生番組へ出演していただけませんか? アマチュア無線のPRもお願いしたいと思います」というオファーがあったとか!? これは大変!!! D-STARのあらゆる活用法もしっかりインプットして臨まなきゃ!!! とプレッシャーも感じながら、3月22日(金曜日)に和歌山市へ向かいましたよ~。

和歌山市に着いてまず訪れたのは和歌山城! このお城は徳川御三家の1つ、紀州徳川家の居城として1585年に築城したのですが、幾度かの火災でも残っていた本丸の天守は、太平洋戦争末期の和歌山大空襲で焼失。現在のお城は1958年に鉄筋コンクリートで再建されたものだそうです。周囲は桜の木々がたくさん! 訪問したときはつぼみが少し色づいてきたところでしたが、満開になると桜に彩られたお城がとっても美しいそうです。


和歌山城の天守閣に立ち寄りました! 桜には少し早かったのが残念・・・


同じ場所から満開の桜と天守閣を写した写真! やっぱり映えますね~♪(写真: PIXTA)

その和歌山城から、エフエム和歌山の送信所があるホテルを見ると、確かに屋上に大きなアンテナが! カメラの超望遠レンズで見てみると、その横に別の白い垂直アンテナの先端? が少し見えます。あれがD-STARのアンテナかなぁ!?


和歌山城から見た、20階建てのダイワロイネットホテル和歌山。
屋上の一角(黄色い枠内)にエフエム和歌山の送信アンテナがあります


同じ場所から超望遠レンズで撮影した、ホテル屋上のアンテナ。
よく見るとD-STARレピータのアンテナ先端らしいもの(矢印)が見えています!

サテライトスタジオで生放送に出演!

そしてお城から歩いてホテルへ! 建物はなんと20階建て、1階から3階はショップやレストランが入居し、その2階の一角にエフエム和歌山のサテライトスタジオがあります。毎週金曜日のお昼前後の番組は、ここから生放送でオンエアしているそうで、私もゲスト出演させていただくことになりました。


ダイワロイネットホテル和歌山2階の、エフエム和歌山サテライトスタジオ(モンキースタジオ)に到着、ここで行う公開生放送にゲスト出演します!

「Masacoさん、今日はようこそお越しくださいました!」スタジオの前で、エフエム和歌山の山口理事長(JA3WJA)が待っていてくださいました。

--山口さん、きょうはよろしくお願いします!

「きょうは地元のアマチュア無線家の皆さんにも声を掛けておきましたので、大勢の方がMasacoさんの出演を見にいらしてますよ」

--わあ、ありがとうございます!! うれしいです♪

そして、私がお邪魔する番組「ランチブレイク・ラジオと一緒」のMC、フリーアナウンサーの宇和千夏さんにもご挨拶。簡単な打ち合わせの後、12時からのコーナーに出させていただくため、サテライトスタジオのテーブル(観覧席から1段高くなっています)に着席しました!


いよいよゲストコーナーが始まります。ID-51もスタンバイ!!

ちなみに! D-STARを使った交信を実演するので、愛用のID-51をテーブルに置きました。そして技術的な質問が出たときに“助け船”を出していただくために、アイコムの第2ソフト設計部長の足立さんが一緒に出演してくださることに!! かなりホッとしたのはここだけの話です!?


アイコムの第2ソフト設計部長の足立さんと一緒に出演。メッチャ心強かったです♪

『時刻は12時1分を回りました。さて今日3月22日は放送記念日です。このエフエム和歌山は、災害放送局としての一端を担って、このダイワロイネットホテル和歌山の屋上には電波塔も立っております。ということで今日はですね、電波に関するお2人にお越しいただいておりますので、たっぷりとお話を聞いていきたいと思います』という宇和さんのご紹介でゲストコーナーがスタート!!


大勢の方が観覧に来てくださいました。アマチュア無線家もたくさん!

私はアマチュア無線を始めたきっかけ(阪神淡路大震災も東日本大震災も経験し、アマチュア無線の活躍や重要性を知り、自動車の運転免許も持っていない自分が、何か1つ資格を取るなら“社会の役に立つもの”を取りたいなと思ったこと)や、アマチュア無線の“誰かと偶然つながる楽しさ”、自分のコールサインのこと、QSLカード交換の楽しみなどをお話ししました!

足立さんは、アマチュア無線で遠くと交信できる楽しさ、D-STARならハンディ機でも世界とつながり、音声だけではなくて位置情報や画像のやり取りもできること、そして、和歌山県内には地震などの災害に備えるため、紀伊半島の海岸沿いを中心にたくさんのD-STARレピータが設置されていることを説明しました。


コーナー中盤ではID-51を使って、D-STARレピータ経由で交信を実演。山かけで和歌山県、ゲート越えで東京都、大阪府の合計3局と交信しました♪

そしてコーナーの中盤では、私のID-51を使って、屋上のD-STARレピータ経由で交信を実演しましたよ!! 最初に山かけCQを出したところ、すぐに和歌山県紀の川市のJA3・・・局が応答してくださいました。「今、FM放送聞いていますよ!」ですって! メチャ嬉しい~!!

次はゲート越えで東京の「浜町430」につなぎ、7M4・・・さんと交信。「いまFMの生放送で、この交信の声がオンエアされていますよ~」とお伝えしたら、ちょっと嬉しそうな声が!? 最後に大阪の「平野430」にゲート越えでCQを出したら、なんとJL3ZGL(FB Girls Radio Club)のコールサインでYLさんに呼んでいただきました(メンバーの誰だろう・・・!? 笑)。「今、ラジオも聞いています。私の声もラジオに流れているんですよね。恥ずかしいです・・・」と、はにかんだ声! わあ、大阪市内からラジオ受信もありがとうございました~♪


スタジオ内に置いたIC-705で交信をモニターし、それが番組内で流れました

宇和さんとのお話が楽しかったのと、アマチュア無線のことをいっぱい話したくて、気が付いたら30分の出演予定が45分にもなっていました。私の曲「むこう岸」も掛けていただいて、大勢の方が見に来てくださって本当に感謝、感謝です!

13時の番組終了後には、サテライトスタジオに来てくださった皆さんと急きょアイボール大会が始まりました! お1人ずつマイクを持って自己紹介、そして私へのメッセージをいただき、嬉しかったです! 遠くから駆けつけてくださった方もいて、皆さん本当にありがとうございました♪


番組終了後、観覧に来たリスナーの皆さんに挨拶する、エフエム和歌山 理事長の山口さん(JA3WJA)


番組終了後はアイボール大会で盛り上がりました!

屋上で送信設備とアンテナを見学

続いては山口さんのご案内でホテルの屋上へ! 特別にエフエム和歌山の送信機やアンテナなどを見せていただけることになりました。

屋上フロアは周囲を高い塀で覆われています。この一角にエフエム和歌山が管理しているエリアがあり、2つの大きなキャビネットが並んでいます。その1つを山口さんが解錠してくださいました。


ホテル屋上にある送信設備を見学させていただきました。ラジオ局の送信機を見るのは初めて!

「これがエフエム和歌山の送信機です。87.7MHzの20W出力です」

--へえ~! ラジオ局の送信機を見るのは初めてですけど、意外に小さいですね。アマチュア無線のHFリニアアンプのほうが大きいかも!?

「そうかもしれません(笑)。下にはオンエアモニター用にカーラジオをセットしてあるのですが、アンテナなしでもエフエム和歌山が強力に聞こえます」


放送波のモニター用にカーラジオとスピーカーが取り付けられています。アンテナなしでも強力に受信できました

--送信機のすぐ下ですからね(笑)。あ、マイクやミキサーもありますね!

「はい、災害時などで万一スタジオからの回線が途絶えたときは、最終的にここから放送ができるように、マイクとミキサーを用意してあります。いままで一度も使ったことはありませんが・・・」


万一の場合はここから放送することも可能。
マイクやミキサー、ヘッドホンも用意されています

--もしも、このビルが停電になってしまったら、放送も停まってしまうのですか?

「大丈夫です! 建物には非常用電源がありますし、この送信機には無停電電源もついています。停電になったときはすぐに切り替わるので、放送が途切れることはありません」

--さすがは放送局です!

続いて山口さんはもう1つのキャビネットを解錠してくださいました。

「こちらはD-STARの無線機器が収納されています」


もう1つのキャビネットにはD-STARレピータの送信機が収められていました!

--あ、見慣れたレピータ装置です! インターネットの接続にはモバイルルーターを使っているのですね。

「はい、下のフロアからLANケーブルを配線してくる手間もありませんし、安定した通信ができるのでモバイルルーターを使っています」


インターネットへの接続にはモバイルルーターを使用。すぐ近くに携帯電話の基地局があるため、強力な電波が安定して得られるそうです

--もしかして電源はエフエム和歌山の送信機と一緒ですか!? 停電のときには予備電源に切り替わるという・・・

「大正解です! D-STARレピータも同じ電源ラインですので、停電時も動作を続けます」

--災害に強いレピータになっていますね。

「和歌山は台風が接近上陸することも多いですし、東南海・南海地震の心配もあります。そんなときにも役立つようにしてあります。放送もD-STARレピータも災害に対する情報発信能力が極めて高くなっています」

--来て欲しくない災害ですけれど、備えは万全にしておきたいです!

続いて、屋上のさらに1つ上のフロア、本当のてっぺんへ向かいました。メッチャ素晴らしいロケーションで和歌山市内が一望でき、朝訪れた和歌山城も眼下に小さく見えます。


屋上の一番てっぺんで、D-STARレピータのアンテナを発見!


ここは抜群のロケーション! さっき訪れた和歌山城も眼下に見えています

--これはロケーションが良いですね~! FM放送もD-STARも電波が飛びそう!!

「放送は和歌山市と周辺はもちろんですが、東は奈良県の五條市付近、西は海を越えた対岸の徳島でも一部聞こえているらしいです。D-STARレピータは南が有田市の先、東は奈良県の県境付近まで、北は阪神高速の梅田(大阪市)付近で聞こえたという話があります」

--頼もしい飛距離ですね。


エフエム和歌山の送信アンテナは水平ダイポールをU字型に曲げたような形の3段スタック。
左下がD-STARレピータ用の430MHz帯アンテナです

原点は小学生のときのミニ放送局

屋上見学を終えて、もう一度サテライトスタジオに戻り、山口さんにお話を伺いました。


サテライトスタジオに戻って、いろいろなお話を伺いました。
写真中央はJP3YJD管理団体メンバーのお一人、JE3WZF 大林さんです

まず、山口さんが無線を始めたきっかけですが、「小学生のときに真空管でAMワイヤレスマイクを自作したのが始まり」なのだそうです! 大阪の朝日放送(ABCラジオ: 当時は1010kc)と毎日放送(MBSラジオ: 当時は1210kc)の間の、空いている周波数で毎晩のように電波を出し、レコードを掛けておしゃべりするという、今で言うディスクジョッキーを楽しんでいました。リスナーは同じ小学校の人(なんと先生も!)が中心で、聴取率はなかなか高かったそうですよ!

そして中学生になってから、初めてアマチュア無線があることを知り(電波の発射にはルールがあることも勉強し)、高校生になってから国家試験で資格を取得。「もうJA3のプリフィックスが終わりそうだったので、慌てて申請しました」ということで、1969年に「JA3WJA」のコールサインが割り当てられたそうです。

大学は、趣味の延長で無線の勉強をするために大阪電気通信大学へ進んだそうです。「当時、井上電機製作所(現在のアイコム)の50MHz帯トランシーバーのFDAM-3を使っていたのですが、自動車に取り付けたときに、車が“プラス接地”なのに気付かず、無線機を壊してしまった」という経験が。

「それで大阪の井上電機まで持って行ったら、すぐに修理してくれたのですが、対応してくれたのが創業者の井上徳造さん(当時は社長、現在はアイコムの代表取締役会長)で、“キミはどこの大学か?”と聞かれ、“大阪電通大です”と答えたら、“そうか。就職どこにすんねん? 良かったら来いよ”と誘っていただいたのが思い出です」という、とっておきのエピソードを教えていただきました。でも井上電機製作所には入らず、ちょうど卒業のタイミングで開局した地元テレビ局に入社したそうですよ。

エフエム和歌山と防災の取り組み

続いてエフエム和歌山のお話を伺いました! びっくりしたのは、和歌山県には昔も今も「民間放送のFM放送局」がないということ。2008年にエフエム和歌山がコミュニティ放送局として開局するまで、和歌山市内のFM局はNHKしかありませんでした。

そんな中で誕生したエフエム和歌山は、市内の皆さんの絶大な人気を集めています! 特徴的なのは「ほとんどの番組が自社制作であること」。なんと2023年までは自社制作率が100%だったとか!! しかも和歌山市だけでなく、周辺の町にもサテライトスタジオを設けて公開放送を行ったり(災害発生時には各地のスタジオからも様子を伝えるそうです)、パーソナリティの自宅をスタジオにしたり、軽自動車に衛星インターネットの通信システムと、非常時に87.7MHzの放送波が発射できる送信機を搭載した「スタジオ付き中継車(COMET STUDIO)」を導入したりと、本当にアクティブです。


衛星インターネット(スターリンク)を装備、どこからでも放送できる「スタジオ付き中継車(COMET STUDIO)」。衛星中継でも音声遅延は少ないそうです♪
(エフエム和歌山のFacebookページより)

ほかにも、2017年からはニュースや天気予報などの情報をAI(人工知能)アナウンサーの「Nanako(ナナコ)」が伝えたり、災害が起きたときの災害情報や救援情報、安否情報などをAIの音声アナウンス(27か国語に対応)で繰り返し放送したりと、一般のラジオ局ではなかなかできない取り組みを行い、それらが評価され、2018年の「電波の日・情報通信月間」には近畿総合通信局から表彰を受けたそうです!


エフエム和歌山のホームページには人工知能(AI)アナウンサー Nanakoの告知がありました


AI技術の活用による災害情報の提供が評価され、2018年の「電波の日・情報通信月間」では近畿総合通信局から表彰されました(エフエム和歌山のホームページより)

そこで驚いたのは、“近畿総合通信局長に掛け合って、サービスエリア(電波の届く範囲)を拡大した”というお話でした!

エフエム和歌山の送信アンテナは、ダイポールアンテナをU字型に折り曲げたような、水平無指向性のものを3つ取り付けています。開局当初は“和歌山市のコミュニティ放送局”ということで、電波が和歌山市外に届きにくくするため、同軸ケーブルの給電方法を工夫し、可聴範囲を抑制していたそうです。

でも、台風や大きな地震・津波があったときには、和歌山市だけでなく周辺の町にも大きな被害が予想されます。また、和歌山市にお住まいの方がラジオを聞きながら周辺の市町に行き、そこで被災することもあり得ます。

これをなんとかしたいと考えていた山口さんは、2018年の「電波の日」表彰式の会場で、可聴範囲の抑制を止めることを近畿総合通信局長に直談判!! その熱意が実って、翌年にアンテナはそのまま、送信出力もそのままで給電方法をスタックに変更、なんと可聴範囲が見事にアップし、和歌山市周辺でもクリアに受信できるようになったそうです!!! 山口さんは「これは理屈ではない、まさしくアマチュア無線精神の方法です」と笑っていらっしゃいました。


2019年に実効輻射電力のアップが実現、放送エリアが拡大したことを告知しました(エフエム和歌山のホームページより)

その後も和歌山には、大きな台風が何度も接近していますが、AIアナウンス機能を使った災害情報の伝達なども行い、また和歌山市と協力して、エフエム和歌山の放送や緊急災害情報(市役所からの緊急アナウンスも)が流れる「緊急告知ラジオ」の普及も行う(和歌山市が市内の高齢者など1,000世帯に無償供与)など、地域の防災に貢献していらっしゃいます。


「緊急告知FMラジオ」の案内(エフエム和歌山のホームページより)

「災害に強い」D-STARレピータを設置

そんな山口さんが、このホテルの屋上にD-STARレピータを設置しようと考えたのも“和歌山の人を災害から守りたい”という強い思いがあったからです。

「コミュニティ放送は、地域の皆さんに情報を発信することはできますが、逆に情報収集が難しいのです。特に災害時は正しい情報を迅速に集めることが重要です。放送局にもメールでいろいろな情報が届きますが、中にはデマのようなものもあるので、よく確認しなくてはなりません」

「それがアマチュア無線なら、インタラクティブ(双方向の対話形式)でコミュニケーションが取れ、D-STARなら発信者のコールサインも表示されるので情報内容の信憑性に間違いがありません。画像のやり取りもできます。D-STARレピータを使えば、いざというときにもアマチュア無線家から正確な情報をいち早く得ることができると思いました」

そんな思いから、山口さんや大林さんをはじめとする有志6名で管理団体を結成し、2020年7月に開設されたのが、D-STARレピータ「和歌山七番丁430(JP3YJD)」です。


ホテル屋上に設置された「和歌山七番丁430(JP3YJD)」の送信装置

--こんなにロケーションの良い場所に設置できてよかったですね! 許可は大変だったのではないでしょうか?

「もし公共施設の屋上にアンテナを取り付けさせてもらおうと思ったら、役所との交渉から実現までに3年ぐらいかかるかもしれません。でも、このホテル屋上のコミュニティ放送の送信設備があるエリアと送信アンテナは、元々エフエム和歌山で管理しているので、そこにD-STARレピータを増設するのは難しいことではありませんでした。しかも建物は20階建てで海抜100m以上もあります」


海抜100m以上、和歌山市内が一望できる絶好のロケーションにD-STARレピータが設置できました!

--しかも非常用の電源がありますね!

「そうなんです。無停電電源と非常用電源があるので災害時も運用は止まりませんし、屋上と言っても周囲は高い塀で囲まれているので、強風に強いのもメリットです。暴風雨の最中に標高100mの山の上に行くことはできませんが、この建物なら非常用エレベーターがあるので、何かあってもすぐ駆けつけることができます」

--実際に、このD-STARレピータを使ってみていかがですか?

「電波はよく飛んでいます(笑)。和歌山市内をカバーしているというのが便利で、防災訓練などのイベントでも、腰につけたハンディ機で、どこからでも簡単に市内の局と交信できるのは非常に魅力的です。デジタルなので、聞こえた局はたいていメリット5でクリアな音声なのもいいですね」


もうひとつ、このD-STARレピータが誕生したことで、アマチュア無線家のコミュニケーションが活性化し、それが和歌山市のピンチを救うボランティア活動につながったことを、今回の訪問をきっかけに知りました!

2021年10月3日、和歌山市内の水管橋(水道管が通る橋)が突然崩落し、市内の4割にあたる約6万世帯(13万8千人)が1週間にわたって断水するというトラブルが発生しました。もちろんエフエム和歌山も臨時体制で、給水場や入浴できる施設などの情報を随時放送したそうですが、「和歌山七番丁430」のD-STARレピータでは、管理団体のメンバーが「生活用水はあっても飲料用の水が足りない」と、情報交換を行っていたそうです。


2021年10月、水管橋の崩落で和歌山市内の4割が1週間にわたって断水するという、前代未聞のトラブルが発生しました(写真はエフエム和歌山のFacebookページより)

これを聞いていたアイコムの社員さんが、すぐ管理団体の各局と連絡を取り、さらに会社と交渉して、アイコムが備蓄していた飲料水2,400リットル(2リットルのペットボトル6本入りを200箱)を和歌山市内の給水拠点(真砂浄水場)までワゴン車3台で届け(10月7日)、和歌山市役所に立ち寄って副市長に状況報告を行ったそうです!


D-STARレピータで窮状を知ったアイコム社員の皆さんが、会社に掛け合って備蓄していた飲料水2,400リットルを和歌山市に寄付しました(写真はエフエム和歌山のFacebookページより)

D-STARレピータを使ったアマチュア無線の情報網が、ボランティアの援助活動に結びついたということで、エフエム和歌山の番組内でも紹介されたそうです。この話題はFB NEWSの2021年10月号のニュースで詳しく掲載されています♪

おわりに

エフエム和歌山の山口さん、ありがとうございました! 小学生のときに真空管式のAMワイヤレスマイクで始めた「ミニ放送局」が、やがて地域の皆さんに愛され、信頼される放送局の誕生につながり、そこで常に防災について考え、情報収集と情報発信に工夫を重ねていく姿に感銘を受けました。

「この街は自分たちが守る!!!」という熱意の塊の山口さん♪ 誰よりも強い思いと行動力が周りをどんどん引き込み、円を描くように形になっていくのを感じました。お会いして、ものすごいエネルギーを分けていただき、まだまだ情熱を燃やし続けよう! と新たな誓い(笑)が生まれました♪

今回の訪問記を読み、山口さんのエネルギーを感じて“一緒にお仕事がしたい!”と思われた方は、ぜひエフエム和歌山のホームページをチェック! 「放送技術」、「営業」、「番組パーソナリティ」と、いろいろな職種のスタッフ募集が出ています♪ 「最近は“退職代行業者”を経由して、会社を突然辞められる方の話をよく耳にするけれど、心の通う、本音で話せる時代であってほしいなぁ」と、そんなお話もされていました。いろんなお話が聞けて楽しく、1日では到底足りないくらい、学び多い時間でした。

そしてこの日、サテライトスタジオに集まってくださったアマチュア無線家の皆さん、番組リスナーの皆さん、MCの宇和千夏さん、ありがとうございました! 生放送で、しかもD-STARの交信実演つき! ということで最初はメッチャ緊張したのですが、暖かい声援と拍手で、だんだん気持ちが解れてノリノリになってきましたよ♪ ラジオってやっぱり楽しいなあ~と、茨城放送で番組を担当させていただいた当時のことを思い出しました。


エフエム和歌山の皆さん、公開生放送に集まってくださった皆さん、ありがとうございました!

訪問を終えて大阪へ戻る車の中でも、私はID-51で和歌山七番丁430をワッチ、皆さんの交信を聞いていました♪ 今度は自宅からゲート越えでCQを出してみようかな!?

(JH1CBX Masaco)

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