日本全国・移動運用記
2024年7月1日掲載
(前号からの続き)
今年の4月末から5月初めの大型連休に、北海道での移動運用を行いました。その様子を前編と後編の2回に分けてお届けします。今回は後編です。
天気は小雨で気温4℃と早朝の運用としては肌寒い中、標津郡中標津町の公園で運用を開始しました。相変わらず、10MHz帯と14MHz帯ではパイルアップが続くにもかかわらず、それより高い周波数では国内との交信が難しい状況でした。
続いて、中標津町から斜里郡斜里町に移動しました。根北峠の通過は、今回の大移動で最も厳しい移動になると予想していました。雨が降っており、頂上付近の気温は1℃で、路面温度が高いため積雪は無く、無事に通過できました。
斜里町に着いてからは、台風のような強風と大粒の雨になり、釣竿アンテナが大きく揺れる状況での運用になりました(写真1)。伝搬のコンディションが上がってこないため、長めの昼休みを挟んで再び様子を見るも、相変わらずの状況でした。風雨は次第に弱まり、雨が上がってからは気温が低いながらも快適な気候でした。この地域は、じゃがいも畑が多く、植え付け前のこの季節には、強風で畑の土が飛んできて車などを汚すことがあります。雨上がりのため、その心配は無くなりました。
衛星の時間を考慮して、斜里郡小清水町-斜里郡清里町-斜里郡小清水町の順番に行き来して運用しました。何度も書いている通り、伝搬のコンディションは変わらず、「日中の7MHz帯はカスカス、10MHz帯と14MHz帯は大パイル、18MHz帯は西日本からポツポツと呼ばれる、21MHz帯は6エリア限定、24MHz帯と28MHz帯は無感」が続きました。
夜には、リクエストが多かった網走市で、7~14MHz帯とサテライトのみ短時間で運用しました。21時過ぎに運用を終了した頃には再び雨が降り始め、網走市から常呂郡佐呂間町の50km以上を移動しました。
写真1 斜里郡斜里町の運用場所の様子
常呂郡佐呂間町の、サロマ湖にある港で運用を開始しました。午前5時過ぎに運用を開始すると、短時間ですが雪が舞っていました。
紋別郡湧別町に移動して釣竿アンテナを設置し、運用を開始しました。ところが、7MHz帯と10MHz帯が全く聞こえなくなりました。イオノグラムを見ると、デリンジャー現象が発生して電離層が消滅していました。
経験上、デリンジャー現象は数10分後には幾らか回復すると予想して、先に買い物を済ませて1時間ほど後に運用を再開すると、伝搬のコンディションは悪いものの最低限の交信は可能な状態になりました。
紋別郡遠軽町では空き地で運用しました(写真2)。天気は回復して、澄み切った青空が見えてきたにもかかわらず、伝搬のコンディションは変わらずで、サテライトのパスの合間に7~28MHz帯を巡回しました。
紋別市は河川敷で運用しました。市街地で野生動物は出没しないだろうと考え、念のため周囲に注意しながらの運用でした。最後は、紋別郡興部(おこっぺ)町の沙留漁港で19時台のRS-44を運用して、気温が3℃と寒かったため、HF帯の運用は翌日に持ち越しました。
写真2 紋別郡遠軽町の運用場所の様子
紋別市から名寄市に向かう途中の4つの市町村で運用しました。朝の冷え込みは厳しいものの、良い天気に恵まれ日中は気温が上昇しました。最初の興部町では前日と同じ漁港で運用し(写真3)、HF帯の各バンドを巡回してみるも、21MHz帯で4エリアと5エリアが時々聞こえる程度で、24MHz帯から上は聞こえませんでした。
紋別郡西興部町に向かう国道沿いには、熊出没注意の看板が立っていたため、市街地の公園で運用しました。再びデリンジャー現象が発生したようで、HF帯の全てのバンドで聞こえない時間帯もありました。通常の状態でも、昼間の7MHz帯で国内の中~遠距離と交信することは難しいのに、さらに交信が困難になりました。
上川郡(上川)下川町の公園で、午後から3時間ほど運用してみたものの、カレンダー上の平日であることもあって、CQ空振り連発が続きました。夕方になると伝搬が良くなるかも、と思いながら名寄市の公園に移動して運用を再開したところ、伝搬は昼間よりもさらに悪くなり、21MHz帯で交信ができなかったため24MHz帯と28MHz帯はギブアップしました。
写真3 紋別郡興部町の運用場所の様子
士別市の公園に移動して、朝の運用を始めました(写真4)。小雨が降る中、Eスポの気配はなく、安定して交信できるバンドは18MHz帯まででした。
その後、上川郡(上川)比布(ぴっぷ)町の公園に移動したところ、再びデリンジャー現象が発生して電離層が消えていました。先に昼食を調達して元の場所に戻ると、イオノグラムに弱いEスポのようなものが見えており、HF帯の各バンドをワッチしてみると何局かの信号が聞こえて、21MHz帯が最も強かったので試しにCQを出してみると、不安定ながらも広い範囲に伝搬しており、短時間で20QSOができました。しかし、急激に伝搬のコンディションが悪化し、24MHz帯では交信できなくなりました。
上川郡(上川)当麻町の公園に移動すると雨が降り始め、続いて風が急激に強くなりました。公園の駐車場はほぼ満車でしたが、風雨が強まり、急いで帰宅する人もいました。しかも雷が鳴り始めて、天候の回復を待って運用を再開しました。伝搬のコンディションは悪いものの、10MHz帯と14MHz帯は使える状態で、上川郡(上川)東川町の公園に移動しました。ここでは1か所の滞在時間が90分ほどしか確保できず、7MHz帯から14MHz帯を早回りで運用しました。
東川町から上川郡(上川)東神楽町の運用場所は橋を渡るだけで、釣竿アンテナを収納してトイレを済ませて移動し、再び釣竿アンテナを設置して運用を開始するまで、わずか8分間でした。夕方は伝搬のコンディションが少し回復して、風も弱まってきたため、リクエストが多かった富良野市まで50kmを移動して、臨時に運用することにしました。夜間であったものの連休中で運用局が多く、7MHz帯と10MHz帯の運用時間を長めに設定し、さらに1.9~28MHz帯とサテライトをフルで運用しました。
写真4 士別市の運用場所の様子
上川郡(上川)美瑛町は有名な観光地であり、キャンピングカーを多く見かけました。観光客が多い道の駅や展望公園を避けて、市街地の公園を利用しました。
翌朝、寒さで午前4時に目が覚めてしまい、気温は-1℃で車の屋根には霜が降りていました。4時台にサテライトRS-44が来ていたため、運用を開始しました。北海道は日の出の時刻が早く、午前4時台でも十分に明るいため、1.9MHz帯では交信ができませんでした。
上川郡(上川)上富良野町では住宅地に近い公園、上川郡(上川)中富良野町では空き地を見つけて運用しました。電離層は薄い感じで、QSO数は少なめでした。
フェリーに乗船するため終了時間を厳守する必要があり、午後からは短時間の運用になりました。芦別市の公園では、21MHz帯が聞こえなかったため、このまま高い周波数帯にQSYするよりも、7MHz帯と10MHz帯を確実に押さえた方が時間を有効に使えると判断し、2巡目に移りました。
赤平市では、利用者のいない広い草原で運用しました(写真5)。パイルアップが続いて7~14MHz帯で予定の終了時刻が迫り、最後に7MHz帯の1巡目で出来なかった局を確保するため7MHz帯で締めることにしました。
17:30の終了時刻に7MHz CWでCL(閉局します)を宣言すると、TU(ありがとう)の連続コールが返ってきました。
写真5 赤平市の運用場所の様子
QTH、バンド別のQSO数を表1、運用日別のQSO数を表2に示します。太陽フレアに伴うデリンジャー現象で、伝搬のコンディションが非常に悪く、特に28MHz帯は9日目の5月3日に、ようやく交信できて、50MHz帯では交信ができませんでした。
使える衛星が少なくサテライト通信でのQSO数が限られていることもあり、1日1,000QSOは1回だけの達成でした。
表1 QTH、バンド別のQSO数。1.9~28MHz帯はCW、サテライトはCW/SSB
表2 運用日別のQSO数
日本全国・移動運用記 バックナンバー
アマチュア無線関連機関/団体
各総合通信局/総合通信事務所
アマチュア無線機器メーカー(JAIA会員)
©2024 月刊FBニュース編集部 All Rights Reserved.