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海外運用の先駆者達 ~20世紀に海外でアマチュア無線を運用した日本人達~

その82 JAIGの主宰者DF2CW壱岐邦彦氏が来阪 1993年(4)
「あの人は今 (第7回)」JA1BNW廣島孝之氏

JA3AER 荒川泰蔵

JAIGの主宰者DF2CW壱岐邦彦氏が来阪

去る11月8日(2019年)、(その80)の「あの人は今(第5回)」で紹介した、JAIGの主宰者であるDF2CW壱岐邦彦氏が大阪を訪問され、大阪国際交流センターラジオクラブの月例会/夕食会に参加されました。筆者を含む大阪狭山ラジオクラブ(OSRC)のメンバーも、それに参加させて頂いて最近のドイツ情勢を伺うなど歓談させて頂きました(写真1)。翌日から京都や東京などを訪問され、多くのアマチュア無線家と交流を図られたようです。過去にドイツで運用された方々の多くは、直接/間接的に壱岐氏のお世話になっていると思いますが、今回はそのドイツでの運用から紹介します。尚、今月の「あの人は今 (第7回)」は、JA1BNW廣島孝之氏の紹介です。


写真1. (左)壱岐邦彦氏を迎えての大阪国際交流センターラジオクラブの月例会/夕食会。
(右)その夕食会に参加させて頂いた大阪狭山ラジオクラブ(OSRC)のメンバーと壱岐邦彦氏(左から2人目)。

1993年 (ドイツ DL1EMO, DH0EAO, DL/7L1RLL, DL/7L2PGJ, DC/JS3QVM)

JA6XLW鷲崎直氏はデュッセルドルフからQSLカードと共に、DL1EMOの近況をアンケートで寄せてくれた(写真2)。「局免の入手に至る手順は諸OMと同様につき省略致しますが、一番手間がかかるのは本邦ライセンスの独語訳。資格保有の翻訳者が必要ですが、ハムの事などご存じない方なので説明が大変でした。デュッセルドルフ(Dusseldorf)市内の144MHzは、週末を除いて全くオンエアーの局がありません。430MHzも一部レピーターでのQSOは行なわれているようですが、これも殆どオンエアーする局がありません。現在デュッセルドルフ市近郊には日本人が 6,000人余り居住すると言われており、ハムも多いのではと思いMini-JAIG in Dusseldorfを計画中です。さて何人くらい日本人ハムが居られるのやら。尚、家内(7M2DGU)も DH0EAOというコールを頂いていますが、当地の役所は夫婦には似たコ-ルを与えるという方針でもあるのでしょうか。(1994年7月記)」


写真2. (左)DL1EMO鷲崎直氏のQSLカードと、(右)それらが送られて来たドイツからの封筒。

7L1RLL若鳥陸夫氏はドイツで、DL/7L1RLLの免許を得て運用したと、CQ出版社経由でアンケートを寄せてくれた(写真3)。「1. 局免入手:(1)JARL国際課入手様式に記入, (2)JARL会員英文証明, (3)英文局免証明, (4)英文従免証明 及び (5)払込証明を同封してDARCに申請。現地到着後電話で打診。FAXで免許が届き運用を開始した。クラスBのよし。帰宅後、自宅宛に免許状及び説明書が届く。2. 運用:TRX: Mizuho MX-21S, 2W出力。ANT: L型GP(2本組みにしたもの)。電源: 240V→100Vトランス(1.5A), 9.5V DC変換器。モード: CW(A1A), ただし縦振り電鍵。場所: 市街地のホテル3階(日本の4階)の屋内。その他: テレビ塔などに移動するとヨ-ロッパ局がよく聞こえた。(1993年2月記)」


写真3. DL/7L1RLL若鳥睦夫氏の免許状。

7L2PGJ鶴田幸倫氏は、商用でデンマークに滞在中、DL/7L2PGJのドイツの免許を得て運用したと、デンマークからアンケートを寄せてくれた(写真4)。「商用で1993年3月から7月までデンマークに滞在しましたが、正式ライセンスが許可にならず、せめて週末だけでもとDLの免許を相互運用協定に基づき受けました。ただ、移動方法が列車と徒歩しかないので、5AのバッテリーとTS-50、それに1/2λのDPを背負って行く形となり、丸一日かけて国境の町へ行き、畑の中に空中線を張ってQRVして帰ってくるという有り様でした。TS-50はモービル機なので電圧にシビアで10Wですと1QRV・1QSOしか出来ませんでした。国際運転免許を持って来なかったのがなんとも悔やまれます(以上 Flensburg)。5月29, 30日、JAIGのDJ0MBG丸山OMのお宅にお招き頂き、500W, 6エレで21MHzを主として約20QSOさせて頂きました。30日にはJAIG NETにコネクト、チェックインし、ローカルと話も出来て、FlensburgでのQRVとは天地の差でとてもFBでした(以上 Villingen)。(1993年7月記)」


写真4. (左)DL/7L2PGJ鶴田幸倫氏がデンマークからアンケートを送ってくれた封筒。
(右)大阪心斎橋のレストラン「すし萬」にて左から筆者と鶴田幸倫氏(2013年)。

JS3QVM江上明氏はドイツで運用記としてクラブ報に投稿したものとの注釈付きで、ドイツの免許状のコピーと、ドイツでの写真を使ったQSLカードを添付してアンケートを寄せてくれた(写真5)。「1993年5月22日より6月6日まで国際学会出席のためオーストリア, ドイツ, フランスへ出張しました。欧州は4回目になりますが、今回は相互運用協定を利用し、ドイツの短期免許DC/JS3QVMを取得し波を出してきました。200Vの充電機とハンディー機を持ち込み、スツットガルトで2mと430MHzをワッチしたところ殆ど聞こえません。英語とドイツ語のチャンポンで、メインでCQを出しますが応答なし。留学している同僚にDD5KJ(ex.JN1UUG), Miekoさんを紹介して貰って、当地のハム事情を聞きました。ドイツのハム人口は5万人。その殆どが上級ハムで、初級用と考えられているV・Uはがらがら。周波数帯は日本と同じですがメインはありません。2mのレピーターでの交信が僅かにあるとの事でした。そこでSTEPを25kHzに切り変えてスツットガルト及びルートヴィッヒブルグのレピーターで山向こうのDD5KJ局を呼びかけますが、受信のみ可能でこちらの波が届きません。結局、トーン周波数が違う(1750Hz)ためとわかりました。口笛でも開くことを後で教わりました。翌日DD5KJ局から電話が入り、ドイツ在住の日本人のクラブ組織JAIGのメンバーが日本に向けてスケジュ-ルQSOする現場へ行こうと誘われ、日曜日の朝、スツットガルトからDD5KJ局のゴルフでアウトバ-ンをぶっ飛ばすこと1時間半で、スイス国境まで40kmのフィリンゲンへ着きました。がらがらの430MHzシンプレックスでDJ0MBG, 丸山氏を呼びだして道順を確認し、これがドイツ国内初のQSOとなりました。DJ0MBG局の勤める電気会社の屋根裏が彼のシャックでした。日本とQSOできると聞いてデンマ-クから夜汽車で駆けつけていたDL/7L2PGJ鶴田氏ともアイボールQSO。DJ0MBG, DL/7L2PGJ両局の日本とのQSOを聞きながら、1週間の差でHFの運用許可の免許が取得出来なかったことを悔やみました。尤も、3級でもSSBは10mよりハイバンドしか出られないことを帰国後知りました。15mはCW, パケットのみOK。その後DJ0MBG局の家へお邪魔しXYLさん(DJ0MDU局)、セカンドさんが加わって、日本人がめったに行けない名所を案内して頂きました。日本でもそうですが、ただ無線家というだけで、初対面の方に大変お世話になることができました。(1994年2月記)」


写真5. (左)DC/JS3QVM江上明氏の免許状と、(右)ドイツでの写真を使ったJS3QVM江上明氏のQSLカード。カードの写真は左から、DC/JS3QVM, DJ0MBG, DL/7L2PGJ, DD5KJの各氏。

1993年 (オランダ PA3GKW)

JA1IST名黒和史氏は、オランダでPA3GKWの免許を得て運用したとレポートを寄せてくれた(写真6及び7)。「イギリスの局免では無く、筆記試験及びCW実技試験合格書の提出で、オランダのテストが免除されAクラスの免許が与えられた。免許は1月1日から1年間有効となるが、小生の場合、年度末に近かった為、初回免許は実質1年2ヶ月となっている。年間の免許料は92ギルダー(約5,000円)。他のCEPT条約加盟国から運用する為の国際免許が別途発行される。オランダの免許制度は4クラスあり、次のようになっている。Aクラス: オールバンド・オールモード、100WDC出力。Bクラス: HF 3.5/21MHz CW/データ、28MHz オールモード、100WDC出力、VHF以上オールモード、30WDC出力。Cクラス: VHF以上オールモード、30WDC出力。Dクラス: 144MHzのみ10WDC出力、SSB/FM/データ通信のみ。電源は220V、50Hzです。(1994年2月記)」


写真6. (左)PA3GKW名黒和史氏のCEPT免許状と、(右)オランダのルールブックの表紙。


写真7. (左)PA3GKW名黒和史氏のQSLカードと、(右)IOTAペデイション時のPA3FHA/P大保 博氏とPA3GKW/P名黒和史氏の共通QSLカード。

「あの人は今 (第7回)」JA1BNW廣島孝之氏

世界各地でアクティブに運用されたJA1BNW廣島孝之氏は、米国との相互運用協定検討時の公聴会に出席され、ご自身の海外での免許取得の経験から意見を述べられて、米国との相互運用協定の締結に結び付けられました。現在も横浜市で、JANETやJAIGの活動にアクティブですが、ドイツでの記事は(その9) 2013年12月号に、米国での記事は(その15) 2014年6月号に、ブラジルでの記事は(その16) 2014年7月号に、イタリアでの記事は(その23) 2015年2月号に、そして国連本部からの記事は(その75) 2019年6月号で紹介させて頂きました。また廣島氏は2014年6月号の今月のハムにも紹介されています。その廣島氏から近況を、アンケートでお知らせ頂きましたので紹介させて頂きます。「海外で知り合ったJANET/JAIGの仲間と野外活動研究会JR0ZEWを開設、春と秋に自然と温泉を楽しみながら無線を楽しんでいます(写真8)。現役時代は仕事で海外に出向いた時に余暇を利用して、海外での運用を楽しんでいましたが、現在は、定年退職後の職場となった横須賀リサーチパークのアマチュア無線クラブ局JN1YRPのメンバーの一員として、YRP会員の産学官のアマチュア無線愛好家の皆様とアマチュア無線を楽しんでいます(写真9)。(2019年8月記)」


写真8. JANET/JAIGメンバーで構成されている野外活動研究会JR0ZEW・QTH長野県白馬村。


写真9. 横須賀リサーチパークのメンバーで構成されているYRPアマチュア無線クラブJN1YRP・QTH横須賀市光の丘。

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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