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日本全国・移動運用記

第60回 種子島移動

JO2ASQ 清水祐樹

鹿児島県にある種子島は、西之表市、熊毛郡中種子町、熊毛郡南種子町の1市2町で構成される離島です。全国各地で移動運用をされている何人かの方から、西之表市での運用は、いつもパイルアップになると伺いました。

この連載では、第5回(2016年2月号)でも種子島移動を取り上げました。その時の運用は12月で、サテライト通信やローバンドを主な対象としていました。今回の移動運用は、HFのハイバンドや50MHz帯、さらには多良間村での運用(前回の記事)で成功した144MHz帯での遠距離交信を狙って、計画を立てました。

大雨の予想に対応した、新たなアンテナを使用

これまで、離島での移動運用では、ダイポールアンテナを主に使用していました。性能が良く、調整が容易な利点があります。しかし、1.9MHz帯のダイポールアンテナは長さが80m近くになり、設置できる場所が限られ、設置・撤収に時間がかかります。また、QSY(運用バンドの変更)時には、アンテナの途中に取り付けられているギボシ端子を脱着する手間が必要です。

種子島は、離島といっても本州から距離が近く、アンテナの性能はそれほど重要ではありません。今回の移動運用では大雨が予想されており、雨の中での長時間の作業を避けるため、短時間で設置できて、QSYの手間もかからないアンテナを検討しました。そこで、第54回(2020年3月号)で紹介した、ワイヤー付き釣竿とオートマチックアンテナチューナー(アイコムAH-4)を使用しました(図1)。AH-4の底面にはアースに接続されたアルミ板を貼り付けており、レンタカーの屋根に置くだけで動作します。長さ7mのエレメントで、3.5~50MHzの各バンドで十分な性能が得られることは実証済みです。QSYは無線機のTUNERボタンを押すだけで、炎天下、雨天時のどちらでも、車外に出る必要が無かったのはとても便利でした。

今回の移動運用は、飛行機で移動し、現地でレンタカーを借りて運用しました。機材は宅配便で現地に事前に発送しました。第54回の記事で使用したコンクリート製の台は発送が困難なため、タイヤベースを使用しました。タイヤベースに釣竿を差し込み、ドアストッパーで固定することで、強風に耐えられる十分な強度が確保できました(写真1)。


図1 使用したアンテナの構造。この状態で、3.5~50MHzはIC-7300のTUNERボダンを押すだけで運用できる。1.9MHzでの使用時にはコイルを追加する(第54回の記事を参照)



写真1 (上)西之表市の運用場所の様子、(下)釣竿をタイヤベースに固定する方法

西之表市で運用を開始、1日目はサッパリ…

荷物を西之表市で受け取り、IC-7300M、IC-9700、無線機の電源にする密閉型バッテリー、DC-ACコンバーター、バッテリー充電器などをレンタカーにセットして、運用の準備をしました。

1日目は、西之表市の市街地にある公園で、夜まで運用を続けることにしました。天候は曇りで日差しは強くなく、風もあって猛暑にはなりませんでした。準備完了とほぼ同時に衛星のRS-44が来ており、早速サテライト通信を運用しました。なお、このRS-44は、日本付近で現在利用できるアマチュア衛星では最も高度が高く、遠距離と交信ができるので、珍しい場所でのサテライト通信の移動運用では、絶対に外せない衛星です。

続いて、10MHz CWに出てみると、すぐに大パイルアップになりました。この時間、伝搬としては7MHz帯でも国内の広い範囲と交信が可能ですが、10MHz帯は夜になると国内伝搬がスキップして聞こえなくなってしまうので、昼間のうちに出来る所はやっておこうとする戦略です。14MHz帯に上がると、2エリアから東の強い局しか聞こえず、18MHz帯では交信できた4局が全て8エリア、21MHz帯は8エリアの1局だけで、Eスポは発生していない様子でした。この状態が続くと、交信数はあまり増えないため、コンディション回復に期待していました。7MHz帯は国内局が安定して入感しており、19時を過ぎてもパイルアップが続きました。

2日目は大パイルアップに

2日目の朝も、西之表市の同じ場所で運用しました。1.9MHz帯は何も聞こえず、3.5MHz帯で数局と交信した後、7MHz帯では前日と同じようにパイルアップが続きました。西之表市は、やはり人気があるようです。イオノグラムを見ていると弱いEスポの気配があり、順番に上のバンドに上がっていくと、各バンドでパイルアップになると同時に伝搬のコンディションも上がって、午前9時過ぎには50MHz帯でも交信できました。

この後、西之表市でハイバンドをもう一巡するか、別の場所に移動するかの選択を迫られました。種子島は南北に長く、北部にある西之表市から、中部にある中種子町に移動するだけでも車で1時間近くかかります。コンディションが良いうちに、中種子町でも交信数を確保したいと考え、中種子町の公園に移動しました(写真2)。


写真2 中種子町の運用場所の様子

中種子町で10MHz CWから開始すると、すぐに大パイルアップになりました。中種子町の1巡目なので、これは当然です。その後の14MHz帯、18MHz帯…は、西之表市の運用時よりも信号が強くなり、50MHz帯でも交信できました。14~28MHz帯の2巡目は、さらに近距離の局が入感して、それでもなお、Eスポの気配が続いていました。

サテライト通信の運用を挟んで、3巡目に突入すると、1つの周波数帯だけで30分以上にわたってパイルアップが続き、年に数回あるかどうかのEスポ大当たりになってきました。圧巻は24MHz帯で、なんと104局から連続して呼ばれました。各バンドで呼ばれなくなったら昼食に出掛けるつもりが、その時間も無くなってしまいました。レンタカーなので食料の備蓄は無く、水分補給用のスポーツドリンクだけを摂取して運用を続けました。28MHz帯では本WEBマガジン編集長のJS3CTQ/3局から呼ばれて、後から聞いた話では、移動先からIC-705の5Wで呼んだとのことでした。信号は特に弱いとは感じなかったので、これには驚きました。

運用中、激しい雨が降り始めて強い風も吹き、風向きが急激に変わることもありました。タイヤベースに差し込んだ釣竿は、強風が吹いても軽くしなるだけで、破損するような気配はありませんでした。強い雨や風の後には、一時的にSWRが上昇することがありましたが、TUNERボタンを押して再チューニングすると、簡単にSWRが下がりました。

50MHz帯では62局から連続して呼ばれて、144MHz帯でのEスポも狙ってみたものの、交信には至りませんでした。10時過ぎから運用を開始して、10MHz帯でのパイルアップが収まったのは18時。さらに、3.5MHz帯のリクエストもあり、7MHz帯の高速CWでの運用に続いて、3.5MHz帯の運用は19時過ぎで打ち止めとしました。水分補給と最小限のトイレ休憩だけで、連続9時間、856QSOのパイルアップを楽しみました。

3日目も、まだまだ続くパイルアップ

3日目は、雨が降り続く中、再び西之表市で運用を開始しました。CWで交信可能な局は一通り済んだ感じなので、RTTYに出ることにしました。RTTYは、方法を工夫すれば1交信が20~25秒程度で終わります。RTTYでも各バンドで呼ばれ続け、238QSOできました。RTTYによる1か所での運用でこれだけのQSO数は、簡単には達成できないと思います。

続いて、未運用だった南種子町へ、種子島を北から南へ縦断する形で移動しました。雨が激しくなり、地面が舗装されている海水浴場の駐車場で運用しました(写真3)。昼過ぎには7~50MHz帯の各バンドでパイルアップになったものの、Eスポは次第に弱くなり、やがて14MHz帯から上のバンドは交信が困難になりました。


写真3 南種子町の運用場所の様子

4日目は、うって変わって静かに

4日目は、中種子町と南種子町で、RTTYを中心に運用しました。ところが、電離層に前日までの勢いは無く、18MHz帯から上では交信が困難になってしまいました。激しい雨が降り続き、車のドアを短時間開けただけでも車内の機材が雨水をかぶってしまう中、荷物を梱包して発送しました。

結果

QSO数を表1に示します。4日間の運用で計3,003QSOでした。運用日別では、24日には14~50MHz帯の各バンドが大盛況で1,205QSO、25日がこれに次ぐ出来高でした。また、25日は7MHz帯が好調でした。一方で、23日は24MHz帯以上でQSO数がゼロ、26日もそれに近い状況で、日によって伝搬のコンディションが大きく違いました。1.9MHz帯は、アンテナが短い、夜遅くまで運用しなかった、雷による空電ノイズがあった等の要因で、QSO数が少なくなりました。


表1 運用日・QTH別、運用日別、QTH別、モード別のQSO数の集計。QTH・モード別の集計はスペースの都合で割愛した。

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次号は 10月1日(木) に公開予定

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