Monthly FB NEWS 月刊FBニュース 月刊FBニュースはアマチュア無線の電子WEBマガジン。ベテランから入門まで、楽しく役立つ情報が満載です。

日本全国・移動運用記

第42回 高知県東部移動

JO2ASQ 清水祐樹

山間部では平地が少なく、移動運用の場所を探すことが難しい町村もあります。今回は高知県の東部にある土佐郡・長岡郡・安芸郡で、山間部を含めた町村巡りを計画しました。

山間部におけるHFの電波伝搬

HF帯では電離層で電波が反射することにより、遠距離に電波が伝搬します。この時、相手局が遠距離にあるほど、電波の打ち上げ角が低くなります(図1)。山間部での運用では、打ち上げ角が低い電波は山に遮られて、遠距離との交信は難しくなります。そのため、HF帯の移動運用では、周囲に山などが少ない場所で運用することが理想です。

今回の移動運用では、山間部でHFの運用に適した場所を見つけて、国内の広い範囲に電波を飛ばすことを狙ってみました。


図1 山間部におけるHF帯の電離層反射の概念図。遠距離への電離層反射では、電波が山に遮られる。

1日目は山間部で場所を確保

高知自動車道を通って高知県に入ると、最初に通る市町村が長岡郡大豊(おおとよ)町です。まずはこの町で運用を始めます。町の中心部は谷底にあり、事前に地図で運用場所を探したものの、広い平地や公園などは見当たりませんでした。

大豊ICを下りて周りを見渡すと、高台に工業団地があり、東側が開けた駐車スペースを見つけました(写真1)。北東側が開けていれば、遠距離である1・7・8エリア方面との交信が期待できます。


写真1 大豊町の運用場所の様子

運用を開始すると、7MHzでは国内近距離・遠距離ともに安定した伝搬があり、10MHzと3.5MHzでも多くの局から呼ばれました。昼間に10MHzの近距離が聞こえるのはコンディションが良い時、3.5MHzが聞こえるのはコンディションが悪い時、といった印象があります。それらが両方聞こえる、不思議なコンディションでした。10MHzでは、電離層反射では近すぎて交信が難しい、岡山県が強力に聞こえていました。電波が北側の山を越えて、瀬戸内海に沿って地表波で直接届いたと思われます。

さらに西へと進むと、長岡郡本山町では、予定していた公園が工事中で使用できず、川沿いで東西方向に開けた場所を探して運用しました。伝搬の状況は、大豊町で運用した時と同じような感じでした。しかし、北側には高い山があり、岡山県の信号は弱くなりました。

土佐郡土佐町では高台にあるグラウンドを発見し、行ってみると北東側がある程度開けていました(写真2)。午後からは伝搬のコンディションが低下して、7MHzでは近距離の4・5エリアが聞こえなくなりました。それでも、場所選びが良かったようで、遠距離である8エリアは強力に聞こえていました。


写真2 土佐町の運用場所の様子

この日の最後の目的地は、土佐郡大川村でした。途中の道は早明浦ダムと吉野川の周囲を通っており、高い山に囲まれています(写真3)。集落は谷底よりも少し標高が高い、北側が低くなる急斜面にあります。少しでも見通しの良い場所を確保するため、集落にある駐車場で運用しました。北東方向が多少は開けており、運用局が少ない村であることもあって、期待通り多くの局と交信できました。なお、民家に隣接する狭い場所で運用したため、運用場所の写真はありません。


写真3 土佐町から大川村に向かう途中の道路の様子。早明浦ダムと吉野川の周囲に道路が通っており、高い山に囲まれている。

安芸郡の町村を巡回した2日目

2日目は安芸郡の町村と安芸市で運用しました。ただし、安芸郡東洋町だけは場所の都合上、翌日に計画しました。まず、安芸郡で最も西にある芸西村を目指しました。海に面しており、海岸で運用場所が簡単に見つかると期待していました。ところが、海岸付近には民家が密集しており、運用に適さないことが分かりました。内陸にある、村の中心部で広い運用場所を確保しました。

安芸市では、河川敷に面した見通しの良い場所を確保しました(写真4)。ここはCWのリクエストが多かった市です。時刻は朝7時近くで、通常は3.5MHzか7MHzでの運用が考えられます。しかし、冬場は日の出を過ぎて1.9MHzが聞こえることもあり、チャレンジしてみました。1.9MHzではCWのコンテストが行われていて、FT8とCWの信号でバンド内がとても混雑していました(写真5)。


写真4 安芸市の運用場所の様子


写真5 朝の1.9MHz帯におけるスペクトラムスコープの様子。1.908~1.910MHz付近に、FT8の信号が多数確認できる。

スペクトラムスコープで空き周波数を見つけてCQを出すと、すぐにパイルアップになり10分間で17局と交信できました。1.9MHzでは、長いアンテナを設置すれば多くの局と交信できることは珍しくありません。しかし、短い釣竿アンテナ、かつ、日の出を過ぎた時間帯で、1.9MHzでのパイルアップは予想外でした。続いて3.5MHz、7MHzでも多くの局と交信できました。

安芸市から東側には、安芸郡の町村が並んでいます。運用の順番は、次のように考えました。山間部で運用が最も難しそうな馬路(うまじ)村は最後に、その次に運用が難しそうな北川村は最初に行くことにしました。それ以外の奈半利町、田野町、安田町は海に面しており、運用場所の確保は難しくなさそうなため、通過する順番に合わせて運用しました。

北川村は、海から数kmしか離れていないにもかかわらず、山に囲まれています。村の中心部で公園や広場を探したものの、うまく見つけられず、農作業中の畑に面した空き地を拝借しました。

奈半利町は海に面しており、港で簡単に運用場所を見つけられました(写真6)。この場所は駅、公園、スーパーマーケットなどが近くて人通りが多く、釣り人の出入りもみられました。ここでは周囲が開けていることもあって10MHzで1エリアがよく聞こえており、多くの局と交信できました。


写真6 奈半利町の運用場所の様子

田野町は海に面した空き地、安田町は工業団地の一角で運用しました。この日は午後から7MHzの近距離が聞こえなくなる傾向にあり、3.5MHzが強力に聞こえるようになってきました。

最後は馬路村への移動でした。安田町から馬路村に向かう県道は狭く、車のすれ違いが困難な狭い道や、工事中で片側交互通行の場所があります。馬路村の中心部は山に囲まれており、広い平地は見当たりません(写真7)。ここも、民家に面した駐車場で、車1台分のスペースで運用しました。北東側が山に囲まれている関係で、HF帯ではどのバンドも電波が弱いような感じがありました。


写真7 馬路村役場の様子。村の中心部は山に囲まれており、広い平地は見当たらない。

3日目は室戸市と東洋町で運用

最終日の3日目は、高知県の東側に位置する室戸市と安芸郡東洋町で運用しました。朝から雨が降っていて視界が悪く、目視で運用場所を探すことが難しいため、室戸市では海に突き出た漁港をカーナビの目的地に設定し、到着後に路面が水没していないことを確認して運用しました。東側は海に面しており、HFは各バンドともに強力に聞こえていました。

東洋町は広い駐車場を利用しました(写真8)。朝早くから7MHzが聞こえており、一気にパイルアップになりそうな気配でした。しかし3連休の最終日で、渋滞が予想されるため、早めに運用を切り上げて帰路に就きました。


写真8 東洋町での運用場所の様子

日本全国・移動運用記 バックナンバー

2019年3月号トップへ戻る

次号は 12月 1日(木) に公開予定

サイトのご利用について

©2024 月刊FBニュース編集部 All Rights Reserved.